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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー交錯する意志と取引ーー
14/75

014話 静寂の砦 ― 射撃場の試し撃ち

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――カチャン。


皿を重ねる音が響き、賑やかだった食卓がようやく一段落した。

テーブルの上には食べ終えた皿と、少し冷めたスープの香りが残っている。


ソフィアは椅子から立ち上がり、軽く手を叩いた。


「──さて。食器洗いはカリナとネロに任せるわ。」


「えぇ〜!?」「……だる。」

二人の声がぴったり重なり、場が笑いに包まれた。


ソフィアはそんな様子に小さく笑い、ノアへ視線を向ける。

「カイン。あなたはノアに、この建物を案内してあげて。

 ノア、ここがこれからあなたの居場所よ。安心して歩けるようにしてあげて。」


「任せとけ!」

カインが勢いよく立ち上がり、裸エプロンのままノアの肩を叩いた。

「さぁノア、俺について来い! 風呂場からトレーニングルームまで、ぜ〜んぶ見せてやる!」


ノアは一瞬だけソフィアを見上げ、小さく頷く。

「……わかった。」


カリナは皿を抱えながらニヤリと笑う。

「ノア〜、この家は広いぞ! 迷ったら叫べよ〜!」


ネロはスポンジを握りながら、ぼそりと呟く。

「……アイスは俺の分も残しとけ。」


笑い声がまた弾ける中、ノアとカインは廊下へと歩き出した。

ソフィアはその背中を見送りながら、ふっと優しく微笑む。


――


「カイン、流石に着替えてから案内してね!」

ソフィアが呆れ混じりに釘を刺す。


「……はい」

しゅんとした返事をしたカインは、渋々エプロンを脱ぎ、着替えを始めた。


ピンク色のボーダーシャツを羽織り、第2ボタンを外して胸元をゆるく見せる。

袖をラフにまくり上げ、白い短パンを合わせると──準備完了。


……ただし、パンツは履かない。


背後でその様子を見ていたノアは、無表情のまま小さく瞬きをした。

(……この人、ノーパンなんだ……)


口には出さず、心の中でだけ呟く。

けれど、瞳の奥にはほんのわずかな驚きが浮かんでいた。


「よし、準備完了! ノア、行くぞ!」

カインは爽やかに笑い、親指を立てた。


ノアは一瞬だけソフィアの方を見やる。

ソフィアはワインを口にしながら、苦笑まじりに肩をすくめていた。

「……気にしなくていいわ。彼はいつもこんな感じだから。」


ノアは少し首を傾げながら、黙ってカインの後をついていった。


こうして、“空白”の少年の新しい日常が始まっていく。


――


拠点の廊下は広く、白いタイルが朝日を反射している。

壁には過去の作戦で使われた部隊旗や、古い銃のレプリカが飾られていた。


「ここが食堂、あっちが司令室、地下には医療区画と武器庫がある。」

カインが軽快に説明を続ける。


「上の階には展望ホールと訓練ルーム、それから──射撃場だ。」


「射撃場?」

ノアがわずかに反応を示す。


カインはニッと笑い、親指を立てた。

「おう。ここにいるなら、自分の腕を見せておくのが礼儀だ。」


――


砦の一角、分厚い防音壁に囲まれた射撃場。

金属の匂いと、わずかな火薬の香りが混ざる。

数十メートル先には、鉄製のターゲットが整然と並んでいた。


「新入り。ここでは腕前を見せてもらうのがルールよ。」

銃を手に笑ったのはカサンドラだった。

へそ出しの黒い運動服、鋭い視線。挑発的な微笑みが浮かぶ。


「私の撃ち方を真似できるなら……認めてあげてもいいわ。」


そう言ってカサンドラは華麗に銃を抜き、6発を放った。

銃声が連なり、ターゲットの中心にすべて命中。


「ふふ、これくらいは基本よ。」

彼女は得意げに髪を払った。


ノアは無言で拳銃を受け取り、静かに構える。

だが――彼は的を見なかった。


銃口をわずかに下げ、引き金を引く。


――乾いた銃声。


弾丸は床を跳ね、壁を反射し、鉄板を連鎖的に撃ち抜く。


カンッ、カンッ、カンッ……!


瞬きする間に、6つのターゲットがすべて撃ち抜かれていた。


「……なっ!」

カサンドラが思わず目を見開く。

「ノールックで……跳弾?」


カリナが口笛を吹く。

「やるじゃない。狙ってできる芸当じゃないわよ。」


リリスは頬に手を当て、瞳を輝かせた。

「ノアくん♡ 本当にすごいわね! その反射神経……実験に使ってみたいくらい♡」


ネロは壁にもたれ、シャツの第三ボタンを外しながらあくびをした。

「……フン。面白ぇガキだ。」


ソフィアは腕を組み、満足げに微笑む。

「これで十分。ノアの実力は証明されたわね。」


ノアは静かに銃を置き、深く息を整えた。

自分の耳に残る振動音――それが、彼の“感覚”そのもの。


戦場を空白に変える異能の片鱗を、

仲間たちは確かに目にしたのだった。


――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、015話「紅き影の鍛錬 ― 崩れた均衡」――


をお楽しみに。


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