014話 静寂の砦 ― 射撃場の試し撃ち
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――カチャン。
皿を重ねる音が響き、賑やかだった食卓がようやく一段落した。
テーブルの上には食べ終えた皿と、少し冷めたスープの香りが残っている。
ソフィアは椅子から立ち上がり、軽く手を叩いた。
「──さて。食器洗いはカリナとネロに任せるわ。」
「えぇ〜!?」「……だる。」
二人の声がぴったり重なり、場が笑いに包まれた。
ソフィアはそんな様子に小さく笑い、ノアへ視線を向ける。
「カイン。あなたはノアに、この建物を案内してあげて。
ノア、ここがこれからあなたの居場所よ。安心して歩けるようにしてあげて。」
「任せとけ!」
カインが勢いよく立ち上がり、裸エプロンのままノアの肩を叩いた。
「さぁノア、俺について来い! 風呂場からトレーニングルームまで、ぜ〜んぶ見せてやる!」
ノアは一瞬だけソフィアを見上げ、小さく頷く。
「……わかった。」
カリナは皿を抱えながらニヤリと笑う。
「ノア〜、この家は広いぞ! 迷ったら叫べよ〜!」
ネロはスポンジを握りながら、ぼそりと呟く。
「……アイスは俺の分も残しとけ。」
笑い声がまた弾ける中、ノアとカインは廊下へと歩き出した。
ソフィアはその背中を見送りながら、ふっと優しく微笑む。
――
「カイン、流石に着替えてから案内してね!」
ソフィアが呆れ混じりに釘を刺す。
「……はい」
しゅんとした返事をしたカインは、渋々エプロンを脱ぎ、着替えを始めた。
ピンク色のボーダーシャツを羽織り、第2ボタンを外して胸元をゆるく見せる。
袖をラフにまくり上げ、白い短パンを合わせると──準備完了。
……ただし、パンツは履かない。
背後でその様子を見ていたノアは、無表情のまま小さく瞬きをした。
(……この人、ノーパンなんだ……)
口には出さず、心の中でだけ呟く。
けれど、瞳の奥にはほんのわずかな驚きが浮かんでいた。
「よし、準備完了! ノア、行くぞ!」
カインは爽やかに笑い、親指を立てた。
ノアは一瞬だけソフィアの方を見やる。
ソフィアはワインを口にしながら、苦笑まじりに肩をすくめていた。
「……気にしなくていいわ。彼はいつもこんな感じだから。」
ノアは少し首を傾げながら、黙ってカインの後をついていった。
こうして、“空白”の少年の新しい日常が始まっていく。
――
拠点の廊下は広く、白いタイルが朝日を反射している。
壁には過去の作戦で使われた部隊旗や、古い銃のレプリカが飾られていた。
「ここが食堂、あっちが司令室、地下には医療区画と武器庫がある。」
カインが軽快に説明を続ける。
「上の階には展望ホールと訓練ルーム、それから──射撃場だ。」
「射撃場?」
ノアがわずかに反応を示す。
カインはニッと笑い、親指を立てた。
「おう。ここにいるなら、自分の腕を見せておくのが礼儀だ。」
――
砦の一角、分厚い防音壁に囲まれた射撃場。
金属の匂いと、わずかな火薬の香りが混ざる。
数十メートル先には、鉄製のターゲットが整然と並んでいた。
「新入り。ここでは腕前を見せてもらうのがルールよ。」
銃を手に笑ったのはカサンドラだった。
へそ出しの黒い運動服、鋭い視線。挑発的な微笑みが浮かぶ。
「私の撃ち方を真似できるなら……認めてあげてもいいわ。」
そう言ってカサンドラは華麗に銃を抜き、6発を放った。
銃声が連なり、ターゲットの中心にすべて命中。
「ふふ、これくらいは基本よ。」
彼女は得意げに髪を払った。
ノアは無言で拳銃を受け取り、静かに構える。
だが――彼は的を見なかった。
銃口をわずかに下げ、引き金を引く。
――乾いた銃声。
弾丸は床を跳ね、壁を反射し、鉄板を連鎖的に撃ち抜く。
カンッ、カンッ、カンッ……!
瞬きする間に、6つのターゲットがすべて撃ち抜かれていた。
「……なっ!」
カサンドラが思わず目を見開く。
「ノールックで……跳弾?」
カリナが口笛を吹く。
「やるじゃない。狙ってできる芸当じゃないわよ。」
リリスは頬に手を当て、瞳を輝かせた。
「ノアくん♡ 本当にすごいわね! その反射神経……実験に使ってみたいくらい♡」
ネロは壁にもたれ、シャツの第三ボタンを外しながらあくびをした。
「……フン。面白ぇガキだ。」
ソフィアは腕を組み、満足げに微笑む。
「これで十分。ノアの実力は証明されたわね。」
ノアは静かに銃を置き、深く息を整えた。
自分の耳に残る振動音――それが、彼の“感覚”そのもの。
戦場を空白に変える異能の片鱗を、
仲間たちは確かに目にしたのだった。
――次回更新:明日17:30公開予定
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『ゼロバレット』続編、015話「紅き影の鍛錬 ― 崩れた均衡」――
をお楽しみに。




