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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー交錯する意志と取引ーー
22/74

022話 無音の弾丸 ― 0.02秒の死

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――世界が止まった。


灰の空が一瞬、光を裂いた。

爆音も衝撃もない。

ただ、ノアの瞳の中で、空気が歪んだ。


「……来る。」

ノアの声が低く落ちた。


次の瞬間、地面が消えた。


灰が弾け、鉄骨が吹き飛ぶ。

カリナが咄嗟にノアを引き寄せる――が、

彼女の腕が一瞬で裂けた。


「――っ!?」

鮮血が舞い、音もなく空気に溶けていく。


「カリナ!」

ノアが彼女を抱きかかえ、瓦礫の影へ滑り込む。


呼吸の音すら聞こえない。

世界が、吸われている。


ノアは瞳を閉じ、集中する。

視覚ではない。聴覚でもない。

ただ、“空気の揺らぎ”そのものを感じ取る。


――風速:0。気圧:変動なし。

だが、何かが「空を押して」いる。


ノアが呟く。

「……0.02秒後に、弾が来る。」


カリナが息を荒げながら顔を上げる。

「見えてるの……?」


「見えてない。……“感じてる”。」


ノアは《ヴェイルライン》を構える。

トリガーに指をかけるその瞬間、

彼の胸の“蒼白の天秤”が微かに脈打った。


蒼い光が、灰の中で薄く浮かぶ。

それは共鳴。

彼の感覚が、誰かの“殺気”と重なった瞬間。


ノアは呟く。

「……お前、どこで撃ってる?」


その声に、遠くの丘の上――

答えるように風が返った。


――シュン。


0.02秒。

弾丸が、世界の間を貫く。


ノアは腰を落とし、ブランク・リッジで受け流した。


キィィン――!


音のない音が、空を裂いた。

銀の火花が散り、灰が反転する。


カリナが目を見開いた。

「……今、弾を……斬ったの?」


ノアは息を吐く。

「まだだ。次が本命だ。」


風が止まる。

灰が逆流する。


ノアの視界に、一瞬だけ見えた。

光を纏う狙撃銃。

そして、その後ろに――

冷たい瞳の男。


「……“銀弾の狩人”。」


ノアが呟いた瞬間、再び世界が閃光に包まれる。


――ドン。


音はない。

しかし、衝撃だけが確かに存在した。


ノアの肩をかすめ、壁がえぐれ、

灰が炎のように舞い上がる。


「……やっぱり、見えてるのか。」


遠く、丘の上。

アシュレイ・ケインがゆっくりと立ち上がった。


銀の髪が揺れ、灰色の外套がはためく。

その眼差しは、獣のように鋭くも、どこか静かだった。


彼はライフルを下ろし、

風の中で小さく呟く。


「お前だけだな。俺の弾を“視た”のは。」


ノアは銃を構え直し、薄く笑う。

「……なら、俺が初めての例外だ。」


二人の間に、殺意と敬意が同居する沈黙が走った。


そして、ノアが初めて感じた――

この狙撃手は“敵”ではない。

どこか、自分と同じ“空白”を抱えている。


蒼白と銀。

二つの色が、灰の戦場で共鳴した。


――この瞬間が、“出会い”だった。

――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、023話「共鳴 ― 音のない心臓」――


をお楽しみに!


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