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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー交錯する意志と取引ーー
19/75

019話 灰色の予兆 ― 出撃前夜

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――空が低く唸っていた。

山岳地帯を覆う濁灰の雲。

その向こうに、無数の黒い煙柱がゆっくりと上がっている。


ここは──ヴァルミア自治連邦北部戦区。

かつて鉱石と水源で栄えた中立地域。

今では、三つの国と五つの民兵組織が入り乱れる“無法の灰域”となっていた。


ラザロとダリオは、その最前線にいた。


◆戦地・ヴァルミア北端


廃墟になった都市アグニス

白い砂塵が街全体を包み、昼なのに太陽の光が届かない。

焦げたアスファルト、倒れた標識、撃ち抜かれたビルの窓。

風が吹くたび、空気が鉄の味を運んでくる。


「……相変わらず死んでる街だな。」

ラザロが呟き、銃を肩に担ぐ。

焦げた戦車の上で、彼の茶褐色の髪が煙に揺れた。


隣ではダリオが無線機をいじりながら、周囲を警戒していた。

「死んでる街にしては、妙に“静かすぎる”な。銃声も足音も、何もない。」


ラザロは笑いながらも目を細める。

「取引相手がビビって逃げたか、……あるいは全員殺られたか、だな。」


二人の任務は、ゼロバレットの兵器供給ラインを確保すること。

戦争に介入するためではなく、“戦争を動かす者たち”と取引するため。


ヴァルミア北端には、

・政府軍残党

・外国傭兵団

・企業系PMC(私設軍事会社)

・反体制の民兵組織

……それらが互いに小競り合いを繰り返している。


ゼロバレットは、表向きは「中立の調整者」として振る舞うが、

実際には、どの陣営にも武器を売り、均衡を保たせる存在だった。


ラザロが取引しているのは、その中でも“残された理性を持つ勢力”だ。

少なくとも、昨日までは。


◆拠点・管制室(同時刻)


ネオンの声が緊張を帯びて響く。


『……ラザロとダリオ、通信が途絶えた。』


ソフィアが椅子から立ち上がる。

「途絶えた? 回線障害か?」


『違う。現地の民間通信すべてが同時に切れてる。

 電波だけじゃない、音の波も“消えてる”の。』


ルアンが画面を覗き込み、目を細める。

「音の波が消える? ……それは“音が吸われている”ということだ。」


『ええ、電子妨害じゃない。

 周囲の大気そのものが“静止”している。』


ネオンの声が震えた。

『まるで、誰かが“世界の音量”をゼロにしたみたい。』


◆ブリーフィングルーム


ホログラムに映る地図。

灰色の地表に、赤い点が2つ――ラザロとダリオの最終座標。

その周囲は、ノイズの海に覆われていた。


「……ノイズ、じゃなくて空白ね。」

ソフィアが呟く。

「観測不能領域が直径2km。ここに何かがいる。」


ルアンが唇を引き結ぶ。

「おそらく狙撃手だ。しかも、通常の弾道を扱う者じゃない。」


カリナが眉をひそめる。

「“狙撃”で音まで消せるって、そんなの化け物じゃん。」


ルアンは冷静に答える。

「化け物、ではなく“技術”。

 風と空気の分子を読むことで、弾道の摩擦音を完全に消す。

 それができるのは──世界ランカー11位、Ashley Kaneだけだ。」


一瞬、場が凍りついた。


◆格納庫 ― 出撃準備


金属の匂いとエンジンの唸り。

ノアは無言で装備を整え、ヴェイルラインを分解していた。

カリナは短剣をベルトに差し込みながら笑う。


「久々に動けるって思ったら、相手がランカー級か。

 こりゃ簡単には帰れないね。」


ノアは静かに答える。

「……音がない戦場。嫌な響きだ。」


ソフィアの声が通信越しに響く。

『二人とも、作戦コード《SILVER ZONE》。

 目標はラザロとダリオの生存確認、敵狙撃手の排除。

 ヘリはカインが操縦、離陸まで残り5分。』


カリナが軽く拳を突き出す。

「行こうぜ、ノア。“秤”の傾きを、取り戻しに。」


ノアはその拳を静かに返した。

「了解。」


◆同時刻・情報班


ネオンがモニターを凝視する。

『……ソフィア、今解析中の残留信号、コード判別出た。』


「出して。」


映し出された識別タグ――

【A-K11 : ASHLEY KANE】


ルアンが低く息を吐いた。

「銀弾の狩人か……よりによって。」


ソフィアの声が低く響く。

「秤が動いたのよ。

 ……そして、秤を揺らすのは――いつも“空白”から。」


ヘリのローターが唸りを上げる。

灰色の空を裂いて、二人の影が飛び立つ。


その先に広がるのは、

“音を失った戦場”――ヴァルミア灰域。


そして、そこに潜むのは、

世界ランカー第11位――Ashley Kaneアシュレイ・ケイン


――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、020話「灰の戦地 ― 残響」――


をお楽しみに!


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