第 32 話
双蓮宮。
「リリア、今日は君に服を選んでもらおうか。」
「はい、かしこまりました。」
さすがに慣れてきたか、数日前までは恐縮ですとか言ってたのにね、大人になっちゃっておばあちゃん寂しいよ。
「あ、ついでにナディちゃんにも何着か選んであげて、わたしと身長あんまり変わらないし、着れると思う。」
「聖女さまの服をですか?」
「ええ、そうよ、庭で着てるような服を着て王宮で歩いてたらなんか後ろ指さされちゃいそうじゃない?新しいのを用意するのもいいけど、時間かかるでしょう?それまでの凌ぎってことで。」
「メイド服ならすぐに用意できます!」
メイド服?ダメダメ、計画の大事なコマだよ、大切に扱わなきゃ。
「ダメダメ、メイド服着て勘違いされて仕事に呼ばれたらどうするの?とにかく、わたしの服をもって行ってあげて、どうせありすぎて全部着れないし、ついでにナディの朝食用意させといて、一緒に食べるわ。」
「「ええええええ?!」」
今度はリリアだけでなく、髪のセットをしているミューゼまで大声出しちゃった、ちょっとうるさい。
「しょ、食事を共にするんですか?」
「なにを驚いている?昨日は君たちとも一緒に食べたじゃないか?」
「全然違います!昨日はお忍びですし、下町のレストランですし、それが王宮で、しかも朝食なんて。」
「うん?朝食で何か問題でも?」
「平民ならまだしも、貴族が他人を朝食に誘うなんてほとんどありません。基本家族やこ、こい、親密関係のある人としか朝食をともにすることはありません。」
今恋人を言うの恥ずかしがってた?初々しいね。
「なるほど、世もめんどくさくなってきたな~、でも別にいいんじゃない?わたしは貴族じゃないし、そういうの気にしないよ。」
「そんな...」
「というわけで、はやく行って。」
「はぃ。」
...
リリアがナディアーナを呼びに行っている間に、わたしはミューゼと先に食事室に到着した。
「待て、料理はナディアーナが来てから出してくれたまえ、先にフィンドーレを一杯だけお願いね。」
着席した途端、料理を運ぼうとするメイドたちを制止し、飲み物だけ頼んだ。
「お言葉ですが、聖女さまがあんなしつけのなっていない子供のために待つ必要はないと思います。」
この子もしかしてわたしが不意打ちされたこと根に持っている感じ?
「まあ、しつけがなっていないのはその通りだが、食事に誘っておいて先に食べちゃったら、わたしまで失礼なやつになってしまうよ。」
「それは...申し訳ございません。」
「怒ってくれただけでしょう、謝る必要はないよ、むしろその忠誠心を褒めたい。」
「褒めてくださるんですか?!」
わたしの言葉を聞いた途端、ミューゼは目を輝かせた。
「いや...」
そんな目で見つめるなよ、欲望剝き出しすぎだろう、こいつ。
「はあ、わかったよ。」
身から出た錆なので仕方がないと、彼女に向かって手招きをした。
そしたら彼女はすごい笑顔でとなりまで来てちょうど手の置きやすいところに頭がくるようにしゃがんでたので、そのまま彼女の頭に手を置き、なでなでしはじめた。
正直美少女が自分のなでなでを気持ちよさそうに堪能しながら頭をこすってくるのはかなり気分が良かった、その美少女がヤンデレ気味で重い女であるというホラー要素を除いたらね。
そんなくだらないことを考えながらしばらくぼうっとしてたらいつの間にか自分の手が勝手にミューゼの頭から離れ、彼女の頬と顎を包むように撫でていた。
彼女の頬はなぜかひんやりしていて、親指がそのすべすべの肌をさするたびにへこんではぷにっと跳ね返り、その素晴らしい手触りに引き込まれ撫で続けていると彼女は徐々にうっとりした顔になっていて、そのわずか開けられた口からすこしばかり顔を見せるピンク色のベロを見て、その吹き出される湿気を帯びた熱い吐息を感じて、なんだか内心の欲望という名の悪魔が目覚めてしまいそうになる。
このまま顎くいして、その桜色の唇を封じ込み、恣意に彼女の体内に侵入してそのよだれで潤った柔軟を貪ればどれだけ...と、その悪魔の囁きに誘われるように、親指の位置も少しずつズレ、ついにその魅惑な唇に触れ、欲望の悪魔に支配されかけたその時に。
トン、トン
「聖女さま、ナディアーナさまのご到着です!」
ドアの外から響くリリアの声のおかげでわたしはすんでのところで理性を保つことに成功した。
ダメだ、最近ずっと仕事モードで根詰めすぎちゃったのかな、あ、オンフィア人は繁殖能力の高さでそっち欲望も強いと聞いたことあるが、そのせいなのか、うん、絶対そう、決してわたしがエロゲ脳だからではない、うん。
こころの中で自分に言い訳をしながらミューゼの頬を「パッパ」と軽くに二回叩いて目覚めさせたあと、隣で待機しているメイドにドアを開けるように命令した。
「ちっ。」
うっとり状態から起されたミューゼは舌打ちをしながらも立ち上がり、二歩下がって真面目顔に戻った。
「コホン、来たか、こっちに座って。」
緊張しすぎてるのか、ナディアーナは同じ側の手足出してがちがちのロボットのような歩き方をしてた。
「お、おはようご、ございます!」
言い付けられた通り、ナディアーナが着席したら、メイドたちは続々と料理を運んできた。
「好きなものたべて、そういえば昨日はよく眠れた?」
黙ってもくもくと食べるのもちょっとあれなので、適当な世間話をする。
「全然眠れなかったんっす、ベッドとかふわふわすぎて全然落ち着かなくて、夜中起きてスクワット、腕立てふせ、腹筋それぞれ百回やってやっと練れたんっす。」
「ちょっ。」
「やっぱ君面白いね。」
リリアの叱りを遮るように彼女をほめる。
「ナディアーナ、ナディちゃんって呼んでいいかい?」
「あっ、はい、どうぞ。」
いま彼女のこの縮こまった態度を見て誰も機能の暴れっぶりを想像できないでしょう。
「ふーん、そういえばナディちゃん、昨日はなぜいきなり襲ってきたのかね。」
「それは、ええと、敵が来たってき、聞いたからっす。」
「そう?でも今後は気を付けたほうがいいと思うよ、あんなふうに相手の力量も測らずに突っ込んでたら命いくつあっても足らないよ。」
ナディの額の汗はまるで滝のように流れ、それを袖で拭こうとしたとき、わたしはその腕を掴んだ。
「服がしわしわになっちゃうよ、リリア、拭いてあげて。」
「はい。」
リリアがハンカチで丁寧に汗拭きをしてるうちに、わたしは話を続けた。
「そんなに緊張しなくていいから、昨日のことを追及するつもりはない、言ったでしょう、君の安全も生活も保障するって。あと今みたいにビビり散らかすより最初の生意気な態度のほうがわたしは好きかな。」
メスガキは暴力じゃなくて快楽でわからす主義でね。
「い、いえ、聖女さまに生意気なんて。」
「それは残念だ。」
この世からメスガキを一人消してしまったことが。
「さて、今日はこれぐらいにしましょうか、リリア、今日はナディちゃんについてあげて、王宮でも案内してあげなさい。」
清潔魔術で口をキレイにし、わたしはそう言いながら席を立った。
「かしこま...」
「待ってください!」
ナディの突然の大声でこの場にいった全員の視線が彼女に集まった。、
「まだなにか?」
「で、弟子にしてください!」




