第 62 話
人気のない森の中、わたし地面に座り込んでいて、目の前には一人の少女が膝立ちをしている。
「そうですね...聖女さまがっ。」
「あっ、ごめん、その前にちょっといい?」
「うん?なんかまた殺る気が出てきましたわ」
やるってなにを?
「そのう、ごめん、なんか話長くなりそうだから、その前にズボン脱がしてもいいかな~って、血浸しになっているから気持ち悪くて。」
明らか不機嫌になっている「ミューゼ」の殺気に耐えながら、わたしは提案をした。
「ふーん。」
「ミューゼ」の目線がわたしの太ももへと移動した。
これは命賭けのテストだ、血浸しで気持ち悪いというのは噓ではない、けど魔術を使えば一瞬で何とかなるのでわざわざ脱ぐ必要はない。
それでも脱ぐことを提案したのはズバリ色仕掛けだ、「ミューゼ」はわたし、いや、聖女の体に興味がある、それは王宮の中の行動でも証明されたことだ、もしここでも提案を乗ってくれるのなら...
「いいでしょう、ちゃんと痕が残らないように治療出来ているのか確認しておきたいですし。」
よし、掛かった、しかも傷の確認まで言い出してくるとか、もはや釣り針が脳天ぶち抜いたぐらい引っかかってやがる。
「じゃぁ。」
わたしはゆっくりと立ち上がり、できるだけゆっくりとすこしずつ誘うようにズボンを脱いだ。
ズボンのしたの足は当然まるで怪我などなかったのよう完璧に治されていて、艶やかな白い肌と深紅な血が綺麗な曲線を描きながら交差し、自分でもなにか異様な気持ちを感じてしまう美しさだった。
脱いだズボンをそこら辺に投げ捨てると、いつの間にか「ミューゼ」は目の前に跪いて太ももを舐めるように観察していた。
「どれどれ、よく見えませんね~。」
近づきすぎたからだろう、ま、ちょ、こいつ太ももを鷲掴みしやがった、がっつきすぎだろう。
「ペロっ。」
わたしがまだ太ももホールディングされたことに驚いている時、彼女はわたしの想像の上をいった。
「今何をした?」
「な、なにもありませんよ、ちょっと汚れてて見えませんでしたから、きれいにしただけです、ペロっペロ。」
「ちょ、今また舐めた?!」
正直、なめられるのが嫌いなわけではない、そういうシチュエーション的にはむしろ大好物だが、この状況でされるとすこし恐怖を感じてしまう。
「ですからよく見えるようにしただけです、ペロっ。」
こいつ何としても辞める気はないようだ。
命握られている以上、わたしもこれ以上強く言えなく、とにかく大事なところだけを守って、あとは恐怖と興奮を入り混じったおかしな感情をひたすら耐え凌いだ。
幸い彼女も無理矢理押し倒そうなんて思ってないらしく、最終的には足だけ満足してくれた。
「もう十分きれいになっているでしょう?そろそろ話の続きを...」
「コホン、うーん、そうですね。」
まるでなにもなかったかのように彼女は立ち上がり、魔術で作った椅子に座った。
「では、ええと、聖女さまがなくなったあとですね。」
わたしの裸足をチラチラと見ながら、彼女は語り始めた。
「あの荊棘からも聞いていたはずですが、聖女さまがこの世から去ったあと、かつて彼女に従っていた者たちがバラバラになって、最終的まだ聖女さまの復活に勤しむものはわたくしともう一人のクズ男しか残らなかった。」
「ええ、確かその男と子をなし、今の聖棘に...」
「違う!その言葉二度と口にするな!あんなゴミクズの子供を産む?冗談じゃないわ、ああ、口にしただけでも汚らわしい!」
「じゃ、今の聖棘はどうやって...」
子供ではないなら、どうやってあれほど強力な誓約魔術を?
「作ったんですよ、あのクズと。」
「え?」
でもさっき違うって...
「勘違いしないでください、製造したという意味です、聖女さまが行かれたあと、わたくしとあいつは聖女さまの復活のために研究を重ねました、わたくしは精神、霊魂魔術の研究を、あいつは肉体、生物魔術の研究を、そういう役割分担で協力してたんです。」
「魔術で命を作ったんですか?!」
生命の創造、神代以来数多な魔術師が生涯をかけて研究し、それでも未だに成功していない課題を、まさか千年前ですでに?
「そんな大層なものではありません、わたくしたち自身を原型に肉体を作って、あとはそこら辺にある赤ん坊の魂を移し替えただけのものです。」
「そこら辺の赤ん坊?!」
おいおいおい、ヤバすぎない?
「ええ、知っていると思いますが、あの時は聖王国が崩壊し始めましていて、いろんなところで戦争勃発してましたから、実験材料には困らなかったんです。この紛い物の生命創造も正直ただの技術検証の一環でしたし、まさか、あんなところで役立つとは思いませんでしたけど。」
落ち着いて、エレス、落ち着いて、ここは異世界よ、千年前なんて魔術師にとって一般人はそこら辺の獣と変わらないわ。
「役に立つとは?」
「ふ、なぜわたくしは今こんな状況だと思います?」
わたしが答える時間も与えなく、彼女は続けた。
「あのクズ男のせいよ、あれはわたくしたちは復活の魔術を完成しかけた時です、あの男あろうことか聖女さまの体に術を仕込んで聖女さまを独り占めしようとしたのです。当然わたくしがそれを許すはずがなく、当たり前だけど、戦いになって、最終的になんとかやつをぶっ殺したけど、わたくしも瀕死状態、それでたまたまそこに居合わせた実験体を血誓魔術をかけ、自分の魂もその子の中に逃げ込みました。」
「奇跡魔術が霊魂魔術のおかげで巡りの吸引から逃げおおせたわけですか、でもなんでもっと早くこうやって誰か体を乗っ取らなかったの?そしたらもっとはやく復活の儀を完成させることができたんでしょう?」
「死闘を繰り広げたあと、巡りの引導を抵抗しながら血誓魔術を発動したわたくしにそんな力は残ってませんわ。それに力を取り戻したとしても一回こうやって外に出たらカウントダウンが始まるのです、わたくしがこの世にいられる時間の、ですからすこしでも聖女さまといられる時間を増やすために、復活のことはこの子たちに任せることにしたんです。」
なるほど、でもよく千年も待っていられるな。
「あのう、カウントダウンっていうのはいつまで?」
「ふ、なに?そこまで時間を稼ぐつもり?」
「いやいや、そんな...」
つもりはありまくりだけど。
「そうね、そろそろ時間ですし、あなたには先に逝ってもらいましょうか。」
そう言って彼女は椅子から立ち上がり、こっちに歩んできた。
「ま、待って、そ、そうだ、これ!」
慌てて次元倉庫をまさぐり、あるものを手に取って彼女の方へ伸ばした。
「ストッキング?」
そう、わたしが手にしたのはストッキングだ。
「え、ええ、これ履かしてくれない?」
そう言って、わたしは靴を脱ぎ、そのまま生足を彼女の目の前へと伸ばした。
「あなた、わたくしを何だと思っているんですか、こんなことでわたくしが釣れるとでも?!」
極めてまともなことを口にするミューゼだが、一方体は正直で、ストッキングはもうわたしの手から彼女の手に渡り、その指はすでにわたしの足指にかけている。
「まったくもう」と言いながらわたしの足、ふくらはぎ、太ももをまさぐる姿があんまりにもおかしすぎて、わたしは思わず口角を上げてしまった。
「笑ったな、こいつ!」
「わ、笑ってないよ。」
「もう!」
そう言って彼女はわたしの足をくすぐったり、握ったりとわたしと戯れ始めた。
「ふはははは、は、へ、はあー、もう、参りましたわ、殺すなんてもう言いません。」
そう言って彼女はわたしの前に正座し、わたしの足をの太ももに乗せた。
「ねえ、偽の聖女さま。」
「エレスです、エレスって呼んでください。」
「そう?わたくしはユナ、ユナ・アフィスティ。」
「あっ。」
聞いたことある名前だ、カルシアが医療隊にいたごろの後輩にそんな名前の人がいた気がする。
「知っているのですか?まあ、いいか、ねえ、エレス、教えて、聖女さまはやはりもうこの世界には戻りたくないんですか?わたくしたちにはもう会いたくないんですか?」
その悲しい表情をみて思わずそんなことないって口走ってしまいそうだがぐっと堪える。
そんな慰めをしても何の意味もないからだ。
「たぶんね、実はこの体に入る前に、たぶん聖女さまだと思う人にあったの、代わりに行ってほしいみたいなことを言われていて。」
「そう、ですか。」
「あのう、聖女さまはこっちに来たくないなら、聖霊殿に会いに行けばいいじゃん。」
「ふ、聖霊殿はそんな簡単に行けるような場所ではありませんよ、でもそうね、賭けてみるのもありかもしれません。」
そう言って彼女は手を座っているわたしのふくらはぎに回し、抱き寄せた。
「ありがとう、エレス、この二ヶ月悪くなかったわ、もう千年早くあなたと出会いたかった。」
その言葉とともに、彼女はそのまま前に倒れ込み、わたしの太ももで安らぎに眠った。