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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 73 話 

 突然雰囲気が変わったユナを見てわたしは嫌な予感がした。

「でもなに?」

「前に聖霊殿に行くというのは噓でしたが、タイムリミットがあるのは噓ではないです、自分の体から離れてわたくしの精神力は瓶の中水のように減っていくばかりで回復しないのです、いろいろ工夫をして千年耐え抜いたけど、表立って活動してからは前と比べ物にならないほど消耗が激しかったので。」

「でもあの時は全然そんな素振りは...」

「あれはただのはったりですよ、あの時もしエレスさまが本気で抵抗してきたら、わたくしは間違いなく負けるのでしょう。」

 なぜだろう、前にユナが消えたと勘違いした時は今みたいに悲しい気持ちにならなかったのに、わたしってこんなにちょろいだっけ。

 いや、そりゃ地球にいた頃は浮ついた話一つもなかったから仕方がないけど、にしてもちょっと好意向けられただけ落ちるとかちょろいにもほどがあるでだろう。

「完全消滅までどれぐらいの時間が残っている?」

 心の中のなにかが溢れ出ないよう、わたしは口を開いた。

「ここ数日みたいに眠っていれば百年ぐらいは持つんでしょう。」

「百年なら...」

 まるで地獄の底に垂れた一筋の蜘蛛の糸のようにわたしはすぐ反応した。

「けど、わたくしはそこまで生き長らえるつもりはありません、せっかく好きな人が目の前にいるのに見てるだけなんてあり得ませんから、今回はミューゼの頼みで出てきましたが、今後もちょくちょく出てくるつもりですので、結果的2、3年持てば限界でしょう。」

「そんな、百年あれば解決方法が見つかるかもしれないじゃないか、そしてもっと長い時間を...」

「聖女さま!わたくしはもう千年待つ続けたのです、これ以上待たせるおつもりですか?」

「それは、でも...」

「これがわたくしの最後のわがままです、どうかお許しください。」

 目の前で頭を下げてきたユナを見てわたしは混乱した。

 初めて告白してくれたこの子を、わたしの心をかき乱してくれたこの子をこのまま見殺しにしていいのか?いやだ、けど、彼女のお願いを断って、閉じ込めて、来るかどうかもわからない救いの希望待たせ続けるべきなのか?

 わからない、わからない、わたしはどうすればいいんだ?

「ミューゼはどう思う、それでいいのか?」

 どうしようもなくなったわたしは逃げることを選んだ。

「安心してください、ミューゼなら昨夜納得してもらっています。」

「そっか、わかった、二人がそういうなら。」

「ありがとうございます。」

 二人が決めたならしょうがないと自分を納得させてすこし安堵した自分に嫌悪感をを覚えた。

 そんな卑怯で臆病な自分に好きって言ってくれたのに、わたしは...

 そんなわたしから漂う負のオーラを感じたのか、ユナは話しを逸らそうとしてくれた。

「さっきミューゼの頼みで出てきたと言いましたけど、なぜだと思いますか?」

 やさしい笑顔を浮かぶユナを見てわたしもすこし口角を無理やり上げた。

「なんで?」

「それはもちろん、ふ、エレスさまのスキンシップが激しすぎたからですよ。」

「え?」

 なんだか悲しい気持ちもちょっとぶっ飛んだぐらいユナの答えが意外すぎた。

 昨日のあれで?確かに近かったかもしれないけど、ユナとはもっとすごいことしてたし、それぐらい地球なら普通の女友達同士でもやりそうだけど。

「わたくしですこし感覚がおかしくなったかもしれませんが、この時代では性別関係なく、そのように肌の密着をしたりはしませんよ。」

「でもナディとかは普通にベタベタするし、ミューゼだって魔術の刻印の時触れてたよ、それにユナとの時だって彼女は見てたでしょう?」

「ナディアーナは野生児みたいなものです、刻印の時は刻印のためですし、昨日みたいにべったり肌が密着することもない、わたくしの時は確かに見ていたが、感覚がないので、他人事みたいまでには行かなくても実体験で感じれるものとはほど遠いです。」

「じゃ、もしかしてわたし嫌われちゃったのか?」

「いいえ、ご安心ください、嫌われたりはしません、恥ずかしがってますが、彼女も心の中ではスキンシップどんどんやってほしっ、先祖さま!なにを言っているんですか?!」

 え?どういうこと?また入れ替えた?

「ええと、スキンシップはしていいってことでいいのか?」

「そ、それは、わかりません!あっ、朝ごはん冷めてしまいますわ!」

 下手な話題逸らしをかましてミューゼは部屋から逃げて行った。

 ミューゼが逃げていったのを見てわたしはベッドに倒れ込んだ。

「どうしたもんかな~」

 わたしは両手を広げ、頭を空っぽにし、ただぼうっと天井を見つめた。

 今でもユナの命が一秒一秒削られているのに何しているんだという罪悪感を覚えつつもなにか行動を起こす気力がない。

「はあー。」

 ため息吐きながら体を横向きにすると、視界の端にミューゼがいることに気付いた。

 入口のところで顔だけ出してこっちを覗いているミューゼも気付かれているとわかったのか、すこし恥ずかしそうに部屋に一歩踏み入れた。

「あのう、お嬢さま、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ、ミューゼ、悪いけど、一旦一人にしてくれないか?すこし考え事したい。」

「それは...」

「安心して、ちょっと今後の計画を考えるだけだ、変な事は絶対しない、約束する。」

「そう、ですか、わかりました...あのう...」

 ミューゼは恥ずかしそうに下を向いたけど、またすぐに覚悟を決めたように顔を上げた。

「また昨日みたいに抱きしめてほしいです、待ってますから、絶対にきてください!」

 かなり勇気振り絞ったからか、結構大きい声で叫んだあと、ミューゼはまた逃げるよう走っていた。

「ふ、ふ、うははぁはっはっは、はあー、何してんだろう、わたし、人に心配させて、ほんっとうバッカじゃないの?」

 パっと両手で思いっきり自分の頬を叩き、カツを入れる。

「いたっ!」

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