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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー集合と選択 ― アシュレイ加入編ーー
30/74

030話 胎動 ― Prototype-05/END

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――アルディナ拠点・情報観測室。


ホログラムの光が、夜のような青を床に落としていた。

ネオンの指先が走るたび、無数のデータ波形が浮かび上がる。

熱源反応、電磁脈動、神経シミュレーションの断片。

どれも常識では説明できないパターンを描いていた。


「……この波形、明らかに人工的ね。けど……生体信号でもある。」

リリスが小さく呟く。

モニターの一つには、港湾区地下第12層の地形データ。

中心には、巨大な球体――《Prototype-05/END》と識別される存在。


ルアンが腕を組み、静かに言った。

「心拍数……いや、波形周期がノアと完全に一致している。」

「共鳴してるの?」

「違う。――模倣だ。」

ネオンの声が低く響く。

「05は、対象の神経波形を“学習して再構築”する。

 つまり、ノアを見た瞬間、その存在を“上書き”し始めた。」


リリスが息を飲む。

「そんなもの、制御できるわけがない……。」

「制御するための器官がない。だから暴走する。

 05は、自己成長型の“未完成の神”よ。」


ネオンが通信回線を繋げる。

――ノイズ交じりに、二人の声が入った。


『……こちらノア。中央炉に到達。異常な反応――視覚的模倣を確認。』

『アシュレイだ。球体が動いてやがる。まるで心臓だな。』


ネオンの目が鋭くなる。

「ノア、データを送って。観測を継続するわ。」

『了解――。』


映像が切り替わる。

赤黒い霧に包まれた鉄橋。

その中央で、二つの影が対峙していた。

ノアと、もう一人の“ノア”。


――模造体。


リリスが息を呑む。

「似てる……表情の癖まで同じ。」

「戦闘ログを使って構築されたなら当然ね。」

ネオンは指を止めず、データを重ねる。

「ただ、完璧じゃない。動作信号に0.03秒の遅延がある。

 ――まだ、“学習中”。」


――現場。


アシュレイがスコープを覗き込む。

「おいノア、相手、完全にお前だ。」

ノアは構えたまま目を細める。

「……ああ、でも、俺じゃない。」


二人の刃が交差する。

金属が擦れる音。

火花が散り、床の配線が焼け焦げる。

模造ノアの動きは、まるで鏡のよう。

踏み込み、体のひねり、視線の動き。すべてが一致していた。


「……やばいな。こいつ、俺たちの攻撃予測して動いてるぞ。」

アシュレイが呟く。

『それが05の構造よ。』

ネオンの声が通信に割り込む。

『機械的な反応じゃない。“学習する反射”。

 つまり――ノアの戦闘パターンを使って、ノアを殺す。』


「ありがてぇ情報だな……!」

アシュレイが息を吐き、再装填する。

「だったら、学べない速度で撃つだけだ。」

ノアが頷く。

「――合わせる。」


次の瞬間、ノアが地面を蹴った。

灰を舞い上げながら、刃が閃く。

模造体も動いた。

だがその瞬間、アシュレイのスコープに一瞬の“ノイズ”が走る。

射線上の影がわずかにブレた。


「……今だ!」

銀弾が放たれた。

音より速く、空気を裂く。

模造体が受け止めようと腕を上げるが――遅れた。

弾丸が右肩を貫く。


赤い液体が飛び散り、壁を染める。

だが、数秒後には再生が始まった。


『……再生速度、通常生体の百倍。自己修復に制限がない。』

ネオンの声が冷たく響く。

『けど、修復優先度を操作すれば止められる。

 ノア、狙うなら“神経同期核”。胸部中央、赤い発光部よ。』


ノアは小さく頷いた。

「了解。」


模造体が再び構える。

二人の距離、約三メートル。

呼吸が一つ、ずれる。


ノアが刃を滑らせ、すれ違いざまに切り上げた。

火花。

次の瞬間、アシュレイの銃声。

銀弾が斜めに走り、ノアの刃の軌跡をなぞるように飛ぶ。


刃と弾丸の軌道が交差する。

模造体の胸を貫通し、光が弾けた。

赤い液体が霧のように広がる。


ノアは跳び退き、距離を取る。

模造体がよろめき、膝をついた。

胸部の発光が点滅を繰り返す。


――だが止まらない。


「くそ、まだ動くのか!」

アシュレイが叫ぶ。

『中枢が二重構造になってる。上層だけ破壊しても意味がない!』

ネオンの声が急ぐ。

『ノア、貫通させて! 弾丸の熱で溶かせ!』


ノアがうなずき、ブランク・リッジを両手で握った。

アシュレイが再装填。

「一発、同期する。タイミング合わせろ。」

「……三秒後。」

二人の視線が合う。


――三、二、一。


ノアが跳ぶ。

蒼白の閃光。

アシュレイがトリガーを引いた瞬間、刃と弾丸が同軌道で突き刺さった。


《Prototype-05》の胸が爆ぜる。

赤い液体が蒸発し、残骸が崩れ落ちる。

熱風が吹き抜け、地下全体が震えた。


――静寂。


ノアはゆっくりと膝をつく。

息を吐く音だけが響く。


アシュレイが近寄り、苦笑した。

「お前、いつもギリギリだな。」

「……計算通りだ。」

「どの口が言う。」


二人のやり取りを聞きながら、ネオンはデータを解析していた。

だが、ひとつの波形が彼女の視線を止めた。


「……待って。」


リリスが顔を上げる。

「何?」

「この信号……止まってない。」


ルアンが覗き込む。

「再起動か?」

「違う。これは――複製信号。」


画面上に、赤い波形が増殖していく。

一つが二つ、二つが四つ。

同一周波数のコピーが、世界中のネット回線へ流れ始めていた。


ネオンの表情が凍る。

「まさか……05の学習データが“送信”されてる?」

「どこに?」

「不明。……でも、今この瞬間も、誰かがそれを受け取ってる。」


――現場。


ノアが壁に手をつき、息を整えた。

アシュレイが周囲を警戒しながら言う。

「なぁノア……今、笑ったような声がしなかったか?」


ノアは顔を上げた。

霧の奥、崩れた冷却槽の向こうで――

“誰か”が立っていた。


黒いローブ、白銀の仮面。

その胸には、完璧な“天秤”の紋章。


ネオンの声が無線越しに震えた。

『ノア、撤退して! ――それ、ザラキエルよ!!』


ノアは刃を構え、低く呟いた。

「……ようやく、顔を出したか。」


地下炉が唸り、世界が赤に染まる。


そして、“神の秩序”が再び目を覚ました。



――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、031話「帰還 ― 崩落する街にて」――


をお楽しみに!


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