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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 75 話 

ミューゼと山を下り、ユノンの森についたごろにはもう昼過ぎだった

「ここでいいだろう、ミューゼ、周りの魔物を片付いてくれないか?」

男に変装した自分と変装してないミューゼの男女コンビで森に入り、たぶん他の人が使った野営地の跡地でわたしたちは止まった。

「わたくしひとりでですか?」

まるでなにか信じられないことを言われたようにミューゼは聞き返した。

「ああ、ここの魔獣なら君ひとりでも問題ないだろう。」

「え~、魔獣は問題なくても人狩りとかにあったらどうするんですか?」

「そしたら「たすけて~」って叫べばいいだろう、助けに行くからさ。」

「そんな~、来た時には死体になってたかもしれないんですよ、それでもいいですか?!」

「俺は別にそれでもかまわんぜ。」

「なんですって?!」

「ごちゃごちゃうるさいな、さっさといけ!」

ミューゼの背中を押して、催促する。

「ちょっ、ちょっと?!」

こっちをチラチラ見ながら離れていくミューゼに見向きもせずにわたしはあたりを掃除始めた。

「離れたな、ってかあんな大げさな芝居よく引っ掛かるな、棒読みだし。」

森に入ってすぐ誰かに目つけられたことに気づき、もちろんそのままやっちゃうこともできるが、さすがに監視されただけで殺すのは気が引けるし、何よりこっちのほうが面白そうだから、わたしたちは一芝居を打つことにした。

「ユナが考えたセリフだろうけど、ミューゼが言うと途端に胡散臭くなるよな。」

いまよく考えたら、ミューゼはなんで侍女に選ばれたんだろう、魔術の腕は普通だし、スパイとしてダメダメなところいっぱいあるし、やっぱり聖棘、いや、荊棘はユナの存在を知っていたのか。

「まあ、今となってはどうでもいいことだ、さて、そろそろ行くとするか。」


「魔獣、魔獣、早く出ておいて~、あっ、いた。」

とっくに居場所の分かったフニの存在をまるでさっき発見したばかりのように振る舞うミューゼ。

「喰らえ、石弾(トールテー)!」

口を開く必要もないのにわざわざ警告してくれたので、フニは当然攻撃をあっさり避けた。

しかし簡単に攻撃を避けたものの、本能的脅威を感じ取れたのか、フニは反撃することもなく遠くへと逃げようとした。

「逃げるな!」

それを見たミューゼはもちろん追いかけるが、フニの足は速く、こうして追いかけっこをするうちにミューゼは野営地からどんどん離れていた。

「兄貴、どうするんっすか?」

ミューゼがフニを撃ったところの近くの木の上に二人の男が隠れていた。

「まずは女の方からだ、人質にすれば男と戦う時に役に立つだろう、殺すなよ、いいか、追うぞ。」

「あいよ。」

数分後。

「あっ、離れ過ぎちゃった、戻らないと。」

フニとの追いかけっこで既に野営地からかなり離れてしまったミューゼがハッとなって踵を返そうとしたところ、魔力光を帯びた銃弾が彼女の目の前の地面に激突した。

「あっ!」

突然の銃撃に驚かされたミューゼは数歩引き下がったが、相手はまるで彼女を追い詰めるように彼女が体勢を立て直そうとするところをまた銃撃をし、一発一発で戦いの流れを制した。

そして連続の銃撃に移動を余儀なくされた彼女がついに銃撃を避ける途中で大木にぶつかり、一瞬止まった。

撃たれる恐怖でパニックになったのか、ミューゼは反射的に石弾を乱射し始めたけど、もちろんそんな乱射が当たるはずもなく、相手からの銃弾が彼女の頭を掠めるように彼女の後ろの大木を撃ち抜いた。

「うわぁ!」

当然至近距離で見る銃弾と頬に当たる木の破片でミューゼは更なるパニックに陥り、周りのことを見もせず、ただ走り出した。

「あっ!」

そんながむしゃらに走る彼女の足に突然なにかがぶつかり、彼女はそのままの勢いで前に倒れようとした。

この瞬間ずっと本能のように固く守られていた魔導器が大きな隙を見せた、もちろんそんな隙を敵が見逃すはずもなく、ずっと死角からチャンスを伺っていたリーダーの男が現れ、ミューゼの手から魔導器を奪った。

「ふ、大地の柩。」

魔導器を奪われ、地面に激突したミューゼが慌てて予備の魔導器を取ろうとしたところ、地面から土がまるで生きているように生えあがり、彼女を固く縛り付けた。

「離して!」

「おっと、動くなよ、動いたらあいつの銃弾であんたの頭がバーン!ってなるぞ。」

そう言って、男は森の中の方を指差した。

そして、彼の指の先の方向の森から、魔導銃を構えたもう一人の男が現れた。

「兄貴!どうっすか、俺の銃の腕すっごいだろう。」

一般的な猟師装束を着て、顔からヘアスタイルまで猟師にしか見えないリーダーの男と違って、新しく現れた下っ端の男はいかにも荒くれものの見た目だった。

ヨレヨレのTシャツに五分丈のパンツ、無駄にとげとげしてる赤色の短髪、加えて腕や顔に散乱している魔獣やら文字やらの刺青、まるでそういう創作物から出てきたヤンキーそのものだ。

「ああ、確かに腕は上がっているな、こっちに来てこいつを見張っとけ、この女の仲間が来る前に罠張っとく。」

「あいよ。」

リーダーの男がミューゼから離れ、作業を始めると、下っ端が銃を構えながらミューゼの顔を凝視し始めた。

「兄貴!このメスめっちゃ可愛いから一発やっていいっすか?」

「は?!バカかてめえ!」

「あっ、すんません、兄貴が先っすよね、俺は兄貴が飽きたあとでいいんで。」

「兄貴」の怒鳴りに対し、下っ端はすぐへこへこしながら謝ったが、その努力も虚しく、「兄貴」の更なる怒鳴りが響いた。

「ちげぇよ、お前脳みそち〇こなのか?たとえそうだとしても、そういうのはこいつの仲間を殺してからやるぐらいわかんねーのか?あぁ?!」

「あっ、本当にすんませんでした!終わって一発やります!」

「はあ、てめえはっ。」

頭を下げる下っ端にリーダーが呆れ、こってりと教育してやろうかと思ったその時、後ろから拍手の音がした。

ぱち、ぱち、ぱち。

「いやぁ、君ら面白いね。」

「来たか。」

声に反応してリーダーはすぐ振り返り、大声で呼び止めた。

「動くな、動いたらこの女の命はねえぞ。」

リーダーの脅しに合わせて、下っ端も手に持っている銃の銃口をミューゼに向けて数回振った。

「ふ、うふふ、だってよ、ミューゼ。」

「もう、お嬢さま、やっぱりわたくしはこういうの向いてませんよ。」

わたしの呼びかけで、さっきまで地面に縛り付けられたミューゼはまるで縛りの魔術が幻のように自然に起き上がり、その魔術で固められたはずの土がただ積み上げられただけかのように崩れ落ちた。

「そうか?二人ともまんまと騙されたし、結構やれていると思うけどね。」

ミューゼと会話を楽しんでいる時、先に驚きから目を覚ましたのはやっぱりリーダーだった。

「バカ、なにぼうっとしてる、撃て!」

驚いていた下っ端もすぐ反応し、魔導銃をミューゼに向けて発砲した、が、銃弾はミューゼの体に命中することなく、すべでミューゼから十センチぐらいのどころではじかれてしまった。

「魔導器取り上げたのになんで?」

「それは...」

千年前の先祖が体の中に入り込んでいるんだ、すこしぐらい古式発動法ができても不思議ではないだろう、けど。

「教える必要はないよ、夢魘回廊。」

ぱったん。

わたしの言葉と同時に人狩りの二人は崩れ落ち、地面に倒れ込んで眠りに落ちた。

「殺さないんですか?」

「生きてるほうが価値高いかもよ?さて、早くもミッション終わっちゃったけど、ネクロマンサーのところに行くか。」

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