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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー集合と選択 ― アシュレイ加入編ーー
29/75

029話 灰の階層 ― 封鎖区潜入

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――アルディナ拠点・観測司令室。


無数のモニターが闇に浮かぶ。

ネオンの指が光学パネルを走り、地下12層の地形データを投影する。


「……ここが、旧リスボニア動力炉の最下層。“神兵開発実験区画”。」


リリスが椅子を回しながら覗き込んだ。

「本当に稼働してるの?」

「稼働というより、生き残っている。

 電力供給は途絶えてるのに、地下磁場の動きが“脈動してる”。」


画面に赤い波形が浮かぶ。

周期は一定、まるで心拍。


「……まるで生体信号ね。」

「そう。20年前の戦争終結直前、ここでは《Prototype-05》の構築が進められてた。

 人型模倣プログラム“E.N.D.(Extended Neural Design)”。

 完成直前でデータが削除されたはずなのに――、反応がある。」


ネオンは手元の通信端末を見た。

《NOAH/ASHLEY》――現場班、潜入中。


――


港湾区地下、第12層。


鉄と潮が混じった空気。

ノアとアシュレイは、錆びた隔壁を押し開けた。

中は、暗闇と湿気。

壁の内側から響く低い音――それは地鳴りではなく、心臓のような“鼓動”。


「……ネオン、聞こえるか?」

アシュレイの無線にノイズ混じりの声が返る。

『入ってる。……ただ、磁場が強い。通信の安定時間は3分が限界。』


ノアが周囲を見渡した。

床は焦げ、壁には手形の焼き跡。

天井から垂れたケーブルが、まるで血管のように滴を垂らしている。


「ここで、誰かが……。」

『記録によれば、試験スタッフ42名中、生還者ゼロ。

 当時、人工神経接続試験の暴走で、被験体と神経を共有してた研究員の脳が焼損。』

ネオンの声が、冷たく響く。


アシュレイが鼻を鳴らした。

「つまり、ここで神様を作ろうとして、人間が壊れたわけだ。」

『ええ。人が神を模倣するとき、一番最初に失うのは“自分の形”。』


ノアが鉄骨の影に歩み寄る。

床に散乱したパーツの中、片方だけの義手を拾い上げた。

焦げた内部には、人間の神経線維が編み込まれている。


「……義体じゃない。“接続試作”。」

『それがPrototype-05の母体。

 神経インターフェースによって、人間の運動と思考を“再構築”しようとした。

 でも完成前に――人格が消えた。』


「人格が?」

『ええ。“魂のない模倣体”。

 でも、その中枢だけが、今も“動いてる”。』


ノアは静かに息を吐く。

「……“動いてる”なら、止めないとな。」


二人はさらに奥へ進んだ。

階段を下りるたび、熱が上がる。

鉄壁の奥から、わずかに赤い光が滲んでいた。


『ノア、感知波形が変化してる。

 心拍のリズムが人間に近づいてる――いや、合わせてる。』


「合わせてる?」

『あなたたちの心拍と同調してるの。

 おそらく、観測――というより、模倣を開始してる。』


アシュレイが肩越しに笑う。

「なるほどな。覗かれてる気分だ。」

「気を抜くな。」ノアの声が低い。

「“見てる”ってことは、“覚えてる”ってことだ。」


次の瞬間、床が震えた。

地下全体が、何かを呼吸するように軋む。

壁面の警告ランプが一つ、勝手に灯った。


【外部信号感知】

【E.N.D./反応率:再起動】


『ノア! 波形上昇、臨界レベル! 退避して!』

「もう遅い。」

ノアの目が細く光る。


吹き抜けの中央――冷却槽の奥で、光が蠢いた。

それは液体でも炎でもない。

無数の微粒子が絡み合い、“人の形”を作っていく。


アシュレイが銃を構えた。

「……まさか、これが05か。」

『データ照合一致。成長段階:模倣化フェーズ。

 ……まさか、まだ“再構築”中だったなんて。』


ノアが静かに言う。

「ネオン、通信維持できるか?」

『あと一分。――その後は遮断される。』


ノアは前へ出た。

“それ”は顔を上げ、こちらを見た。

髪も目も曖昧で、性別もない。

だがその瞳の奥に、確かに“人間”の意志があった。


『――観測、継続。』


ノアが呟く。

「……人の声、か。」


『違う。音声模倣プログラム。

 でも――サンプルの音声波形、ノア。あなたと一致してる。』


アシュレイが息をのむ。

「……こいつ、お前の声を使ってるぞ。」

「つまり、“俺”を基準にしてる。」

ノアの声は冷静だが、わずかに震えていた。


『――ノア、アシュレイ。退避推奨。

 “05”は生体模倣域に入った。戦闘行動を取る前に、観測を切る!』


「……いいや。」

ノアが答える。

「観測は続けろ。――俺たちは、“これが何なのか”確かめる。」


通信が切れた。

直後、吹き抜けの中央で金属音が鳴る。

“それ”が、初めて動いた音だった。


人の形をした何かが、ゆっくりと立ち上がる。

皮膚の下を赤い光が流れ、表情が形を持ち始める。


ノアの顔に、アシュレイが息を詰めた。

「……おい、ノア。

 あれ――どう見ても、お前だ。」


ノアは一歩も引かず、ただ目を細めた。


「そうだな。――でも俺じゃない。

 こいつは、“神が作った、人間の模倣”だ。」


霧の奥で、“ノアの声”が応えた。


「――ノア。観測、完了。」


照明が落ち、世界が赤に染まる。

そして、模造体の瞳が開いた。


その奥にあったのは、確かに“終わり”の色だった。



――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、030話「胎動 ― Prototype-05/END」――


をお楽しみに!


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