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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 71 話 

 翌日

 臨時で作った部屋のベッドからわたしは目覚めた。

 作りが荒いベッドのせいで痛めた首腰を魔術で整い、わたしは大きく背伸びをした。

「うーぅん、ミューゼちゃん機嫌直してくれたのかな。」

 昨日、あのネクロマンサーが去ったあと、ミューゼはずっと自分を避けるようにしていた、話しかければはぐらかされるし、隣に座ればなにかと理由を付けて離れるしで、挙句の果ては体調が悪いと言って主である自分より先に寝てしまう。

「まあ、なるようになるか。」

 布団を蹴っ飛ばして、Tシャツ一枚とパンツ一丁で寝てたわたしはさっそく鏡の前に立った。

「ちょっと寒くなってきたな。」

 この世界、というかこの大陸は四季というものがありません、あるのは寒期と暖期と呼ばれる時期のみ、しかも寒暖があるとはいうものの、一部の地域以外は極端な気温はなく、せいぜい寒期は10℃、暖期は30℃ぐらいの気温で非常に居住に適した気温条件である。

 ちなみにこの時期実はまだ25℃ぐらいあるんだが、オンフィア人は地球人よりやや体温が高いため、この気温でも寒さをしまう。

 さっきまで暖かい布団の中にいたせいか、なおさら寒く感じるわたしはさっそく次元倉庫から適当に厚めの服を一着取り出し、ベッドに投げ捨てた。

「下着は...まあ、このままでいいか。」

 魔術のおかげでこの世界は生活の細かい点においてはかなり優しい世界となっている、特に女性に対しては殊更優しい。

 清潔魔術があるから、下着は頻繫に変えなくても匂ったりしないし、胸も身体強化魔術のおかげでがっしりワイヤーで維持しなくても形崩れしたりしない、加えて一部の人種はそもそも生理というものがないのだ。

 ちなみにオンフィア人も繫殖期という概念がなく、年中スタンバイしているため、その一部に入っている、つまり、今のわたしには生理などないのだ。

 そう考えながら、わたしはスピーディーにTシャツを脱ぎ、鏡に映るいつ見ても美しいと思ってしまう自分の体を鑑賞しながら、肌着にタートルネックのセーター、最後にはズボン履くと、鏡の中にすらっとした長身美人ができ上がった。

「さすが美人はどんな服着ても映えでいいな。」

 久しぶりのニューファッションにわたしはアクセサリーケースを取り出して、コーディネートに燃えた。

 ...

 ドッド。

「お嬢さま!起きてらっしゃいますか?!」

 思わず鏡の前でポージングにはまってしまったわたしをミューゼの声が呼び覚ました。

「はっ、起きてるよ!」

 脱いだ服とアクセサリーケースをしまってわたしはドアを解体した。

 ちなみになぜ「開けた」ではなく「解体した」かというと、それは臨時住居のドアはただのドアの形をした壁で、開けるという機能がついていないからである。

「あっ、お嬢さま、すでに着替えなさっていたんですね、準備が遅くなり大変申し訳ございません。」

 わたしの既に身たしなみ整っている姿を見て、ミューゼは頭を下げた。

「謝らなくていいよ、こんな荒野でまで深閨の令嬢を気取るつもりはないし、そもそもわたしはそういう御奉仕に頼り切るような人じゃないって分かっていたろう。」

「はい、もちろんそれは存じ上げております、しかしメイドとして、いいえ、奴隷として主人の優しさに甘え、己の立場をわきまえなくては奴隷失格でございます。」

 昨日の夜とは打って変わって、今日のミューゼはまっすぐにわたしの目を見つめてきた。

「いや、わたしは別に君を奴隷だなんて...」

「いいえ、お嬢さま、信賞必罰、ですわ、どうかこの愚かな奴隷に罰をお与えください。」

 そう言って彼女は床に跪き、そのまま腰を曲げ、四つん這いになった。

 あれ?

 この状況なんかどこかで...

 ミューゼの言葉と姿勢に強いデジャヴを覚えたわたしは思わず疑問を口にする。

「ミューゼ?」

「はい、ミューゼですよ。」

 なんか嬉しそうに答えるミューゼを見てわたしは確信した。

 こいつ...

「うそつけ!お前ユナだろう!」

 ツッコミと共にその突きあげた尻蹴りでも入れてやろうと思ったが、途中でそんなのこいつにとってご褒美やって思って上げた足をまた下げた。

「ええ~蹴ってくれないですか~?」

 その口調やっぱりじゃねえか!

「誰が蹴るか!さっさと起きろ!」

 まだ四つん這いで「罰」を待っているユナを置いてわたしは部屋の中に戻ってベッドに座った。

「こっちにこい!どういうことか説明してくれ!」

 わたしの言葉を聞いて、一体どういう頭の構造しているのか、ユナは立ち上がることなく、そのまま四つん這いで床を這入ってきた。

 その奇行に頭を抱える暇もなく、ユナは口を開いた。

「なにを説明するのでしょうか、わたくしはミューゼでユナではございませんよ。」

「そういうのいいから、まずはお前とミューゼの今の状況を説明してくれ。」

 ふざけているユナの言葉を聞いて、寝起きしたばかりにも関わらず、わたしどっと疲れを感じてしまった。

「お嬢さまぁ、大丈夫ですか?ミューゼちゃんのラブジュースを飲んで元気回復していきます?」

 ラブジュースってなんだよってつっこむ気力もなく、わたしはただ黙っていた。

「コホン、すみません、ついすこしばかりおふざけが過ぎました。」

 さすがのユナもこれ以上はまずいと悟ったか、姿勢を正して床に正座した。

「そうですね、わたくし、いいえ、わたくしたちの状態をというと...」

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