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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 48 話 

「ロ、ローゼシアちゃん?」

「ほんっとう意味わからないですわ、なんでみんなこの女のことばっかりなの?」

 嫉妬か?こんな感情向けられるのはいつぶりだ?この世界、いや、この国では聖女とは神聖的な存在だから、敬いこそされるが、嫉妬なんてまずされない、地球にいたごろは金のことで嫉妬はされるかもしれないが、そういうやつは基本自分の部下など、立場的わたしの目の前にその感情をあらわにできない人ばっかりで、そう目の前に嫉妬してますってアピールされると逆に新鮮でおもしろく感じてしまう。

「兄さまたちも、貴族たちも、そこの筋肉女も、侍女たちさえも、ちょっと顔がよくて、魔術ができるぐらいでみんなちやほやして、ほんっとうなんなんですの?」

「ローゼ?!なにを...」

「筋肉..おん..な?」

 わたし自身はなんとも思わないどころか、ちょっとかわいいさえ思ってしまうような発言だが、ほかの人はそうおもわなかった。

 驚愕するリック王子、自分の手足を触りながらぶつぶつなにかを言うナディ、そして黙っているがなにかどす黒いオーラを発し始めるミューゼ。

「こんな、こんな。」

「そうだよね!」

 さすがにこれ以上言わせたらまずいと判断し、わたしは立ち上がり、彼女とナディたちの間に割り込んだ

「本当大したことないのに、みんなして持ち上げすぎだよね。」

「え?」

 まさか悪口言われた本人が同調してくるとは思わなかったのか、ローゼシアは驚いて絶句した。

「わたしたちの姫さまはこんなにもかわいくて、愛おしいのに、ほんとう、みんな節穴だよね。」

 そう言いながら、わたしは彼女に近づき、両手でそのぷにっとした頬を軽く優しく触れ、さらに姿勢を低くし、自分の顔を彼女の顔の至近距離まで近づけた。

 そうやってしばらく凝視すると、その蒼緑の瞳は泳ぎ始めた。

「もう、離れでください!!」

 わたしがニマニマしながらその泳ぐ瞳を鑑賞してると、突然目の前から消え、その代わりに淡い金色髪の毛が目の前に現れた。

 振り払われた。

「もう、なんなんですの?」

 自分がからかわれ、馬鹿にされたと感じたのか、後ろからみた彼女の両手は握りしめ小さな拳になった。

「もう、みんな、バカぁぁぁ!」

 怒り爆発して、大暴れするんじゃないかと心配するところ、彼女はただくやしさを込めた声でバカと一言を言い残して部屋から逃げ出しただけだった。

「ローゼ?!そのう、聖女さま、申し訳ございません。」

 気まずくて言ってもたってもいられないリック王子を見て、わたしはただうなずく。

「はやく行ってあげな、兄としてちゃんとかまってあげないとダメだよ。」

「はい、ありがとうございます!」

 妹を追いかけていくリックを見送り、ふたたび席に着く。

「ルカス隊長、なんか変なことに巻き込んでしまってごめんね。」

「いえいえ、むしろいいもの見させてもらいました。」

「いいもの?修羅場をいいものってルカス隊長ってもしかしてかなりの悪趣味?」

「違います!勘弁して下さい、聖女さま、噂にでもなったら大変なことになりますよ。」

 言葉でははビビリ散らかしているように聞こえるが、ルカスの顔には焦る表情一つ見せていない、最近ナディの訓練で交流の機会も増えたからわたしからのからかいへの耐性もあがったんだろう。

「わたしが勘弁するも何も、自分の口から出た言葉だよ。」

「そういう意味ではございません、いいものというのはあの争いを鎮める聖女さまの寛大なこころです。」

「そういうお世辞はいいよ、姫は怒って逃げたし、鎮めたとは言えない。」

 それに寛大というわけでもない、単純にわたし自分が変わり者で、姫もかわいかっただけ。

「姫様のあれはお怒りになったわけではありません、少なくとも聖女さまへの怒りではないとわたくしは思います。」

「それはどうかな、どころで、今日の訓練はどうだった?」

「いつも通りかなり良かったです、いままで教えてきた人のなかでもナディアーナさまより飲み込みの早い方はいません。」

「そうか。」

 ナディのほうを見ると、ヘラヘラとわらってやがる。

「ナディ、褒められてうれしいんかい?」

「うれしいです!師匠!」

「そっか、そっか、ならちょうどいい、今日残りの時間は座学にしよう。」

「ええ~、なんで~。」

「そりゃうれしいことあったら、いやなことをしてバランスを取らないと、ねぇ。」

「そんなバランス要らないですぅ!ミュー姉もリリ姉もなんか言ってください。」

 リリアとミューゼを味方をつけて戦おうとするナディだが、明らかつける味方を間違っていた。

「ふ、たしかにバランスは大事ですね。」

「そう、そう、うふふ。」

「そんな~」

 ナディはふたりに裏切られてわざとらしくぐったりする。

「さあ、潔くそこに座りなさい。」

「えー、ほんとうに座学するんですか?師匠。」

 座って早々いやな顔をするナディ。

「もちろん本当よ。」

「でも今日は実戦訓練の日じゃん、久しぶりに師匠と実戦訓練とかしたいなー。チラっ。」

 こいつなんでこんなに座学嫌いなんだろうか、わたしだったら断然実戦のほうがいやだけどな。これが陰のものと陽のものの差なのか。

「そんなことやっても大した勉強にならないよ、今の君に一番足りないのは魔術の基礎知識だから。いいか?基礎を補わずに実戦だけを積んでも君は小技いっぱい持ってる中位魔術師しかなれない、超位はおろか、上位にすらなれはしない。君はそれでいいのか?」

「それは嫌ですけど。」

「上位や超位になると、術式の複雑度があがり、状況に合わせた術式構築が中位以前より求められる。術式に対して深い理解がないと精神力や魔力があっても戦闘に使うのは困難だ。まあ、君が戦闘に使うつもりはないなら話は別だが。」

「使います、使います。戦闘以外なにに使うんですか?」

 この子ほんとうに戦闘狂だな。まあ、そのほうが戦争で生き残りやすいからいいけど。

「研究者とか、君には無理か。それはともかく、現代魔導石の発明によって、プラグイン式での構築を使っている魔術師が主流だそうですが、君には古式を学んでほしい。」

「古式ですか?」

「ああ、もちろんいやなら別に普通のを学んでもいい、ただそれだとわたしが教えられることはあんまりないから、先生を別に手配することになる。」

 ほんとうは自分が古式できるから、無駄に時間を使ってプラグイン式の勉強したくないというのが原因なんだけどね。

「古式がいいです、師匠に教えてもらいたいです。どころで師匠、もしかして今日から実戦訓練はもうなしですか?」

 ちょっと小動物みたいな目で見上げてくるナディを見て思わず笑ってしまう。

「安心しなさい、実戦訓練はする、学んだ知識を使いこなすためにな。」

「ありがとうございます!」

 まあ、その理由もあるけど、実際は自分の勉強の時間の確保のためでもある。

 そもそも今わたしがナディに教えている知識は元々把握しているものではなく、毎日自分が前日で勉強しておいた知識なんだ。

 夜にこっそり勉強しては翌日で教えるの繰り返しで大変だったけど、そのおかげで復習にもなってwin-winだ。

「さあ、前置きはここまで、今日の講義を始めよう。」

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