表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロバレット  作者: 水猫
ーー交錯する意志と取引ーー
17/74

017話 刻まれし秤 ― 魂の色

前書き


『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――溶鉱炉のうなりが響く。


地下工房。

硝煙と油の匂いが混じり合う中、ルアンの指先が火花を散らしていた。

厚い防音壁に囲まれたその空間は、ゼロバレットの心臓部でもある。


テーブルの上には二つの設計図。

一つはノア専用のヴェイルライン

そしてもう一つは、彼のために新たに鍛えられる刃――《ブランク・リッジ》。


「……ようやく形になったか」

ネロが煙草を指先で転がしながら呟く。


「まだ“仕上げ”が残ってるわ」

ソフィアが言い、焼き上がったばかりのブレードを覗き込む。

淡く蒼白い筋が金属の表面を走っていた。


「綺麗ね。まるで、空そのものを封じ込めたみたい。」


ルアンは無言で頷き、溶接機を置いた。

「素材はラザロが拾った“戦場の欠片”だ。

 バルディア戦線で溶けた戦車装甲。その残滓を再鍛造した。」


ノアがブレードを手に取る。

その瞬間、微かに空気が鳴った。

カン……と、どこからともなく反響する金属音。


「……聞こえる?」

リリスが息をのむ。

「刃が……音を返してる。」


ノアは静かに頷く。

「振動の波が伝わってくる。……これなら、音のない場所でも“見える”。」


「ブランク・リッジ。空白を分ける稜線――あなたに相応しい名だわ。」

ソフィアが微笑んだ。


――


やがて、ルアンが別の金属台を引き寄せる。

そこには、十個の焼印が整然と並んでいた。

それぞれに天秤の紋章が刻まれ、色と光が異なる。


「……刻む時だな。」

ルアンの声が、低く工房に響いた。


ノアは黙って上着を脱ぎ、左胸を出した。

「ここでいい。」


ソフィアが静かに頷く。

「心臓の上。あなたの“均衡”はここにある。」


ルアンが焼印を炉に沈める。

白い光が走り、空気が震えた。


――ジュッ。


金属が肌に触れ、蒼白の光が弾ける。

ノアの胸に、天秤が刻まれていく。

熱ではなく、鼓動が焼きついていくような感覚。


「……痛くないの?」

リリスが問う。


「いや。……ただ、重くなる。」

ノアの声は静かだった。


ソフィアがそっと手を当てる。

蒼白の紋が淡く脈打ち、ノアの鼓動に呼応して光る。


「これであなたも、ゼロバレットの一員。

 もう、“空白”じゃない。」


ノアは短く頷いた。

「了解。俺の均衡はここにある。」


――


工房の明かりがゆっくりと落ちる。

ヴェイルラインブランク・リッジが並び、

蒼白の天秤がその中心で静かに光を放っていた。


「魂の色は髪に宿り、天秤に刻まれる。

 そしてその秤が、我らを“均衡”へ導く。」

ルアンの声が響く。


ソフィアがその言葉を引き取るように呟いた。

「――ゼロバレットは、ただの傭兵団じゃない。

 世界の秤を支える、影の均衡。」


ノアは無言で《ブランク・リッジ》を握る。

刃がかすかに鳴き、胸の刻印と共鳴するように光を返した。


「この刃は、命と罪の境を断ち切るもの。

 ……空白を埋める線だ。」


その蒼白の光が消えるまで、誰も言葉を発さなかった。

――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、018話「秤に誓う ― 刻印の義」――


をお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ