018話 秤に誓う ― 刻印の義
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――夜、拠点の灯りが静かに揺れていた。
戦いの熱も冷め、地下工房の炉はもう赤くもない。
ノアは胸の刻印を指先でなぞりながら、
ゆっくりと息を吐いた。
左胸の“蒼白の天秤”が、微かに光る。
それは痛みではなく――鼓動の重み。
「……それが、誓いの重みってやつだ!」
背後からネロの声がした。
銀の髪がランプに照らされ、淡く揺れる。
「焼印の痛みは一瞬だが、誓いは一生残る。」
彼は自分の首筋(左側)を軽く叩いた。
薄く光る銀の刻印が、静かに呼吸をしているようだった。
ノアが視線を向けると、
廊下の奥から他のメンバーも次々と姿を現す。
リリス、カリナ、カイン、カサンドラ、ルアン、そしてソフィア。
全員の刻印が夜光に照らされて、淡く色づいていた。
■回想 ― “刻印の儀”
――赤い火が燃え盛る工房。
十一の焼印が、秤の形を描くように並んでいた。
ルアンの声が響く。
「刻印は、ただの印ではない。
お前たちの“在り方”そのものを、この肉に刻む儀だ。」
ソフィアがゆっくりと頷く。
「ゼロバレットの均衡は、誰か一人でも欠ければ崩れる。
この秤は、私たちを“ゼロ”にするための約束。」
ルアンが順に、焼印を掲げる。
金属の輝きが、十一の光を生んだ。
第一席・ソフィア ― 黄金の天秤(首筋・右)
「支配と交渉。
この首は、声で人を導くためにある。」
その声が響いた瞬間、黄金の光が弧を描いた。
第二席・ネロ ― 銀の天秤(首筋・左)
「忠誠と沈黙。
主の声を背で受け、影として在る。」
金と銀の光が交差し、双輪となって燃えた。
第三席・ルアン ― 黒の天秤(左手甲〜手首)
「裁きと秩序。
この手で、世界を計る。」
黒い光が腕を走り、他の色を呑み込むように沈む。
第四席・リリス ― 白金の天秤(鎖骨下・右)
「癒しと理性。
痛みのそばで、命を量る。」
白金の光が、心臓を包み込むように広がった。
第五席・カサンドラ ― 琥珀の天秤(背中・左肩甲骨下)
「誇りと背中。
誰かを守る誓いを、背で支える。」
琥珀の光が炎の揺らめきと重なり、静かに輝く。
第六席・カリナ ― 紅の天秤(右太もも外側)
「衝動と速度。
感情のままに動く、それもまた真実の均衡。」
紅が瞬き、炎よりも鮮やかに燃え上がる。
第七席・ラザロ ― ブロンズの天秤(右胸)
「価値と命。
心の外側で、価値を量る。冷たさも信念だ。」
金褐の光が淡く滲み、鉄の壁を照らした。
第八席・ネオン ― 紫電の天秤(首の後ろ)
『情報は影、真実は光。
私の天秤は、両方を繋ぐコード。』
紫の閃光が奔り、空間を切り裂いた。
第九席・ダリオ ― 灰青の天秤(首の裏)
「真実と虚構。
見せる現実が、世界を動かす。」
灰青の光が揺らめき、他の色と溶け合った。
第十席・カイン ― 桃の天秤(左手の甲)
「触れる優しさ。
誰かを笑わせる手に、偽りはない!」
笑いと共に桃色の光が弾け、緊張が一瞬だけ和らぐ。
そして最後に――
第十一席・ノア ― 蒼白の天秤(左胸)
「虚無と再生。
心を失っても、命を選ぶ。
俺の秤は“空白”を測るためにある。」
蒼白の光が静かに灯り、全員の刻印が共鳴した。
その響きは、まるで十一の鼓動が重なり合ったようだった。
ルアンが呟く。
「これで十一。均衡は、ようやく完全になる。」
――十一の光が交わり、
炎の中に“ゼロ”の紋が浮かび上がった。
『この世界が傾く時、我らが秤で正す。』
その言葉とともに、刻印の儀は終わった。
■現在
ノアは息を整え、胸の上に手を置いた。
淡い蒼白が夜風に揺れる。
「……これが、俺たちの“ゼロ”か。」
ソフィアが隣に立つ。
「ええ。一つ一つの秤で、ゼロバレットの均衡は保たれている。」
ネロが静かに笑う。
「誰か一人でも傾けば、世界が崩れる。
だから俺たちは――お互いの秤を支えるんだ。」
カリナが肩をすくめて笑う。
「なんか宗教くさいけど、嫌いじゃないわ。」
リリスが微笑みながらグラスを掲げた。
「均衡に、乾杯。」
ノアは小さく笑い、胸の刻印に触れた。
蒼白の光が静かに瞬く。
その光は、まるで新しい秤の夜明けのようだった。
――次回更新:明日17:30公開予定
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『ゼロバレット』続編、019話「灰色の予兆 ― 出撃前夜」――
をお楽しみに!




