第 92 話
連続投稿の二話目です、前の見てなかった方は前の話を。
まあ、連続投稿と言っても前の話を下書きで入れて、投稿したつもりだが実は投稿してなくて、下書きのまま今日で投稿しようとしたとこ気づいたという...はい。
「ユナ、成果はあったか?」
フロリナと別れたあと、特にアクシデントもなく、本を漁りまくったあと、時間が午後を回った時、無事にユナと合流した。
「はい、肉体と精神に関する研究、それと先ほど言われた変身魔術についての研究のものも一通り集めました、しかし、ここの資料のレベルが正直低くてそれほど役に立てそうにないんですが...」
「それはわからないぞ、役に立てそうにないって思っても意外なひらめきを与えてくれるかもしれないよ、今朝...」
「今朝?」
「ええ、今朝上で上級魔術師の人とあってすこし話してね。」
別に何があるわけではないが、面倒事はできるだけ避けたいので、なんとなくフロリナの名前を伏せた。
「そうですか、それで変身魔術を...その人ってもしかして昨日のあの女ですか?」
だがわたしのささやかな努力もむなしく、あっさりと見破られた。
「え、うん、そうだよ。」
見破られた以上、無理に隠そうとすると逆に怪しくなってしまうので、潔く認める。
「ふーん、そうですか、そんなことより、エレスさま、わたくし、一つ面白い情報見つけました。」
何か言われる覚悟をしたが、特になにもない上に逆に向こうから話題を変えてくれた。
「お、どんな情報?」
「こちらをご覧ください。」
ユナはテーブルに積まれた本の中から一冊を取り出し、そのまま開いて中の一段落を指差しながら見せてきた。
「うーん、続いてテラーの起源については諸説ありますが、最も有力的な一説は創立者である神獣テラーが当時聖王国の反乱軍に追われていた命神教の残党を助け、その人たちが向かおうとした命神遺跡まで送り届けたあと、そのまま残り、町に発展させた説です、うーん、これは眉唾では...」
「実は気になって探してみたんですが、同じような記述がいろんなところにありまして、ですので案外本当かもしれません。」
ユナはなぜかやる気満々だが、正直自分はあんまり乗り気ではない、なんせあの呪いの指輪のことがあるから、こういう遺跡の掘り出し物は必ずしもいいものとは限らない。
「でももうすでに命神教の人もテラーも入ってたんだろう?千年も経ったし、なにか手がかりがあったらまだしも、わざわざ時間をかけていくものでは...」
「あります!こちらをご覧ください。」
まるで予想してたように、ユナはわたしの言い訳を速攻潰しに来た。
「だから、俺は例の遺跡がナッソス大聖堂の地下にあると判断した、ナッソス大聖堂?!」
これってまさか。
「はい、聖女さまを記念するために建てられた聖堂だそうです。」
やっぱりか、まあ、命神教の残党って言ってたもんな、来る時特に旅行スポットとか調べておけばよかったな。
「な、なるほど、うーん、どうしようかな~」
正直気になったりはするが、この町の起源とも呼べる場所に潜入するのはどう考えても簡単じゃないし、リスクが高すぎる。
「あのう、聖女さまの姿で正面からというのはいかがですか?」
「はあ?!」
ユナのとんでもない提案でわたしは思わず大声を出した、幸いちゃんと防音結界を張ってあったから特に騒ぎはならなかったが、それでも無意識自分の声量を抑えた。
「そんなことできるわけないだろう、ここには神獣テラーがいるんだぞ、そんなことしたらあとあと大変なことになるに決まっている。」
「命神教の人なら聖女さまのことを神のように思っているでしょうから、案外うまくいくかもしれませんよ。」
「それはそれでもっと困るわ、狂信者の暴走より怖いものはない。」
たとえ暴走しなくても、付きまとわれたり、あれやこれやと頼んできたりと絶対面倒なことにしかならない。
「そうですか...」
「うん?ユナはそんなに行きたいのか?」
何だかがっがりしたようなユナを見てわたしは素直に疑問を口にした。
「実は聖女さまがなくなられた前にすこしだけ新しく発見した遺跡の話してたんです、もしかしたらと思いまして...」
「つまり、ここがあの聖女さまの言った遺跡かもしれないと。」
「はい。」
確かにこれは気になるけど...
「はあ、どっちにしろ、今すぐ行かないといけないというわけではない、この町でやりたいこと全部やってから考えよう。」
「はい!」
可能性を示したわたしにユナはすごくいい笑顔で返事した。
「考えるって言っただけだよ。」
そうは言うものの、ユナの笑顔にわたしごときが敵うはずもなく、内心ではすでプランを考え始めている。
「はあ、旅館に帰ろう。」
その一方、ナッソス大聖堂地下。
「よっ、来たか。」
崩れた石壁と土砂に埋め尽くされた部屋に、数個の魔導照明が灯され、その柔らかい光に照らされた地面の上には散らかったゴミとまだら模様になっている血痕が残されている。
そんな一般人が近づきたくもないところに一人の男は気に留める様子もなく床に座っていて、真っ黒に焼かれていたなにか獣の肉をかじっている。
「お前よくこんなところで住めるな。」
そのまるで野人のような男の向こうの部屋の入り口に真反対のような小綺麗な格好をした女が立っていた。
女はマスクをしていて顔の全体は見えないが、その吊り上げた目には目の前の男に対しての嫌悪感が宿っている。
「これぐらい屁でもねえよ、次のおもちゃはまだなのか?」
「急かすな、調べるのも時間がかかる、今回は前のを...ってか前の子は?お前まさか食ったのか?」
女は部屋を見回し、あるはずのものがないことに気付く。
「食わねえよ、お前いつまでも来ねえから、腐る前に外に捨てただけだ。」
「ならよかっ、待て、お前どこに捨てた?」
女は一瞬安堵するもすぐ何かに気付いた。
「はあ?そりゃこの建て物の外に決まってんだろう。」
「クソ!お前っ!」
女は怒りで男を指差したが、男は女に見向きもせず、目の前の黒焦げ肉に夢中だった。
「はー、クソ!」
目の前の男に言っても無駄だと悟ったか、女は手を下ろし、踵を返した。
「ああ、一応言っとくが、霊界派の奴らがテラーにきている情報が入った、お前はもう外に出歩くな。」
「霊界派?どいつだ?」
「ハーヴィーとヴァーレン。」
「誰?」
「はぁ、死体狂いとギザ野郎だ」
バカみたい、いや、バカで間抜けな声で聞いてくる男をぶん殴りたいの我慢して、女は言い直した。
「ああ!わかったぜ。」
「ふぅ、じゃ、ここでおとなしくしとけ。」
やっと解放されたと女は足早に姿を消した。
「へい、へ、ぐちゃ、へっへへひぇへ。」