勇者パーティの挑発! 無職ざまぁ返し
庭園修復の翌日。
俺はヘトヘトになりながらも、ようやく腰を伸ばしていた。
「ふぅ……無職にしては、よく頑張っただろ」
だがその時、王城の広場に兵士たちの号令が響いた。
「勇者パーティ、ご入場ーっ!」
ざわつく人々。
剣聖、聖女、魔法使い――王国の誇る勇者パーティが、威風堂々と歩み出てきた。
剣聖は俺を一瞥し、口元を歪めて笑った。
「おい無職。昨日は庭の草を抜いて民に褒められたそうじゃないか」
「……なんだよその言い方」
聖女はわざと大声で言う。
「民よ、勘違いしてはいけません。この男は勇者ではない。ただの無職。草を抜くしか能のない哀れな存在です」
魔法使いも続ける。
「魔王を倒すのは私たち。無職など噂だけで、すぐに忘れられるだろう」
人々の間にざわめきが広がる。
「えっ……でも昨日は庭園を……」
「勇者様たちの言うことが本当なのか……?」
……ああ、なるほど。
勇者パーティは、俺が民から称賛を浴びたのが気に食わないんだな。
だからこうして公衆の面前で、俺を“無職”に貶めて格を見せつけたいわけだ。
だが――。
俺は深く息を吸い込み、広場中に響く声で叫んだ。
「そうだ! 俺は無職だ! 勇者みたいな華やかな肩書きはねぇ!」
一瞬、広場が静まり返る。
「でもな――無職でも王都を救ったのは事実だろ!」
人々がどよめき、勇者パーティの顔色が変わった。
剣聖は鼻で笑い、剣を突き立てた。
「王都を救った? 笑わせるな。草を抜いただけで英雄気取りとは、無職らしい浅ましさだ」
聖女も声を張り上げる。
「民よ、惑わされてはなりません! 本当に命を救えるのは神に選ばれた私たちだけ。あの者は泥にまみれただけの――」
その言葉を遮ったのは、群衆からの怒鳴り声だった。
「違うぞ! 王都を救ったのはユウマ様だ!」
俺が目を向けると、あの日救った兵士が立ち上がっていた。
「魔力雑草に捕まって死にかけた俺を、救ってくれたのはこの無職だ! 剣も魔法も効かぬ敵を、素手で引き抜いたんだ!」
「俺もだ!」と別の冒険者が続く。
「魔草に飲み込まれかけた仲間を助けてくれたのはユウマさんだ!」
さらに、草むしり隊の子供たちが前に飛び出した。
「ユウマさまは勇者だよ! 草だって魔物だって全部抜いちゃうんだ!」
「無職でも関係ない! 僕らのヒーローだ!」
広場がざわめきから大歓声に変わる。
「ユウマ! ユウマ!」
「草むしり勇者ばんざい!」
勇者パーティの顔色がみるみる青ざめていった。
剣聖は奥歯を噛みしめ、聖女は言葉を失い、魔法使いは苛立ちに杖を強く握る。
俺は群衆の声援を背に、にやりと笑って言った。
「なあ勇者様。草むしり以下に負けた気分はどうだ?」
剣聖の頬が引きつる。
……よし、効いてる効いてる。これが“ざまぁ”ってやつだな。
「調子に乗るなよ、無職がァ!」
剣聖が怒鳴り、剣を抜いた。
広場の空気が一気に張り詰める。
聖女も顔を真っ赤にして叫ぶ。
「民衆にちやほやされて舞い上がるとは……やはり愚か者! ここで本物の勇者との差を思い知らせてやる!」
魔法使いも杖を振り上げ、冷たい声を響かせた。
「無職にできることなど一つもない……せいぜい草をむしるくらいだ。力の差を見せつけてやる」
ざわつく観衆。
「ま、まさか決闘か……?」
「でもユウマ様は無職だぞ……!」
俺は思わず後ずさった。
「お、おい待て! 俺は戦う職業じゃない! スキルも“忘却”しかねぇんだぞ!」
だが剣聖は俺に剣を突きつけ、口角を吊り上げた。
「ならば証明しろ。“無職でも王都を救った”と胸を張るなら……俺たち勇者パーティとの模擬戦を受けろ!」
広場が一気にざわめきに包まれる。
「無職と勇者の戦い!?」「いや無理だろ!」「でも見てみたい!」
俺は頭を抱えた。
「くそっ……なんでこうなるんだよ……」
そのとき、背後から子供たちの声が飛んだ。
「ユウマさまならできる!」
「草むしりで勝てるよ!」
……お前ら、無責任すぎるだろ。
でも、逃げたら本当に“無職の腰抜け”だ。
俺は深呼吸して剣聖を見据えた。
「……いいだろ。模擬戦、受けてやる。ただし――俺は俺のやり方で戦う」
勇者パーティの表情に嘲笑が浮かんだ。
「よし、それでこそだ!」
剣聖が高らかに剣を掲げると、広場はどよめきに包まれた。
王様が立ち上がり、威厳ある声で宣言する。
「面白い! では公正を期して、王都広場にて“模擬戦”を執り行う! 無職と勇者の力比べ、我が目で確かめてくれよう!」
「えぇぇぇ!? 王様ノリノリ!? 止めてくれよぉぉぉ!!!」
だが民衆は大盛り上がりだ。
「無職VS勇者だって!?」「見たい見たい!」
「ユウマ様ならやってくれる!」
「いや無理だろ無職だぞ!」
「でも草むしりで魔物倒したしな!」
賭け事好きの商人たちまで声を張り上げる。
「掛け率は勇者が10倍有利だ!」
「いや無職が勝ったら伝説になるぞ!」
……おい待て、いつの間にかギャンブルの対象になってんじゃねぇか!?
勇者パーティは余裕の笑みを浮かべていた。
聖女が髪をかき上げながら冷たく言う。
「明日、広場にて。無職の醜態を世に晒しなさい」
魔法使いは冷笑を浮かべた。
「草むしりで剣に勝てるか、証明してもらおうか」
そして剣聖が俺に剣先を向け、断言する。
「明日、お前を無職のまま叩き潰す」
俺は心臓がバクバクするのを感じながらも、ぐっと拳を握った。
「……上等だ。俺は無職だ。でもな――草むしりで勝ってやる!」
こうして、王都史上初の“無職VS勇者パーティ模擬戦”が公式に決定してしまった。
次回、無職VS勇者パーティの戦いが幕を開ける――。




