表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロバレット  作者: 水猫
ーー力を持った者は、戦場を選ぶ(灰港都市)ーー
102/106

102話 天秤の刻印

――第一拠点・最深部。


厚い石扉が閉まる。


外界の音は消え、

残るのは静寂と、中央に据えられた黒い石台。


岩壁には巨大な天秤。


左右は、わずかに傾いている。


完璧ではない。


均衡とは、揺れ続けるものだからだ。


◆◆◆


ゼロバレット全員が揃っていた。


ネロ。

カサンドラ。

ラザロ。

ダリオ。

ネオン。

リリス。


カイン。

カリナ。

ルアン。


そしてノア。


誰一人欠けていない。


今日ここに立つのは、

組織そのものだ。


◆◆◆


アシュレイが中央へ進む。


コートを脱ぎ、

シャツを脱ぐ。


左下の脇腹。


心臓の少し下。


命を抱える位置。


ソフィアが静かに告げる。


「刻印は、ここに入れる」


「撃つ腕でも、歩く足でもない」


「守る場所よ」


アシュレイは短く頷く。


◆◆◆


リリスが熱源を起動する。


銀の焼印が、ゆっくり赤く染まる。


左右非対称の天秤。


完全ではない。


だが、意思がある。


◆◆◆


ソフィアが問う。


「理解している?」


「これは栄誉ではない」


「責任よ」


ネロが言う。


「都市が崩れれば、お前の責任だ」


カサンドラ。


「誤算が出れば、私たち全員の責任」


ラザロ。


「物流が止まれば」


ダリオ。


「噂が暴走すれば」


カイン。


「仲間が倒れれば」


カリナ。


「背負うのは、お前もだ」


ルアン。


「均衡は常に揺れる」


静寂。


ソフィアが最後に問う。


「それでも、立つ?」


アシュレイは迷わない。


「立つ」


◆◆◆


焼印が、左脇腹に触れる。


皮膚が焼ける匂いが、わずかに立つ。


声は出ない。


逃げない。


視線も逸らさない。


数秒。


やがて、焼印が離れる。


◆◆◆


最初は赤い痕。


だが――


そこに、光が宿る。


深い黒に近い緑。


夜の森の色。


その中央を、細い銀の線が走る。


未完成の天秤。


揺れながらも、確かに均衡を取る印。


ネオンが小さく呟く。


「……濃いな」


ダリオが笑う。


「荒っぽい色だ」


カインが頷く。


「似合ってる」


ノアが静かに見る。


「……重い色だ」


◆◆◆


ソフィアが一歩前に出る。


「本日をもって」


一拍。


「アシュレイは、ゼロバレット正式構成員」


空気が変わる。


重さが、温度を帯びる。


◆◆◆


ネロが最初に手を伸ばす。


「これからよろしくな」


カサンドラが小さく頷く。


「期待しているわ」


ラザロ。


「任せる場面は増える」


ダリオ。


「噂はもう流した」


ネオン。


「登録完了、正式認証済み」


リリス。


「怪我はしないでください」


カインが肩を叩く。


「飯は作ってやる」


カリナが笑う。


「死ぬなよ」


ルアンが短く言う。


「共に均衡を」


◆◆◆


最後に、ノアが近づく。


刻印を見つめる。


「……隠せる場所だな」


アシュレイが笑う。


「見せるもんじゃねぇ」


ノアは頷く。


「これからよろしく」


短い言葉。


だが、本心だった。


◆◆◆


ソフィアが全員を見る。


「力を持つ者は、戦場を選ぶ」


「だが」


「天秤を刻まれた者は、世界の重さを受け止める」


照明が落ちる。


壁の天秤と、アシュレイの脇腹の天秤が、同じ色で微かに光る。


もう外側ではない。


同じ側だ。


ゼロバレットは、また一段、格を上げた。


そして今。


アシュレイは――


完全に、ゼロバレットの仲間だ。


――次回更新:3月11日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、103話「 」――


をお楽しみに!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ