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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 84 話 

 先頭のラフィニアが掲げる明るい照明一つを頼りに四人は真っ暗な螺旋階段を下っている

「たった二か月ぶりだけど、なんか懐かしいね。」

「ええ、二か月前に一緒にこの階段を下った三人は今わたくし一人し残らないと思いもしませんでしたが。」

「ねえ、お姉ちゃん。」

 ナディとリリア二人が思い出に耽っている時、空気の読まないローゼシアはナディアーナに声かけた。

「え?なにそのお姉ちゃんって、怖いんだけど。」

 ローゼシアの言葉を聞いて、ナディアーナはまるで何かきもい虫でも見たかのようにすごく嫌な顔をした。

「あ、な、た、が、お姉ちゃんって呼んでって言ってたでしょう?もう忘れましたか?もうボケましたかしら?」

 嫌な反応をするナディにローゼシアはすこし眉をあげたが、それでも言葉はやさしい口調を維持した。

「いや、それは前の話だろう、あんな喧嘩したあとにお姉ちゃんとか恐怖でしかないんだけど。」

「わたくしだって呼びたく呼んでるわけじゃないわよ、約束をした以上、これからも付き合いをつづけなければならなりませんから、優しくしてあげましたのに、なんなんですか?その態度。」

「そうそう、その生意気な口調、そのほうがいいよ。」

「バカですの?いや、バカはもう確定してますから、マゾですの?」

 ナディアーナのふざけた態度がさらにローゼシアを苛立たせた。

「はあ、お二人とも、喧嘩はほどほどにしてください、もうすぐ着きますよ。」

 また勃発しそうな喧嘩をラフィニアはもう一度止めた。

「その口調もすこし違和感を感じるけどね。」

 さっきまで怖いと口にするナディは今まるで恐怖を知らないのようにラフィニアを突いた。

「先ほどの言葉遣いはわたくし自身の誓約によるもので、わたくしの本来の口調ではありません。」

 しかし、当の本人はあの口調のことを何とも思ってないようで、極淡々と説明をした。

「自分に誓約魔術をですか?」

「はい、先ほども言いましたが、わたくしの一族は長年誓約魔術を研究してきましたので、当然活用方法の一つや二つは把握してます。」

「どんな活用方法ですか?」

 なぜか誓約魔術に興味津々なリリア。

「一族の秘術なので、これ以上は教えられません、とにかく、わたくしが臨戦態勢に入ると、そういった口調になると認識してくれれば、着きました。」

 そうこう言っているうちに、四人は螺旋階段を下りきり、地下街に到着した。

「誰だ?!」

 例のごとくお出迎えが現れたが、前回の二人ではなかった。

「ハーベスト商会です、話はすでに通してあるはずです。」

 その名前を聞いた門番の二人はなにか話したあと、うちの一人はすこし離れた。

「確認しますので、少々お待ちください。」

「ほう、あなたたちがこんな丁寧な言葉遣いできるとは驚きますね。」

「我々も命が惜しいので。」

 管理会の人間としていつものような跋扈ぶりが消え、むしろすこし萎縮した様子で門番の人は答えた。

「うん?別に言葉遣いごときで命取ったりはしませんけど?」

「いいえ、そういうわけでは、二ヶ月前そちらの人の関わった大きな騒ぎがありまして、その後、管理会内部でも外部でも大きな動きがあったんです、あの時ハーベスト商会の人を通した門番が...」

「兄弟!」

 さっき離れた人が戻って、男に耳打ちした。

「はあ?本当?」

 肯定の返答を得たあと、男はこっちに向いた。

「確認は確かに取れました、しかし、みんなさんの安全のために、自分も同行しければなりません、よろしいですか?」

「すみませんが、それは断ります、視察に来たのであなたたちがいたら本当の状況が見えません。」

「しかし...」

 断られたとは思えないぐらい嬉しそうな顔をしながらも言葉上は押し通そうとする男。

「前回みたいな大騒ぎになりたくないなら放っておいてくれと上に言ってください。」

「わ、わかりました!」

 脅しが効いたのか、それとも門番の人の口添えがあっとのか、最終的監視役なしでナディアーナ一行は地下街に入ることができた。

「やっぱり前回の騒ぎで大分大事になりましたね。」

 地下街の入り口から離れ、リリアは気にしたことを口にした。

「当然です、あれだけの軍呼びつけたんですから。」

「うーん、やっぱりあの時の門番の人とかいろんな人がそれで...」

「気にすることないよ、リリ姉、どうせここの人みんなろくな死に方しないような人たちだから。」

「何言ってますか、ナディだってっ。」

「あたしも含めて、だよ。」

 ナディの言葉でリリア一瞬何を言えばいいのか分からなくなった。

「ここってそんなにやばいところですの?」

 空気読んでるのか読んでないのか、ローゼシアが話題を逸らしてきた。

「やばいよ~、あんたみたいな小娘なんてすぐぱっくと食べられちゃうぜ。」

「子供じゃありませんから。」

「食べられるかどうかはさておき、ここは確かにこの町の悪が煮詰まったところではあります、コソ泥から人狩りまで住んでいますから、あと、ナディアーナさん。」

 ラフィニアは突然ナディアーナを呼んだ。

「え?」

「理由はどうあれ、あなたは聖女さまに選ばれた人です、その誇りをもって生きていてほしい、あなたが自分を貶す時、名前に傷がつくのはあなただけではないのです。」

「はい!すみませんでした!」

 一時間後。

 地下街の住人からいろんな目線を向けられながら歩いてたら結構遠くまで行った。

「そろそろここら辺で折り返しますか、でないと夕暮れ前に戻れませんので。」

「え?もうですの?もう少しでも...」

 さっきからずっと好奇心旺盛な子供みたいにいろいろ聞きまくってたローゼシアは当然まだ回り足りなくて、駄々をこね始めた。

「ダメです、帰り別のルートを使いますので、それで納得してください。」

「わかりました。」

 しかし、固いうえに威厳も示したラフィニアに適うはずもなかった。

「別のルートって、鳴き通りを通るのか?それ大丈夫?」

 鳴き通り、女性と赤ん坊の鳴き声で名付けられた通り、言わばレッドライト地区、それもかなり悲惨なやつ。

 それがどんなところを知っているナディアーナはもちろん行きたくないので、わざわざ確認をした。

「すこし離れた裏道を通るので、大丈夫です。」

 ナディアーナが何を心配しているのかを知っているラフィニアはすぐに小声で説明をした。

「ねぇ、その鳴き、どおぉり?ってどういうところですの?」

 しかし、好奇心マックス状態のローゼシアは聞き逃さなかった、二人の間に割り込んで聞いてきた。

「少し治安の悪いところだよ。」

 ナディアーナは何とか誤魔化そうとしたが、ローゼシアはそんな回答では満足しない。

「何で治安が悪いですの?」

「うーん、それは...」

 ちょうどナディアーナたちが返答に困っているその時。

 パーン。

 道端の建物から人一人が投げ飛ばされ、ちょうどナディアーナたちの付近に落ちた。

「金ねぇなら来るな!時間を無駄にしやがって。」

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