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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 33 話 

「ほう~」

 またなにか言いたげなリリアを制止し、ナディのとなりに座り直した。

「なぜわたしの弟子になろうと思ったの?」

「聖女さまは強いからっす、強い人の弟子になりたいのは当たり前と思うっす。」

「そうね、ただ昨日自分のことを殺しかけた人の弟子になるのはまた別だと思うが。」

 圧かけていると思われたのか、ナディは明らかに焦りだした。

「そ、それはあたいが悪いというか、あっ、チャンスを狙って復讐するとかまったく思ってない、ませんから。」

「なるほど、そういう狙いがあったのか。」

「ない、ないっす、本当にないっす。」

 ナディはさらに慌てて震えた。

「ふ、冗談だよ。たとえ本当にそれが狙いだったとしても、わたしは別に構いはしない。」

 昔の癖で思わず足を組み、片手をテーブルの上に置き、指の腹でテーブルをトコトコとたたきながら考え込む。

 正直なところ弟子入りは計画的悪い話ではない。

 教育に時間を割けないといけないが、その分欲しかった戦闘経験を積むチャンスが得られる。それにある程度信頼関係を築ければ最終的に計画の成功率にもつながるし、問題は自分も情が移っちゃわないか心配だが...まあ、移ったら移ったって何とかなるでしょ。

「いいだろう。」

「本当?やった!」「聖女さま?!」

 喜ぶナディと対照にリリアたちは驚いた。

「聖女さま!そんな簡単に...」

「待て、喜ぶのはまだ早い、まだ弟子にするとは言っていない。」

「え~そんな~!」

「そんなもこんなもない、そんな簡単にこのわたしの弟子になれたら面白くないだろう」

「面白くなくだって...あぅ。」

 調子に乗るナディの額にデコピンを一発喰らわした。

「とにかく、テストを出すからそれをクリアしてもらう。まあ、安心しろ、そんな複雑なものでもない、王宮内でやれることも限れらているしな。」

「はぃ~。」

「よし、じゃ、あとで訓練場に来るといい、リリア、ついててあげなさい。」

「かしこまりました。」

 リリアの返事を聞いたあと、わたしはミューゼと食事室を出た。

 ...

 ナディの食事もハウスメイドたちも片付けが済み、リリアとナディが二人っきりになった食事室。

「ナディアーナさん、いえ、ナディアーナさまと言ったほうがよろしいかしら?」

 背中から聞こえるリリアの問いにナディはぴくっとなった。

「ナ、ナディアーナでいいで、です。」

「そうですか?じゃ、ナディアーナ?ここにくる前にわたくしはなんて言いましたか覚えてらっしゃいますか?」

 ナディは気まずそうにほっぺたを掻いた。

「礼儀作法とかは気にしなくていいとか?」

 そう言葉を口に出したあと、彼女はすかさず両手で頭を守りながらテーブルに突っ伏した、そして次の瞬間。

「まだありますよね!口に出す言葉は気を付けなさいって言いましたよね!」

 防御態勢に入っているナディを見てリリアは深呼吸して自分を落ち着かせた。

「なにをしているんですか?殴ったりはしませんよ。」

 恐る恐る手をどかし、テーブルに突っ伏したまま振り返って乾いた笑いをするナディを見てリリアは深くため息をつく。

「はあ、なに笑ってるんだが、聖女さまも聖女さまでなんでそこで乗るんですか、あー、大変なことになりますよ。」

「何が?」

「何が?正気?全部がですよ、とにかく急いで準備しますよ、早く。」

 そう言って、リリアはまだ状況が呑み込めてないナディを椅子から無理やり立たせ、そのまま彼女を引っ張って部屋から出た。


 ラスタリア王国、王宮訓練場、休憩室。

「とりあえずナディちゃんの現状を知りたいので、何個か質問するね。」

「はい、師匠。」

「まだ師匠じゃないから、ナディちゃんで今何歳?戦闘スタイルや得意な魔術は?」

「16歳です。戦闘スタイルはええと、近接格闘かな。」

 確かにあの時も遠距離攻撃してこなかったよね、うん?

「格闘ってつまり武器はグローブとかかな?いまはどんなの使ってる?」

「武器?素手です、魔導器は普通の市販のものを使ってます。」

「素、手?」

「うん、グローブ型の魔導器は特注しないといけないのでそんな余裕はない、です。」

「そっか、リリア、ここにグローブ型の魔導器ある?彼女のサイズに合いそうなやつ見繕ってやってくれ。」

「はい。」

「とりあえず戦闘スタイルはわかった、得意な魔法は?」

「身体強化、蛮獣の力と魔力障壁です。」

「以上?」

「はい。」

「うーん、他によく使ってる魔法はないのか?」

「水と火生成とか?」

 生活魔法かよ、噓だろ、普通どんだけ近接に特化しても、遠距離攻撃手段の一つや二つは習得する、それに、近接と言っても近距離やゼロ距離でより小さい消費でより大きな効果をもたらせる魔法を使って戦うというだけで、本当に力だけゴリ押しする人はほとんどいません。

 そんな絶滅危惧種が今目の前に現れた。

「あのう、一応聞くが、買った刻印石をそのまま使ってるレベルでいい、近距離で使う熱とか電気とか腐蝕とか、そういった魔法は一切使ってこなかった感じで合ってる?」

「え?なにそれ、面白そう、師匠はできるんですか、教えてください。」

 ああ、これはダメだ、いや、待てよ、逆に都合がいいのでは?教えるものに困らなくなるぞ。

「だからまだ師匠じゃないって。」

「ふっ、ふふ。」

 なにわろてんねん、ミューゼ。

「ミューゼ、君は今何歳だ?」

「十八です。」

「で君は何歳で下級魔術師になったんだ?」

「十五です。」

「ほう、すごいじゃん、でなんで十八になってもまだ下級なんだ?」

「でも下級から中級になるって普通は十...」

 気づいたか、目の前にいる人が十六歳で上級魔術師になっていたことを。まあ、この体の元の持ち主の話だけどね。

「申し訳ございません、聖女さまの輝きと比べたらわたくしのことなど取るに足りません。ナディアーナさまも申し訳ございませんでした。」

「え?え?どういうこと?なんで謝るの?」

「ナディちゃんは気にしなくいい、さあ、グローブを装備して訓練場に出よう、君の実力をちゃんと見図りたい。」

 リリアが持ってきた魔導器を渡す。

「はい、頑張ります。」

「うん、リリア、互角に戦えそうな相手見繕うよう近衛隊長に言っといてくれ。」

「はい、でも聖女さまも訓練場に出るんですか?でしたら人払いをさせたほうが...」

「そこは安心してくれ、これを使う。」

 魔道具から真っ黒なお面を取り出し、顔を覆った。

 ミューゼからもらったある程度探査魔法を弾ける優れものだ、さすが密偵というべきか。

「顔さえ見られなければいいだろう。」

 すこし不審者に見えなくもないが、体のほうもぷかぷかのロープで包み隠し、グローブを装着したナディを引っ張って率先して休憩室を出た。

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