序章:銀河を駆ける調和のレール
遥か遠い未来、広大な宇宙の片隅で、数多の星々がそれぞれの秩序と混沌を織りなし、悠久の時を紡いでいた。そこには、星雲の奥深くに隠された未踏のフロンティアもあれば、幾多の種族がひしめき合い、高度な文明を築き上げた大都市惑星も存在する。銀河は常に流動し、新たな発見と、避けられぬ対立の歴史を刻み続けている。
この膨大な宇宙を縦横無尽に駆け巡る、唯一無二の存在こそが、「銀河鉄道」である。
それは単なる交通手段ではない。宇宙を翔けるその輝くレールは、惑星と惑星を、星系と星系を、そして異なる文明と文化を繋ぐ、まさに「銀河の動脈」と呼ぶにふさわしい存在だ。超光速航行を可能にする特別なレールと、それに沿って運行される豪華客船のような列車たちは、貿易、観光、外交、そして日常のあらゆる営みを支えている。
銀河鉄道株式会社は、この壮大なインフラを管理・運営する、銀河社会において最も影響力を持つ巨大企業であり、その影響力は一部の惑星連邦政府をも凌駕すると言われている。
銀河鉄道は、調和を重んじる。それは、数多の種族が共存する銀河社会の平和と繁栄の象徴であり、多様な文化と生命が互いを尊重し、手を取り合う理想を体現している。
しかし、その「調和」の裏側には、常に「不調和」の影が潜んでいるのもまた事実だ。資源を巡る争い、種族間の根深い対立、政治的な陰謀、そして何よりも、心の奥底に巣食う憎しみや貪欲。そうした闇が、銀河の平和を脅かそうと蠢いている。
銀河鉄道株式会社の安全保障本部に所属する「GRSI(Galaxy Railways Special Intelligence、銀河鉄道特別情報部)」は、まさにその「不調和」と対峙するために存在する。
彼らは、銀河鉄道の安全運行を脅かすあらゆる脅威――テロ、密輸、情報犯罪、そして大規模な政治的陰謀――を未然に防ぎ、あるいは解決へと導く、影の諜報機関である。彼らの任務は、公式には語られることのない、極秘裡に進められる。
GRSIの本部は、セントラル・オービタルという巨大な人工惑星にある銀河鉄道株式会社本社の隣にひっそりと佇む。その中に設けられた特別作戦室で、五人のエージェントからなるチームが、日夜銀河の平和のために任務を遂行している。
彼らは、カケル、ミリアム、イヴァン、エミリー、そしてノア。彼らはとある特殊な種族の末裔であり、その外見こそ若々しいものの、GRSIのエージェントとしては相応のキャリアと経験を積んできたベテラン揃いだ。それぞれの才能と、互いを信じる絆を胸に、彼らは銀河の「調和」を守るため、今日も広大な宇宙へと駆り出されていく。