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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 5 話 

 夜、暗くなった空には無数の星々と赤、黄色の二輪の月が浮かび、王都カルサルもまたその星空と呼応するようにあかりを灯し始めた。

 付き人の二人を退室させ、寝室の窓の前に立って外を静かに眺望する。

 カルサルの一番高い山である聖王山の頂上に建てられた双蓮宮の窓は、王都カルサルの景色を一望できる最高の夜景スポットでもある。

 地球での街と違い、この世界の街は魔獣の侵入を防ぐために城壁が淘汰されていない。カルサルも然り、聖王山を中心に街が広がっていて、中心から最外部の城壁までは階段式の構造となっている。

 聖王山の頂上から中腹までを範囲とした王宮は最上部で、その下には貴族区、この二つの区域の灯りはさほど多くはないが、貴族区の下には平民区、いわゆる下町、そこには地球の都会を思い出させるぐらいの灯りが光の海となっている。

 リリアから聞いた話ではその平民区のさらに下にも街があるようだが、その街は棚田のような構造になっている上、三区と違い完全な地下街であるため、王宮からは俯瞰することができないとのことだ。

「今更だが、異世界に来たと実感するな。」

 空に浮かぶ二輪の月、調べによると大陸西の混沌の森に行けば三つ目の月が見えるらしい。

 月、町、空気、そしてこの体の中にある魔力どれもがここは地球じゃないと思い出させてくれている。

 窓から離れ、隣の魔導器を手にベッドへと潜り込む。

「しかし、異世界に来て寝落ちスマホできるとは思わんかったわ。」

 魔導器を起動させ、間もなくして目の前にパネルが浮かび上がってきた。

「こいつの原理めっちゃ気になるが、今はとりあえずこの体とこの世界の基本情報を仕入れとかないと、検索、カルシア、聖女っと。」

 検索ボタンを押した瞬間、おびただしい量の検索結果がずらーっと並び始めた。

 よく見るとゴシップから都市伝説までいろんなタイプの記事が勢揃いで、興味深いものもたくさんあるが、とりあえずウィキペディアのようなとこを選択してみる。

「カルシア・ナッソス、神息暦984年―1011年、命神聖女、奇跡魔術師、大戦略家、大軍事家」

 大、大ってやば過ぎねえ?記憶の中だと聖女以外の要素一ミリもないんだが。

「評価また名誉: 神息暦もっとも神域に近い奇跡魔術師、歴史に名を刻む女性ランキング一位、歴史でもっとも偉大な戦略家2位」

 マジかよ、すごく奇妙な感じだわ、この自分が評価されてるようなされてないような、こう、なんとも言えないむず痒い気持ちだ。

「生涯: 神息暦984年4月13日、当時ラフィラス公国の東部の町サザブ(現ラスタリア王国べモン)の農家に生まれ、十二歳までは極普通の農家の少女としての生活を送っていた。」

 おう、やっと記憶にあるものがあったぞ、確か十歳の時に命神教の神代遺跡に迷い込んでそっからは人生が狂った感じだったな。

「神息暦997年8月、サザブで発生した魔獣襲撃事件でカルシアが始めて治癒術者の力を披露したが、当時のサザブでは魔術師が存在しておらず、その治療術の知識の出所は不明である。現在主流の意見としては神息暦994年6月で発生した聖女の失踪事件がその後の聖女としての活躍と関係しているとのこと。」

 それであってるよ、ああ、なんか有名人の気持ちわかっちゃったわ、自分の一挙手一投足が分析され、晒されるってこんな感じなんだね。

「神息暦998年3月、旧バーサー王国(現アスタ都市同盟ラウベ近辺)にて大規模な法乱(ファゼウルス)現象が発生し、それによって大量の魔獣が生息地から離れ、各地で大規模な魔獣災害が発生した、その混乱の中で旧バーサー王国の国力が大きく削がれ、それを受けてラフィラス公国を含む周辺各国が不穏な動きを見せた。同年6月、魔獣の掃討に同行した旧バーサー王国の第二王子のヨーンが戦闘中に手足を欠損し、それを聞いたエルトール王国...」

 ながっ。

「どれどれ、婚約破棄、戦争、とにかくオンフィア内乱と呼ばれた戦争は起こって、カルシアも治癒術師として参戦してたと。」

 戦争の記憶は少々曖昧だけど、一応覚えてはいる、だけどカルシアがこの戦争で上級魔術師になったあとの記憶はなかった。

「神息暦1000年3月、カルシアは16にして上級魔術師へと進級、同年5月、サザブが襲撃を受け、カルシアの両親であるピエロン・ナッソスとアンリ・ルーティが死亡。同年6月、当時治癒師の隊長を務めていたカルシアが両親の死亡を聞き、初めてその高い戦闘能力を見せた、「銀白の鎧を纏い、戦場を駆け抜け敵を一掃した」と当時のラフィラス公国新聞で記載された、その戦闘時の姿が後ほどカルシアが白銀の騎士とも呼ばれた原因と思われる。」

 両親の死が途絶えた記憶と関係あるのか?

「戦場の功を称え、カルシアは聖女の称号を与えられ、命神教の教会を建てることを許された。その後も聖女としての務めに励みながらも自身の修行を怠らず、18の若さで奇跡級となった、当時の最年少奇跡魔術師の記録を大幅に更新し、そして、その記録は現在でもなお破られてはいない。」

 まじか、さすがにそこまで...いや、18歳まで生き延びられたら、可能性は十分あるのか?

「神息暦1002年、旧ラフィラス公国はカルシアの奇跡魔術師への昇級をきっかけに、隣国であるパパティナ公国に宣戦布告、この戦争を幕開けに、現在聖女戦争と呼ばれる大陸制覇戦争が始まった。」

 あ、この後戦争ばっかだな。どれどれ、グパ平原の戦い、ナルブ殲滅戦、精霊の森侵攻、ニマ族虐殺、混沌の森にまで追撃したのか?

「神息暦1010年、旧ラフィラス公国はレルフィオ大陸を統一し、そしてラフィラス聖王国と改名、大公サルゼウス・イーノーは聖王と名乗り、サルゼウス・ディ・イーノーと改名、聖女カルシアは国民による強い支持とその圧倒的な実力が故、大聖女と呼ばれ、聖王と並ぶ、ひいては聖王以上の影響力を持った。」

「神息暦1011年7月8日、ラフィラス聖王国王宮内で、大聖女カルシアの死亡が確認され、死因は不明、葬式は大々的に行われたが、王宮内での聖女の死亡に怒りを覚えた国民は大規模なデモ行動を行い、聖王国は混乱に陥った、それを機に各地に復国運動が蜂起し、一度大陸統一をも成し遂げた聖王国は流星の如く瞬く間に墜落した。」

 死因は不明、か、やっぱり聖女の試練が原因なのか?今はそれ装着してないから死んだあとに外されたのか?いや、ずっと肌身離さず付けていたものをわざわざ外して、しかも棺桶に入れてないとか、常識的にどうなのか?明日リリアあたりにこれを確認しないと、せめてあれの今の所在を知っておかなければならない。

 うーん、もしあの時光の中の声が聖女カルシアの声だとして、彼女はなぜ復活のチャンスをわたしにあげたんだろうか?

 今のわたしの記憶も彼女の意図したものなのか?

 謎だらけだ。

「あとは、今の戦争の話だっけ、ふーん、8月12日午前、カゼッタ連邦が同時にパライスタ共和国及びオークア王国へ宣戦布告、直後に両国辺境へ侵攻開始、同日夜20時パライスタ共和国都市ノケア陥落、夜21時オークア王国都市ヘロ陥落。」

 おいおい、陥落早すぎない?8月12日、今日って何日?8月28日か、今の状況というと…

「8日28日現在、パライスタ共和国の約半分の領土及びオークア王国の40%の領土がカゼッタ連邦占領下にある、両国とも同盟のハイラー共和国に支援請求をすると発言、それに対し、ハイラー共和国は軍事装備の支援を約束したものの、直接的軍事介入は検討中とのこと。」

 パライスタ共和国及びオークア王国ってどこだ?と思い検索にかけてみる。

「パライスタ共和国はともかくオークア王国って隣国じゃん、マジかよ、もう時間の猶予がほとんどないな。今のこの世界の戦争形態は詳しくないが、もし地球の現代戦争を基準に考えると両国全土占領まで少なくとも一か月以上は必要か、運よく長引けば年単位でもおかしくはないが…」

「全土占領して、また軍を整えて、この国に侵攻開始する時間的余裕を一か月半としよう、こちらが王宮を脱出して、この国から離れて安全な地域まで行く時間も考慮すると、できれば二か月以内に王都から出ないとまずいかも。」

 転生するんだったら、田舎まったりライフのほうがよかったな、せめて自由気ままな冒険譚にしてほしいわ、肩書も聖女とか騎士とか堅苦しいのじゃなくて森の魔女とかにしてくれないかな、三百年ぐらいスライム叩いても文句は言わないからさ。

 はあー、愚痴っても仕方がないか。

 幸いカルシアの記憶のおかげで逃げる事自体は難しくない、問題はそのあとだが、出発する前にいろいろ準備はしておこう。


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