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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 68 話 

 二日後 マンティコア原素帯

 一日の旅を終え、わたしたちは一旦夜を備え、テントを張った。

 まあ、夜といってもこの原素の地の中じゃ、夜も昼も変わらなく青い光が輝いているけどね。

「ミューゼ、君顔色悪いよ、やっぱり夜の見張りは全部わたしに任せて、君はちゃんと寝たほうがいいよ。」

 原素帯に入って、原素の地の特殊性質上、警戒魔術の効果が薄く、原素障壁も維持し続けなければならないので夜の見張りが必須となっている。

 最初はわたしが全部やると提案したのだが、ミューゼはどうしても譲らず、最終的半分ずつ見張りを担当することになった。

「わたくしなら、大丈夫ですので...」

 明らかに目の焦点が合っていないにもかかわらず意地を張るミューゼ。

「なにを言っている!どう見てももう限界だろう!」

 警戒魔術みたいに寝ている間に魔術を維持するのに長時間の訓練が必要だ、わたしは当然そんな訓練したことはないので、わたしが寝ている間はミューゼが原素障壁の維持をしている、そして原素障壁の維持に必要な精神力も魔力も半端なく、たとえ熟練の猟師たちでも十人以上のチームを結成して順番に維持するようにしている。

 それを睡眠時間削って夜の半分の時間も維持し、さらに起きたらずっと移動して大丈夫なはずがない。

「仕事を主任せて、自分だけ寝るなんてメイド失格で...す。」

「バカが!君が見張りの途中で精神力切れて原素障壁破れて、自分もわたしも危険な目に合わせるほうがよっぽど失格だろうが、とにかく今夜これでも食べて寝なさい!」

 そう言ってわたしは自分が作ったハンバーガーのようなものを彼女の前に置いた。

「これは...お嬢さまが作ったのですか?」

「ええ、そうよ、まあ、パンに干し肉と適当に作ったソース挟んだだけだから文句いわないでね。」

 自分が言うのもなんだが、一人暮らししてたので料理スキルはある方だと思うからたぶんまずくない...はず。

「文句なんて、ありがたく味わわせていただきます。」

 食欲ですこし元気が出たのか、ミューゼは素早く食べ物を手に取ってかぶりついた。

「あーむ、うーん、うんうん、うっうぅ。」

 あんまりにも大きすぎる一口を口に入れ、当然のように詰まった。

「そんな急がなくても、ほら、水。」

 渡した水で飲み込んだあと、わたしからの忠告を無視して、ミューゼはおそろしいスピードでハンバーガーを平らげた。

「そんなにまずかった?」

「いいえ、すっごく美味しかったです!」

「そう?じゃもうテントに入って寝てて。」

 たぶん噓だろうけど、こんな時にわざわざ追求するほどわたしは狭量ではない。

「でも...それじゃお嬢さまが寝不足になってしまいます。」

「あのね、わたしは確かに偽物だけど、一応精神力と魔力の量だけは本物に負けない自信があります、一日と言わず、一か月二ヶ月寝なくてもなんともないよ、とにかくこれは命令だ、さっさと寝なさい!」

「うん、わかりました。」

 やっと大人しくテントに入るミューゼを見て、わたしは座って自分の分のハンバーガーを取り出した。

「あーむ、うーうぅ、ごっく、うーん、これは確かに微妙かも。」

 まずくはないが、うまくもない微妙な味をするハンバーガーを何とか食べきり、この世界の食材を使うの初めてだしと自分を慰めながら、本を取り出して開いた。

 本を読み進めて数時間。

 この場所はネットも繋がらないし、景色もずっと同じで、加えて下手に魔術も使えないから、本を読んで時間を潰すしかないが、さすがに現代地球の生活に慣れていた自分本一冊で何時間も過ごすのは過酷すぎた、特に王宮から持ち出した本だから、面白い小説ってわけでもなく、ただの魔術理論書となればなおさらだ。

「はあ、なんか原素生物とか襲ってこないかな~」

 本を閉じ、あんまりの退屈さでわたしは適当な愚痴を口にした。

 まあ、そうは言ったものの、原素生物が自ら襲ってくることは基本的にない、むしろ自分から対応する原素の濃度が高い場所を求める習性があるから、原素障壁に近づこうとしたりすらしない。

 もちろん中に縄張り意識を持つものもいるらしいが、少なくともここ数日には遭遇したことがないから、もっと中心部に行かないと会うことないだろう。

「まだ何日かかるんだろうね、半分ぐらいはいったのかな。」

 一応境界線を沿って歩いてきたから、道に迷うことはないけれど、環境が環境なだけに、どこまでついたのかを確認する手段もなく、ただ自分らが歩いてきた時間からおおよその場所を推測するしかない。

 今思えば本当に自分の計画がガバガバすぎて涙が出てきそうだ。

「あっ、計画と言えば...」

 ミューゼがついてきたことによって頓挫した欲望発散計画、今ならミューゼはたぶんぐっすりと寝ているし、今のうちに一期工程を済ましても...

「いやいやいや、さすがにこんな場所でやるのは...」

 誰もいないとは言え、一人の秘め事をこんな誰でも来れるよう場所で...やばい、逆に興奮する、どうしよう?

「待て、内なる俺よ、初めて青...なんたらをこんな場所を費やしていいのか?愛する人と楽しむために取っておくべきではないのか?」

 ふん、外なる俺よ、忘れたのか?あなたは前世で同じこと言って結局相手一人も見つからず三十路になってたことを。

「うぅ、貴様、その言葉、貴様自身にもダメージがいくのだぞ。」

 ふん、構うものか、欲望の解放のためなら、こんなダメージ甘んじて受けるわ。

「兄弟がそこまで言うのなら、俺も覚悟を決めるしかないな。」

 自分の中でくだらない茶番を演じたあと、わたしは立ち上がり、忍び足でテントに近づいた。

 こっそりテントの中を覗き、ミューゼがちゃんと眠りについていることを確認したあと、また音を立てないように戻り、周りの様子に気を配りながら自分の服に手をかけようとしたその時!

 ギャーーーー!

 無数の原素生物の叫び声が鳴り響くと同時に、周りの原素もうまるで沸騰したかのように原素障壁にぶつかり始めた。

 あんまりの突然の出来事でわたしはただひたすら障壁を維持することに集中することしかできず、気がづけば本来後ろにある原素の地の境界線が消え、自分らは唯一の道しるべを見失った。

「これは一体...」

 突然の状況に戸惑っている時、原素障壁に織り込んでいる自分精神力が別の強大な精神力の波動を感じ取った。

「え?今なんて?」

 ...

 翌日の昼過ぎ。

 あんまりの寝不足のせいで、十数時間の睡眠を経て、ミューゼはやっと眠りから覚め、テントから飛び出してきた。

「お、お嬢さま、申し訳ございません!」

 自分の失態に気づき、テントから飛び出した途端頭を下げるミューゼ。

「それだけ頑張ってくれた証だから、謝る必要はないよ。」

「しかし、うん?ここは一体?」

 まだ何かを言おうと頭を上げたミューゼはやっと自分の周りの環境に気付いた。

 自分らを守る原素障壁は消え、周りの景色も一面の青色ではなく、緑の溢れる森の中だった。

「お嬢さま、これは一体どういうこと何ですか?もしかしてわたくし三日ぐらい寝てました?」

「安心したまえ、一日も寝てなかったよ。」

「じゃ、どうして?」

 わたしの答えにミューゼはさらに困惑した。

「それはとある人の協力のおかげとしか、まあ、そんなことよりもう国境は目の前だ、早くいこうじゃないか。」

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