第 89 話
「エレスさま!エレスさま!」
「うーん、なに?」
「今日は早めに出発するとおっしゃいましたよね?先ほどアンリさんからも朝食の連絡ありましたよ。」
「もう少し寝さして。」
昨日計画を立てたあと、ミューゼを寝かせたあと、自分はネクロマンサーからもらったノートの研究をして、かなり深夜まで起きていたからまだちょっと寝たい。
一か月寝なくもいいんじゃないのかって?確かに寝なくもいいが推奨されるものではない、なぜなら、長時間低い精神力水準を維持すると精神力上限まで下がってしまう恐れがあるから、実際精神力高い人でも最高の状態を保つために眠くならなくても自分を無理やり睡眠状態をしてることが多々ある。
「しかし...」
「もう、うるさい!」
「あっ、え!」
拒否されたのが気に入らなかったのか、寝ぼけていたわたしは何を思ってやったのか、ミューゼの手を掴んで布団の中に引っ張り込んだ。
その後は再び布団を被り、ミューゼの頭を自分の胸に押し込む形で抱きしめた。
引っ張られたミューゼは驚いたものの、特段抵抗などもせず、ただ黙って抱きしめられた。
そして十数秒が立ち。
「もう、こんなことして、エレスさまが悪いんだからね、えへへ。」
その言葉を聞いてわたしは蛇に睨まれた蛙のような危機感を覚えたが、時はすでに遅し、
前にすこし曲げた足の間には足を差し込まれ、絡めとられた。
そして次の瞬間、悪魔の手が太ももからよじ登り、わたしの御居処をわし掴んだ、それと同時に、上半身の隆起も強い圧によって変形させられ、薄い生地のパジャマを隔てても熱い吐息を感じた。
待って、なんか濡れてっ。
「ちょっと、さすがに...」
熱だけじゃなく、山の頂上にどろっとした洪水が流されたことを感じ、これ以上山頂が何かされるそうなところ、わたしは思い切り手を前に推し、ミューゼをベッドの下に落とした。
「ユナ?ユナだよね!」
さすがに眠気が覚め、起きてベッドの横を見ると、落ちたユナは痛がったりもせず、わたしをわし掴んだ手の指をぐにょぐにょしたり、舌をなめずっている。
「ちょっと?!」
まったく話聞いてない状態なので、仕方なく足を彼女に近づき、足指で彼女の顔をツンツンした。
まるで電撃でもされたように彼女の体はぴくっとなり、次の瞬間、彼女の手は獲物を取る勢いでわたしの足に向かった。
しかし、それぐらい当然予想できたわたしはそれを上回るスピードで足を引っ込み、彼女の手は空ぶった。
「あんた本当に変わんないな、ユナ。」
「え?ユナってなんですか~、わたくしミューゼですよ~」
まるで何もなかったのように、ユナは立ち上がり、不思議そうな表情でボケた。
「そのボケはもういいって、ミューゼがこんなことするはずないだろう。」
「ええ~そんなこと言っていいんですか?あの子今度エレスさまに夜這いかけてわたくしに罪を擦り付けたらどうしますか?」
あの子そんなことできるなら逆に見てみたいんだわ。
「そんなことはどうでもいいけど、なんで今日は出てきたんだ?」
「どうでもよくはないんですけど?!もう~、今日魔術図書館とかいろいろ回るのでしょう?ですからわたくしもなにかできることはしたいといいますか。」
「へえ、もう諦めていると思ったけど?」
「わたくしだって死にたいわけではないんですよ、助かる方法があるならもちろんします、ここ千年だって何度方法を考えてました、ただ所詮は他人に寄生している身、できることは限られているし、むしろ考えれば考えるほど思い詰めてしまい、何もかもがっ!」
「大丈夫だ。」
ユナの言葉が終わるのを待たずにわたしは彼女を抱きしめた。
「絶対なんとかなるなんて無責任なことは言えない、だからここからはすべてわたしの願望だ、目を閉じて聞いてくれ、わたしは君たちと世界を回りたい、精霊王国、混沌の森、ナランとグラン、機会があればリグアトラスも、そこでいろんなことを体験して、いっぱい思い出を作りたい、最後には静かで景色のいいところで家を作ってのんびり暮らしたいんだ、この目標を達成するためには君の存在が必要だ、諦めずについてきてほしい、いいか?」
「うん。」
「ありがとう」
わたしがそう言って、彼女を抱きしめる手を離す時、ドアからノック音が響いた。
「あ、あのう、すみません!」
アンリちゃんだ、アンリステルススキルが高いのか、自分がまったく警戒出来てなかったのか、とにかくすこしびっくりさせられた。
魔術でドアを開くと、外にはすこし顔が赤く、どことなく気まずそうな表情をしたアンリが立っていた。
「聞こえてた?」
「あの、その、すこしだけ...」
ああ、はずっ。
なにがはずいって、もちろんセリフの臭さもあるけど、なによりずっと幻覚魔術かかっているから、アンリからしたらお嬢さまであるわたしが男の執事を自分の胸に抱いて、そんなセリフ発していたわけ、いや、やばすぎだろう。
「どういった用事で?」
恥ずかしいの我慢して、わたしはまだぼうっとしてるユナを自分の後ろに隠して、アンリに聞いた。
「あっ、その、朝食のことを伺いに来ました、そのう、必要であれば部屋にお持ちすることも出来ますが...」
「なるほど、申し訳ないけれど、それお願いできるかしら。」
「はい!あのう、三十分後にお持ちするとかでよろしいでしょうか?」
めっちゃ気ぃ遣われてるって。
「ええ、それでお願いするわ...あのう、他に用事がなければ...」
返事したにもかかわらず数秒間立ったまま下がる気配なしのアンリをやんわりと退室を促した。
「あっ、申し訳ございません、お邪魔しました!」




