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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー灰の街とゼロバレットーー
12/74

012話 硝煙のあとで

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――コトン。


グラスがぶつかる軽い音。

拠点のホールに、陽気な声と笑いが満ちていた。


壁には酒瓶の並ぶ棚、机の上には皿とパン。

肉の焼ける香ばしい匂いと、アルコールの甘い刺激。

戦場の熱気とは違う、**“生の匂い”**がそこにあった。


「乾杯!」

カインが声を上げると、全員がグラスを掲げた。

琥珀色の液体がランプの光に反射して揺れる。


「ノアの初任務、完遂! 死者ゼロ、報酬15億円! よくやったな!」

「おおーっ!」


ネロはだるそうに座りながらも、グラスを軽く掲げる。

「15億だってよ……これでようやくマトモな飯が食えるな。」

「それはあなたが食費を酒に変えてるだけでしょ。」

カサンドラが冷たく言い放つ。


カインが笑いながら肩を組む。

「ま、今日はいいじゃねぇか。勝ったんだし!」


リリスはワイングラスを揺らしながら、

ソファに座るノアを見つめて微笑む。

「ふふ……あなた、やっぱり不思議な子ね。」

「ん?」

「血の匂いがしないのよ。……なのに、不思議と“あたたかい”。」


ノアは小さく笑った。

「それ、初めて言われたかも。」

リリスは軽くグラスをノアのグラスに合わせた。――チン。


――


カインが裸エプロンのまま立ち上がり、胸を張る。

「裸で肉を焼けば旨さは二倍! これ、俺の持論な!」


「ふふ、よく言うわ」

リリスが艶やかに笑いながら、カインの尻を容赦なくモミモミ。

「やめろ! 調味料増えるだろ!」

笑いが弾けた。


「おーい! 次、特製スパイス煮込みいくぞ! 俺の畑で作ったハーブ入りだ!」

「え、それ絶対美味しいやつじゃん!」

カリナの声に、皆がよだれを垂らしそうになる。


ネオンの声がスピーカーから聞こえる。

『おいおい、リモートで参加してる私も飲みたいんだけど! AIは酒禁止とか納得いかない!』

「データが酔ってバグったら困るからよ」

ソフィアが笑いながら返す。


部屋の奥では、カサンドラがピアノを弾いていた。

音色は静かで、戦場の記憶を慰めるように優しい。


――


やがて、ソフィアがワイングラスを片手に立ち上がる。

「さて。今日の主役――ノア・“空白”・バレット。」


全員の視線がノアに向く。

ソフィアは穏やかに笑いながら言葉を紡いだ。


「あなたがここに来てから、ゼロバレットはひとつ階段を上がった。

 今日から正式に、“第十一席”として登録するわ。」


「第十一席?」

ノアが問い返す。


ソフィアは頷き、ゆっくりと説明した。

「ゼロバレットは、私を“第一席”として――

 ネロ、ルアン、リリス、カサンドラ、カリナ、ラザロ、ネオン、ダリオ、カイン。

 そしてあなたで“十一席”。

 ほとんどは結成当初のメンバーだけど……あなたは、最後の一席として加わる特別な存在よ。」


一瞬、場の空気が変わる。

誰もがその重みを感じ取っていた。


ネロが口笛を鳴らす。

「へぇ……最年少で十一席。やるじゃねぇか、“空白”。」


「おめでとう、ノア!」

カリナがグラスを掲げる。

「これで正式に仲間ね。」


ノアは静かに頷き、グラスを掲げた。

「……ありがとう。十一席か……悪くない響きだ。」


その言葉に、場の空気が一瞬だけ引き締まる。

だが次の瞬間、再び笑いと歓声が戻った。

グラスの音、火の音、そして誰かの歌声が響く。


――


夜も更け、焚き火のような明かりの下。

ソフィアはベランダで風にあたりながら、ワインを揺らしていた。


隣に立つカサンドラが、ぽつりと聞く。

「……楽しそうね。」

「ええ。彼らが笑ってるのを見るのが、私の“報酬”だから。」


ソフィアはそう言って微笑んだ。

その瞳の奥では、すでに次の戦場が始まっている。


ノアがベランダに出てきて、隣に立つ。

「……これが、平和ってやつ?」

「ええ。ほんの一夜限りのね。」


ノアは空を見上げた。

「……この静けさが、長く続けばいいのに。」


風が吹き抜け、グラスの赤い液体が揺れた。

それが、戦士たちのわずかな“安息の音”だった。

――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、013話「嵐の前の静寂」――


をお楽しみに。



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