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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー交錯する意志と取引ーー
16/74

016話 灰色の国境線

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ブロロロ……ッ。

古い装甲車が、砂塵を巻き上げて進む。

赤茶けた空の下、崩れた街並みの向こうに、鉄錆色の旗がはためいていた。


「……ここが“エドラン共和国”の首都跡、か。」

ネロが窓の外を見て呟く。

弾痕の残るビル、焦げた戦車の残骸。

風に混じる火薬と血の匂いが、まだ消えていない。


「共和国……ね」

ソフィアが微笑み、膝の上にタブレットを広げる。

「実際は、政府と反乱軍と傭兵が三つ巴。国家というより“商売相手”よ。」


後部座席のノアは、無言で銃を整備していた。

「……敵と味方、どっちがどっちか分からない国。」

「それがこの世界の“普通”なのよ。」

ソフィアの言葉は静かだが、どこか寂しげだった。


――


やがて、車列が政府軍のキャンプに入る。

テントと鉄板で作られた簡易基地。

警戒兵たちは疲れ切った目をしていた。


迎えたのは、迷彩服の将校。

片腕に包帯を巻き、手には高級な時計。

「……ヴァレンタイン女史。遠路ご苦労だった。」


「こちらこそ。御国の“自由”のために。」

ソフィアは優雅に微笑み、ケースを指で弾いた。

金属音が響き、中には整然と並んだ黒光りの銃。


M3自動散弾銃、対物ライフル、携行ミサイル、そして黒いチップ――“戦場の鍵”。


将校の目が輝く。

「これで奴らを追い返せる……報酬は即座に支払おう。」

「通貨はドルではなく、ルナ・クレジットで。」

ソフィアが言う。

将校は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに頷いた。

「……わかった。だが、少し試させてもらおう。」


部下が銃を構え、遠くの廃車を狙う。

――ドンッ!

乾いた音と同時に、車が吹き飛ぶ。

煙の向こうで、兵士たちが歓声を上げた。


「素晴らしい! 反乱軍の古い装甲車なら、一撃だ!」

ソフィアは淡く微笑む。

「お気に召したようで何より。」


しかしその瞬間、ノアの視線がわずかに動いた。

テントの陰、風の流れ。

“そこにあるはずのない視線”を感じ取る。


「……敵がいる。」


「どこだ?」ネロが低く問う。

「北の壁の向こう。二人。狙撃と観測。」


――パンッ!


言葉が終わるより早く、ノアは引き金を引いた。

反響音とともに、金属音が二度。

次の瞬間、壁の上で砂煙が上がり、二つの影が崩れ落ちた。


兵士たちがざわめく。将校が驚きと共に口を開く。

「敵の……斥候か!?」

「ええ。あなたのキャンプは、もう包囲されているわ。」

ソフィアは淡々と言い、端末を取り出した。

「でも安心して。あと十五分で、あなたの“戦線”は復活する。」


その言葉の直後、遠くで爆音が響いた。

反乱軍の車列が爆破された音。

――仕掛けてあった“地雷”が作動した。


将校が呆然と立ち尽くす。

「……あなた、まさか……」

ソフィアは微笑んだ。

「取引は一方的じゃないわ。こちらも、“信用の証明”が必要でしょう?」


ネロがぼそりと笑う。

「こえぇ女だよな、マジで。」

ノアは黙ったまま銃をしまう。

煙の向こうで、夕日が赤く沈んでいく。


――


夜。

支払いは完了した。報酬、15億ルナ・クレジット。

兵士たちは祝杯を上げ、ソフィアは車の中で書類を整理していた。


ノアが窓の外を見ながら呟く。

「……武器を売ることで、戦争が続く。」

「そうね。」

ソフィアはグラスを傾ける。

「でもね、ノア。世界って、戦争をやめたら“回らなくなる”の。」


ノアは目を細めた。

「……それでも、終わらせようとする人もいる。」

「ええ、でも――そういう人ほど最初に消えるのよ。」


彼女の声は、夜のエンジン音に溶けていった。


空は暗く、星は砂に飲まれる。

そして遠くの山脈の向こうで、次の火が灯る。

この世界の“平和”は、いつだって血の上に成り立っていた。



――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、017話「刻まれし秤 ― 魂の色」――


をお楽しみに。


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