十話
「金を集める方法を探さなきゃいけない。何がある?」
「えっと、何処で働かせてもらうとか?」
「馬鹿。俺は全労働ギルドから出禁だ」
アロンが言い放った衝撃の事実に、クレーは目を白黒とさせた。そもそも、闇ギルドの契約というのはシビアだ。汗くせ働いて、一か月先の給料を待っている暇などないのだ。
「良い稼ぎ方がある。その辺に小悪党はいないか?」
「小悪党? そんな人たちなんて……」
しかし、此処は王都西部。路地から悲鳴が聞こえて来たと思えば、年端の行かない少年二人組が慌てて走り去ろうとしていた。
「ひったくりよ!」
路地の裏から女の叫び、少年たちはバックを手にしている。
「冒険者崩れのガキだな」
アロンはふっと笑うと駆け出した。
「くそ、来るなぁ!」
少年たちは短剣を取り出そうとするが、アロンは彼らが剣を取り出す前に、手刀で叩き落として簡単に羽交い締めにした。もう一人の少年はバックを持っていた仲間がやられ、動揺して、逃げるか戦うか迷っているようだ。
そんな彼の背中に、クレーは恐る恐る忍び足で近づいていた。そして、背中に杖を突きつけた。
「う、動かないでください! 降参して、罪を償ってください!」
「うっ……くそぉ!」
少年は観念して膝をついた。
アロンは、クレーが自分の意志で手を貸したことに驚きつつも、金稼ぎのための策を実行に移した。
彼は事の成り行きを見守っていた群衆に、演技たらしく恭しくお辞儀した。
「ブラボー!」「よくやった!」「いいぞ!」
空に紙幣が舞う、群衆たちは見事なショーを見せたアロンにチップを支払ったのだ。
その光景をアロンの横で、クレーは呆然と見上げていた。