魔王城の管理人
魔王城を取り戻してから、魔王と魔王の部下たちは魔王城で暮らすようになっていた。ただ、しばらくは魔王城の片づけに追われていた。闇の魔物たちのせいで若干、魔王城の中が荒れていたので片づける必要があった。最近、片付けが落ち着いて来たので遊びに来てほしいとフィルは言われた。考えてみると、フィルは魔王城を取り戻した後、まだ魔王城に遊びに行けていなかった。
国王から魔王城の管理人に任命され、魔王の様子を定期的に見守りに行くことで今までと同じように魔王と一緒に過ごしていいことになった。だから、魔王城の管理人の初仕事として魔王城に遊びに行くのもいいのかもしれない。そう思ったフィルはすぐ隣町の森にある魔王城へ向かった。
フィルは魔王城の門を持っていた鍵で開けて中へ入った。この鍵は魔王城の管理人になった時、国王からもらったものだった。王家の紋章の入ったこの鍵はフィルが国王から任命された魔王城の正式な管理人であることを示すものだった。魔王城の管理人として行動する時は常に身に帯びるように言われていた。
もらった日からフィルはこの鍵を大切にしている。というのも、この鍵をもっていれば魔王城の管理人として魔王に堂々と会いに行けるからだ。
魔王城は穏やかな古城だ。中が迷宮のようになっているわけでもトラップがあるわけでもない。不気味な様子もないし、さして広くもない。窓からは陽光が優しく差し込んでくる。魔王城は誰も使わなくなった古城を改装したと言っていた。だから、恐ろしい様子でもない。
前にここへ来たときは魔王城を取り戻す戦いの時だった。あの時は闇の魔物とそれを操る青年と必死に戦っていたから、ゆっくり魔王城を見る余裕はなかった。それにあの時は夜だったから魔王城の中も暗くて見づらかった。昼間に来てみると、より穏やかな時間の流れている場所だと実感する。
魔王はどこにいるんだろう。フィルは悩みながらも玉座の間へ向かった。なんとなくそこにいるかもしれないと思った。玉座の間の大きな扉を開けてみると、思った通り魔王が座っていた。リシャールとジェイドも一緒にいた。
「勇者の末裔よ、やっと来たか」
どうやらフィルを待っていてくれたらしい。魔王はそう言うや否やフィルの傍まで走って来た。魔王城の管理人になってから初めてここへ来たが魔王がいつもと同じ様子なので安堵した。
「なんだか久しぶりだよね」
「ああ。あれからお互いに忙しかったからな。やっと会えた」
そう思うと感慨深かった。ちゃんと魔王は魔王城に戻れたのだと改めて思った。
「せっかくだから城を見て行ってくれ」
魔王城の片づけが終わり、少しずつだが封印される前の生活が戻ってきているらしい。魔王城の2階には魔王と部下たちの部屋があり、そこで暮らしている。それぞれの部屋を案内してくれるようなので、フィルはみんなの部屋を見て回ることにした。魔王軍のみんなの部屋というのはどうなっているのか知らないので面白そうだ。
一番手前にあったのは氷の騎士の部屋だった。そこはジェイドが時々、掃除している。ジェイドは普段は森にある自分の家にいて魔王城へ通っている。リシャールも時々、山間の村にある自分の家に戻っているらしい。
ジェイドはフィルに氷の騎士の部屋を見せてくれた。壁一面に剣や盾、槍などあらゆる武器が飾ってある。床には様々な種類の鎧や壁に飾れない大剣のような大きな武器が整然と並んでいる。
「すごい…」
「氷の騎士様は武器や防具を熱心に集めておられたそうです」
武器や防具の収集が好きだったというのもあるが、様々な種類の武器を使ってくる相手を想定して動きを知るために武器を集めていた面もあるという。彼の真面目で実直な性格がうかがえる。
「氷の騎士は見上げるような大男だったぞ」
フランソワよりも体が大きかったという。確かに飾ってある鎧はどれもとても大きい。ジェイドは氷の騎士の部屋を使っていいと魔王に言われていた。氷の騎士がもし今生きていれば、子孫が自分の部屋を使うことを気にしなかっただろうというのだ。
だが、ジェイドは畏れ多い気がして、その部屋に泊まったりはしなかった。修行のために住むならわしになっている氷の騎士の住処があった地と違って魔王城の彼の私室に関しては何も言い伝えはない。いくら魔王に大丈夫だと言われていても、やはり勝手に使う気にはなれなかった。
その代わり部屋の掃除のためには中へ入った。鎧や盾、武器でもできそうなものは手入れしていた。ジェイドは修行の一環で普段から自分の武器や防具の手入れはしていたので、手入れ自体はすんなりできた。ただ、どう手入れしていいか分からないものや明らかに貴重そうなものは手出しできなかった。確かに武器も防具もきれいに磨かれている。ジェイドは憧れの氷の騎士の部屋に入れるだけで嬉しいようだった。これからもこの部屋を守っていくという。
氷の騎士の部屋の隣りはリシャールの部屋だ。リシャールの部屋は氷の騎士の部屋とまた違った趣があった。木でできた家具が多く、何となく山間の村にあったリシャールの住む狩人の小屋に似ている。魔王が妖精の眠りの魔法で封印された影響か、魔王城のリシャールの自室は以前と変わりないそうだ。リシャールは自分の使う矢を自作することが多いが、かつて作りかけにしていた矢がそのまま残っていた。リシャールは懐かしく思い、今は週の半分ぐらいは魔王城に留まっている。
作業台には作りかけの矢や調節しかけている弓が乗っていた。窓辺にはとまり木が置いてある。これはハヤブサの姿に戻った時に休むための場所だ。
リシャールとしてはずっと魔王城にいたかったが、長年、住み続けてきた山間の村には知り合いも多いので急にその村を離れることもできないという。そこで山間の村と魔王城を行き来している。ハヤブサの姿で飛んでいくので、そこまで大変でもないらしい。山間の村で魔王の目覚めを待っていた頃も、狩りで何日も留守にしたりしていたので、村と別の場所を往復するのには慣れていた。
リシャールの部屋を見ていると、魔術師が顔を出した。魔術師は今のところ魔王城にいる。月の精霊の眷属としての仕事があれば出かけなければいけないが、今は急な仕事はないらしい。
「当分は魔王様の傍にいられると思う」
そう魔術師は話していたらしいが、その言葉通り魔王城を取り戻してからはずっとここにいるらしい。
「よかったら、オレの部屋も見てみる?」
半分ぐらい面白がっている様子だ。魔術師の部屋は少し薄暗かった。棚が多く置いてあり、その棚に薬草やら瓶に入った材料やら見たこともない道具やらがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。イメージどおりの魔術師の部屋だ。棚に囲まれるように小さなベッドが置いてある。多分、そこで寝起きしているのだろう。旅に出ることも多いので、どちらかというと資材を置く場所と化しているようだ。
一番入り口に近い棚は旅先で手に入れた品物を飾っていて、どこか遠い国の名産品なのだろうと思われる物がきれいに並んでいる。ここだけは不思議と整頓されている。月の精霊の眷属として世界中を飛び回りながら観光も楽しんでいるようだ。中には小さな貝殻もあった。浜辺で拾ったのだろう。
「こういうのを持って帰ると、魔王様が喜んでくれるんだよね。だから、つい集めちゃってね」
フィルが棚をじっと見ていたので魔術師がそう言った。それで納得した。半分は自分の楽しみもあるだろうが、半分は魔王のためなのだ。確かに魔王はこういうものが好きそうだ。
最後に魔王の部屋を見に行くことにした。ちょうどみんなの部屋の真ん中に位置しているこの城で一番広い部屋だ。
「ここが私の部屋だ」
魔王がこともなげにそう言うと、さっと扉を開いた。魔王の部屋というからにはきっと豪華な造りなのだろうと思ったのだが。
「あれ…家具が少ない」
だだっ広い部屋にぽつんとぽつんと家具が置いてある。何か物を書く机と椅子、ソファ、衝立、燭台などが部屋のあちこちに一つずつ置かれている。
「そうか? こんなものだろう」
魔王自身は全く気にしていない。魔王が部屋の中に入って行くのを見て、リシャールと魔術師がそっとフィルに耳打ちした。
「魔王様は全く家具に頓着されなくてな…。逆に我々が家具を置いてみたりしたのだ」
「せめて暖炉だけは立派なのを作ろうってことになったんだよ。冬になると寒くなるし」
魔術師が魔法で作ったという暖炉はどの部屋よりも一番豪華だった。思い返してみると、みんなの部屋にも一つずつ暖炉が付いていたが、そのどの暖炉よりも大きかった。暖炉には美しい装飾が施されている。暖炉の傍の床には深紅の絨毯も敷いてある。これは魔術師が持って来たらしい。この辺りだけ見ると魔王の自室らしい豪華さがある。
暖炉の上には物が飾れるようになっているのだが、そこにはみんなが持ち寄ってきたであろう、いろいろな飾りが並べてあった。どこから持ってきたのか飾り時計も置いてある。暖炉の上の壁に飾ってある剣は氷の騎士が持って来たらしい。せめて武器の一つでも飾りたいと一番美しい剣をここへ持ってきた。
みんなの当時の様子が目に見えるようだ。あまりに魔王が部屋の内装を気にしないので、みんなが慌てて飾りを持ち寄ってなるべく豪華にしたのだろう。
「そう言えば、ベッドがものすごく窓際に寄ってるけど」
これは部屋に入った時から気になっていた。なぜかベッドが窓のすぐ近くに置いてある。まるで模様替えの途中のようだ。
「それはここからでも月の光を浴びられるように、皆が置いてくれたのだ」
確かに部屋の中よりもここの方が月の光が入って来るのだろう。ただ、月の位置によってはここから月が見れなくなるので屋根の上で月見をするらしい。
他に魔王の部屋には本棚がいくつかあって、そこにはかなりの量の本が並んでいた。
「本を読むのが好きなの?」
フィルはちょっと意外に思った。魔王が本を読んでいるところを見たことがなかったからだ。
「本はよく読んでいるな。ただ、ここにあるのは封印される前に買ったものだから、かなり古い本でな」
ということは数百年前の本ということだ。それはそれでかなり貴重な気がする。魔王は長い時間を生きてきた。その中で本をゆっくり読む楽しみを持つようになった。長生きである彼は時代の移り変わりの中で言葉を覚え直す必要があったため本を読むことが多かった。最近は魔王城のすぐ近くの町の本屋に行くようになり、店主の老人と知り合いになったらしい。
よく考えれば封印から目覚めてからは魔王城を取り戻すのに忙しかったのだから、ゆっくり本を読む時間はなかったに違いない。これからは好きな本をゆっくり読めるといいなとフィルは思った。そんなことを考えていると、フィルは本棚の中で薄っすら金色の光を帯びた本を見つけた。思わず、その本を手に取る。
「きれいな本…」
「それは月影の民が書いた旅行記だ」
「ええっ、本当!?」
魔王は本屋の店主に頼まれて月の光の魔法を使って読めなくなった本を元に戻した。それはかつて月影の民の誰かが各地を旅して書いた本だった。月影の民は魔王が最後の一人だから、これはかなり前に書かれた本なのだろう。店主は魔王にこの本を譲ってくれた。それから魔王はこの本を時折、読んでいるらしい。魔王の知らなかった月影の民の作った道具のことや行ったことのない土地のことなども書いてあった。
魔王は読んでいて楽しいと話しているが、ちょっと寂しいのかなとフィルは思わずにはいられなかった。魔王は月影の民の最後の一人として、長い人生を独りぼっちで生きていかなくてはならない。みんながいるから寂しくないと魔王は言っていた。それは本当のことに違いない。魔王は魔王軍のみんなと一緒にいて幸せそうだし、みんなのことを大切にしている。
そう分かっていてもフィルは時々、魔王が寂しくないか心配になる。もしもフィルが魔王と同じ立場になったら耐えられないだろうと思う。だから余計、心配になるのかもしれない。
フィルは月影の民の旅行記をそっと本棚に戻した。魔王はというと、魔術師に呼ばれてそちらへ行ってしまった。
ひととおりみんなの部屋を見て回ったフィルは中庭へ行ってみた。真ん中に一本だけ木があり、その周りに月見の花が植えられている。木の真上にはガラスの丸天井がついていて、そこから日の光が差し込んでくる。丸天井からオレンジ色に染まる空が見えた。いつの間にか夕方になっていたのだ。
中庭ではドラゴンとグリフォンが昼寝をしていたが、フィルが近づくとドラゴンが起きてきた。
「勇者の末裔ちゃん、来てたんだ」
「うん。みんなが落ち着いたって聞いて」
中庭は以前、魔王城へ来た時とあまり変わっていなかった。いつ見ても穏やかで、この城の憩いの場になっている。ドラゴンとグリフォンはよくここで過ごすらしい。森で過ごすのが好きな二人にとって、この中庭は居心地が良かった。ドラゴンとフィルが話しているとグリフォンも起きてきた。その場で伸びをすると、フィルの方にやって来た。
「フィル、遊びに来てくれたんだ」
グリフォンはまだ寝起きなので、半ば夢うつつのように呟いた。二人とも以前のように魔王城の中庭でゆっくり過ごせるようになって嬉しいようだ。魔王城を取り戻すまではずっと北の森にいたから。ちなみにこの中庭の草木は魔王軍のみんなが交代で世話をしているらしい。以前からそうだったという。
木は始めからここに生えていたらしいが、月見の花は氷の騎士がここに植えて根づいた。氷の騎士は魔王が月影の民の最後の一人と知ると、ここに月見の花を植えたという。月見の花は月の精霊の力を宿しており、月の精霊の力の強い地に咲く。月影の民は月見の花に大切なことを願う風習があり、当時、魔王は城の外へ月見の花を探しに行くことがあったらしい。それほど魔王にとって大切な花なら魔王城の中にある方がいいと思ったそうだ。氷の騎士なりに魔王が寂しい気持ちを少しでもしなくていいようにしたかったようだ。
氷の騎士の提案を聞いて当時の魔王軍のメンバーも手伝った。始めはなかなか芽が出なかったが、丸天井から月の光が入って来ることが幸いして、とうとう根づいたという。
「魔王様はここに月見の花が咲いたのを見て、すごく喜んでくれたよ」
ドラゴンは懐かしそうにそう言った。この話を聞いたジェイドは人一倍熱心に月見の花の世話をしているらしい。氷の騎士の守りたかった花を自分も守りたいと思っているのだ。
魔王軍のみんなも魔王が月影の民の最後の一人であることを心配したのだ。そして、それぞれのやり方で魔王を元気づけようとしたのだろう。フィルはそれを知って温かい気持ちになった。この月見の花はずっと中庭で咲き続けてほしいと思った。
ドラゴンたちと話し込んでいると日が暮れて夜になり始めていることに気づいた。フィルはそろそろ帰ることにした。魔王に会ってから帰ろうと思って探していると、今は屋上にいると魔術師から教えられた。屋上へ続く階段は小さかった。登ってみると、ごく狭い屋上のスペースがあって、すぐ傍は屋根になっていた。その屋根の上に魔王が座っていた。
空には月が昇っている。魔王は月の光を少しでも浴びると魔力が回復する。それこそが月影の民としての特徴で、魔王はほぼ毎日、月見をしていた。魔王本人が月見をするのが好きというのもあるようだが。フィルが隣りに座ると魔王が話しかけてきた。
「おお、勇者の末裔か」
「魔王、こんな所にいたんだ」
「ちょっと月見をしようと思ってな」
魔王城を取り戻してからはゆっくり月見ができているらしい。フィルは魔王の隣りで月を見上げた。優しい月の光が辺りを照らしている。
「こうやってお前と月見をしたのはいつ以来だったか」
「リシャールさんの村に行った時以来じゃない?」
初めてリシャールの村へ行った時、月見の花が群れて咲いている中で月見をしている魔王を見た。そこで魔王が月の光で魔力を回復することを知った。はっきり一緒に月見をしたと言えるのは、その時以来だろう。魔王城を取り戻すまでは、やはり忙しかったので月見を一緒にすることはできなかった。
「そう言えば、私に何か言いたいことがあるんじゃないか」
「えっ」
フィルは魔王にそう言われて少し驚いてしまった。というのも、フィルは魔王と月影の民の旅行記のことが気にかかっていたからだ。
「何か思い悩んでいることでもあるのか?」
どうやらフィルが考えごとをしている様子を逆に心配されたらしい。フィルは思いきって旅行記のことを話題にした。
「月影の民の誰かが書いた旅行記を見つけたって言ってたでしょ。それで、やっぱり魔王、寂しいのかなって心配になって」
今度は魔王が驚く番だった。まさかフィルが考えていたことが自分のことだとは思っていなかった。しかも自分のことを心配してくれていたとは。
「お前は本当に優しいやつだなあ」
それは魔王の心の底から出た言葉だった。魔王は胸の内が温かくなったように感じた。勇者本人とよく似た面影を持つこの少女はとても優しい。だからこそ、フィルに心配をかけたくないという気持ちもあった。だが、フィルが自分を心配するのは月影の民の最後の一人という立場を想像してくれた結果だということも分かっていた。フィルの思いやりの気持ちを大切にしたかった。
「心配しすぎだった?」
「いや…」
魔王は自分の気持ちを言い表す言葉を探した。それを考えているうちに再びフィルが口を開いた。
「魔王は何千年も生きるんでしょ。その間ずっと月影の民の最後の一人として生きるってどうなんだろうって思ったら想像できなくて」
フィルは人間にとって悠久とも思える時を月影の民の最後の一人として生きる魔王のことを考え、その想像できない孤独からたびたび心配になってしまうのだった。一方、魔王が生まれた時には既に月影の民はほとんどおらず、いつの間にか彼が最後の一人になっていたので、そういうものだと思っていた。一人で生きるのは大変だったが持ち前の明るさで今までやってきた。
それに今は一人ではない。魔王軍のみんなもフィルという大切な友達もいる。それはとても幸せなことだ。
「心配してくれたことは嬉しく思う。そういうふうに考えてくれる友達がいるというのは幸運なことだろうから」
それから魔王は旅行記に書かれていたことを話した。そこに出てきた場所にみんなで行ってみたいということも。
「みんなで一緒に行こうね」
「そうだな。みんなで行こう」
二人はそう言って笑った。フィルはもう心配な気持ちはなくなっていた。やがて屋根の上をドラゴンが飛んできた。もしもフィルが帰るなら、夜だから送っていくという。フィルはドラゴンに乗せてもらうことにした。確かに月が既に高いところへ昇っている。フィルはドラゴンに乗りながら魔王の方を振り向いた。
「魔王、また明日ね」
「ああ、また明日」
それはなんでもない日常の風景だった。だけど魔王城を取り戻した冒険の後では魔王にそう言えることが幸せなことだとフィルは思った。
フィルはドラゴンに乗って帰路についた。
明日はどんな日になるだろう。一つ言えるのは、明日もきっと楽しい一日になるだろうということだった。