第 79 話
「ではいくつか質問させてもらいます。」
ネクロマンサーのねぐらから研究しながら移動すること数日、わたしたちはテラーに到着した、しかし、城門を通るとき、関所の審査官に呼び止められ、そのまま調査室へと案内された。
「ま、安心してください、お二人若いのに遠路はるばるきたので、ちょっと気になっただけです。」
なるほど、てっきり変装がバレてたと思った。
この世界ではこういった身分チェックは基本的精神力検査で行っているので、幻覚魔術などの変装魔術をチェックしたりは基本的ないんので、対策なども当然していない。
「そうですか。」
護衛をしている男の姿をしているミューゼがすこしホッとした様子を見せた。
ちなみに今わたしはちょっと可愛げのあるお嬢様という感じの見た目していて、一応お嬢様とその護衛の一行という設定でやっている。
「では最初の問題ですが、二人はラスタリア王国からの難民ということでよろしいですか?」
「は?今なんってことをいいましたの?わたくしたちが難民ですって、本当に失礼な人ですわね!これだからっ。」
「お嬢さま!」
審査官の言葉に激昂したわたしをミューゼは止めた。
「な、なによ。」
「ここは全部わたくしに任せるって約束してくれたじゃないんですか?誇り高きライン家のご令嬢として約束を反故にしてよろしいんですか?」
「ふん、わかりましたわ、セバスチャン。」
まるで弱みを握られたようにわたしは大人しく黙った。
この世界のことまだまだ疎いわたしが黙ってても違和感なくするための芝居、ということで通ってますが、本当はただ面白そうだからである。
ちなみにセバスチャンもわたしの趣味、この世界では聞かない名前なのでミューゼちゃんには変な目で見られましたが、ご主人権限で押し通した。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません、審査官さま、ただわたくしたちは戦争から逃げてきた難民ではなく、観光をするために入国させていただいていること間違わないようにしてほしい。」
「あ、そ、そうですか、じゃ、ええと次の質問ですが、なぜ地下交通ではなく、地表から入国してきたんですか?」
ちょっと変な人だと思われていたのか、審査官特に深く触れずに次の質問に移行した。
「それは...お恥ずかしながら、わたくしたちは当主に黙って家を出たため、一般的ルートを使わずに地表を通ってきたわけです。」
「なるほどー、ふーん。」
わたしとミューゼを交互に見て、審査官はちょっとよくわからない笑みを浮かんだ。
「では最後の質問です、お二人は性的な経験はおありですか?」
「はあ?なにをっ。」
あんまりにも唐突な質問にわたしは思わず口を出してしまった。
「なぜそれを?あれは外国人に適用されないはずでは?」
ミューゼも驚いてはいるが、わたしとは原因は違うようだ。
「ええ、それは別に変わったわけではないですよ、ただ...」
「ただ?」
わたしが全然状況を掴めていない時に、話がどんどん進められていく。
「ただ、最近城内でそういった人を狙う犯罪が頻発していて、この町でこんなことするというかできる人ってやっぱっ。」
「バカ野郎!だまれ!」
突然の怒声が部屋を響き渡り、審査官の声を遮った。
そして重くて早い足音のあと、ドアがバーンと開かれ、一人の大男が入ってきた。
「てめぇ、なに余計なこと喋ってやがる、死にてぇのか?あ?!」
「い、いいえ。」
審査官を怒鳴ったあと、大男はこっち向けて口を開いた。
「申し訳ございません、うちの者が変なことを、お二人はもう大丈夫ですので、どうぞ観光を楽しんでください。」
そう言って大男は審査官の肩を叩いた。
「ほら、お客さんを送ってやれ。」
「あ、はい、どうぞこちらへ。」
よくわからないけど、とにかく無事に検問を乗り越えたわたしたちは審査官について城門を通った。
「あそこにある駅で列車を乗れば内城にいけます、もし余裕があれば、あっちで車を借りてこのままゆっくり田んぼの景色を見ながら内城に向かうのも乙なものですよ。」
城門を通ったあと、審査官は近くにある建物たちに指差し、内城に向かうためのルートを教えてくれた。
「うーん、この国の魔導列車も乗ってみたいけれど、車でゆっくり回るのも魅力的ですわね...」
そう言いながらわたしは数歩先に進み、審査官とミューゼからちょっと離れた。
それを見た審査官はこれ幸いとミューゼに近づき、小声で言った。
「さっきは課長に入られて聞きそびれたけど、あれ、まじで危険だから、もし君たちが本当に経験がないなら、早めにやったほうがいいぞ。」
「や、やるって何をですか?」
こんな十メートルぐらいの距離はわたしにとって目の前にいると変わらないとわかっているミューゼはちょっとわたしのほうをちらっと見て白を切った。
「またまた、男同士、腹を割って話そうぜ、君たち駆け落ちしてきたんだろう?どうせいつかやることやるんだし、ピンチはチャンスだぜ。」
「いや、わたくしたち別にそういう...」
「そういうのいいから、まっ、これ...持っとけ。」
そう言って審査官はポケットから一枚のカードを取り出し、ミューゼに渡した。
「これは?」
「俺の知り合いが経営してる宿屋のカードだよ、君たち金はあるんだろう、そこの一番高いランクの部屋、景色もいいし、部屋の中にプライベート温泉もあるんだぜ、そこでいい雰囲気になってっ。」
笑顔浮かべながら審査官は拳で自分の手のひらを叩いた。
「一発、どう?」
「いや、どうって言われましても、やっぱりこれはかえすっ。」
「本当素直じゃないな、俺ははやく戻らないと怒られるから、それ、取っときな。」
そう言って審査官は足早に関所に向かった。
「ほう、どれどれ~。」
ミューゼがまだ審査官の姿が消えるをぼうっと見ている時、突然横から手が現れ、彼女の手に持つカードを奪った。
「お嬢さま!」
「旅館深愛、深く愛し合うあなたたちに濃密な一時を、へえ、ふーん。」
「これは審査官の人が無理矢理っ!」
ミューゼ自分もまだちゃんと見てなかったのか、わたしの言葉を聞いて慌て出した。
「いいじゃん、今夜はここ泊まろう。」
「ほ、本気ですか?お嬢さま?!」
とんでもない言葉だけ残して勝手に駅へと歩き出すわたしをミューゼはテンパりながら追いかけた。