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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 19 話 

「この誇り高きジンオンフィアが灰蜥蜴どものケツをなめろってのか!この玉無しが!」

「この筋肉頭が!死にたければ勝手戦争要塞にでも突っ込んで死んでろ、国民たちを巻き込むな!」

「やんのか?!この野郎!ああ!」

「上等だ、やってやろうじゃねえか!」

 ..........

「国の重役というより町のチンピラね。」

 映像の中で国の重役の口から出てるとは思えない言葉で罵り合う二人を見て思わず嘆いてしまう。

「お恥ずかしい限りです、聖女さま。」

 今でも殴りかかりそうな二人を眺めてると、突然二人の同行者と思われる男の一人が一瞬こっちを睨んできた、もちろん人だかりがあるので、本当にこちらの位置を見てるわけではない、どちらかというと魔術の痕跡、例えるなら監視カメラを見つけた時の感じだった。

 本当に見つかったのかはわからないが、一応国の重役だ、腕利き護衛がついてもおかしくはない。

 これ以上長居はしない方がいいか。

「まあ、別に珍しいことでもないし、興味もない、迂回しなさい。」

 実際地球でもよくあることだ、議会で議員が罵りあったり、なんなら殴り合ったりとかもざらにある、一種の娯楽としてしばらくここで見てるというのもありだが、見つかった以上、リスクを冒してやることでもない、戦争というダモクレスの剣が頭上にぶり下げられているしな。

「はい。」

 車がUターンすると共に、車内で浮かぶ映像が消え、わたしもゆっくり街並みを観察する時間ができた。

 今のこの世界の建築、特に民家は主に魔術で作られたものらしい。塑形と変質魔術で地面の土や石を変形、硬化させるのが主な手段で、そうやって作られた建築は地面と一体化されているため、かなり頑丈であるんだが、一つ欠点がある、それは非常に質素であることだ。

 なぜなら、魔術師常に更なる高みを目指すものだからだ、レベルの高い魔術師は建築な仕事など受けたりする時間などなく、建築の仕事をしているのは強くても下級、しかも一生中級に上がる可能性がないような人たちだ、当然そんな人達は魔術で細かい作業を行うのに必要精神力強度がないので、作られた建築は当たり前のように花がない。

 それが原因で、この世界では魔術で一気にではなく、昔ながらの人の手によって少しずつ作り上げる建築を身分の象徴としていたりする、今走っているこの貴族街の風景はもろにその考えの現れである。

 道両側の建築はこれでもかというぐらいに外部装飾にこだわっていて、しかも大きな屋敷であればあるほど複雑で、外壁一面が浮き彫りの彫刻画に埋め尽された屋敷さえある。

 そのおかげで、窓の外の建築を鑑賞しながらのドライブも案外退屈しない、だが、陰キャの性分か、沈黙の時間が辛く感じてしまい、適当に話題をかました。

「さっきの茶番はともかくとして、君らはどう思う?戦争派と降参派。」

「わたくしが決められることではありませんが、戦いたいと思います。」

 当たり前のように、リリアは徹底抗戦を選ぶ。

「ほう、ミューゼは?」

「え、わたくしですか?わたくしは降参しても別にいいかな。」

「なにを言って...」

 ミューゼの降参派発言に黙っていられるはずもなく、リリアはすぐ声を荒げる。

「リリア、さっきのチンピラ喧嘩をここで再現するつもりか?」

 やばそうな雰囲気になりそうなので、慌ててリリアの言葉を遮り、言い争いの種を踏みつぶす。

「いいえ、申し訳ございません。」

「うん、よろしい。」

 はあ、やっぱり無理して話題探すんじゃなかったわ。

 と反省しながら、わたしは無言で窓の外の街並みを眺めることに集中した。

「あのう、聖女さまはどっち派ですか、やっぱり戦うですよね。」

 だが、話題振っておいて自分は何も喋らないのを許せるリリアではなかった。

「君はわたしが千年前にやってたことを忘れてたのか?」

 本当になんてこんな話題振ってしまったのか、心の中で後悔しながら聞き返す。

「え?」

「戦争だよ、はっきり言うと、千年前のラフィラス聖王国と今の連邦、やってること自体は大して変わらん。そんなことやってのけたわたしが降参派を否定すると思う?いや、大歓迎だよ、降参してくれればこっちの損害も減るし、町も人口もその上に築き上げた富も欠けることなく手に入れられるし、これ以上ありがたい話はない。」

「でも、それは...」

 聞かれた以上は喋らないといけないが、こんな話題広げられても困るので、とりあえず相手を喋らせずに一方的に喋ってこの話を終わらしたい。

「ああ、やる側の話だ、わたしはもともとそっち側だからね。けど、やられる側にとっても、降参したいってのは別に理解に苦しむ話ではない。」

「それはどういう...」

「リリア、君はたぶんかなりいい家の生まれだろう、もちろんわたしはそれをどうこう言うつもりはないし、深掘りするつもりもない、この場限りの話だと思ってくれ。」

 くるリリアの言い訳話を先に潰し、わたしは話を続けた。

「だけどね、既得権益者と違って社会のどん底にいる人ってのは正直上に立つ人がどこのどいつなのか、正直興味ないんだよ。新しい統治者がとち狂って虐殺とかさえしなければ彼らの生活がこれ以上悪化することはほぼないからだ。いや、新しい統治者によって既存の既得権益者が倒されたことで彼らの階級が上にのぼる可能性さえあるから、むしろやられることを望んでさえいる。」

 いつの間にか、リリアは車を道の端に止めて考え込んでる。

「もちろん、さっきのあの何だっけ?ディアス?が本当に国民のことを考えて降参を言い出したとは限らない、わたしが言いたいのは戦争も降参もその人が自分の立場と利益に基づいて出した結論だ、それが最終的国や民にとって最善だったのかはその時にきてみなければわからない。リリア、君がどんな身分でどういう立場なのか、わたしにはわからないし、興味もないが、ここで君に一つだけ忠告をあげる、人の上に立つには自分の立場や利益ばかりを見て行動してはいけない、他人の立場や利益も見て行動しなければ君のもとに人は集まらない。」

 あ、やべ、喋りすぎた、ああ、わたしのばかうんちが。

「はい、お言葉ありがとうございます。決して忘れないよう心に銘じます。」

「ふー、真面目話で疲れたわ、早く下町に行ってメシにでもしよう。」

「はい、聖女さま。」

 ああ、ほんっとうどうしちゃったんだろう、わたし、やっぱストレス溜まりすぎちゃったのかな。

 はあ、早く脱出しないとストレスと自己嫌悪で死んちゃうよ~。

 と嘆いてたら、なんか視線を感じた、そして目をあけたら、うわって声出しそうになった。

 なんだ、今の、うわ、ミューゼがめっちゃこっち見てる、こわっ。

 なんで荊棘がこんなやつに任務を任せたんだよ、チェンジだ、チェンジ。

 ゆっくりとミューゼの真後ろに移動して彼女の視線を避けようとしたら、彼女は体ごと回転し、椅子の背もたれに頭を乗せてまでこっちを見続けてこようとしやがった。

 こいつ、あからさますぎだろう。

 自分とミューゼ両方への怒りをこめて思いっきり助手席の椅子蹴りをいれ、その衝撃で跳ね上がった背もたれがそのまま彼女の顎に直撃した。

 その強力なアッパーによってミューゼがダウン。

「え、ミューゼどうしたんですか?」

「な、何でもないです、リリアさん。ちょっと急に牙が痛くなっただけです。」

「え、大丈夫ですか?」

「大丈夫です、あとで治療術師に見てもらいますから、運転に集中してください。」

「そう、それならいいですが。」



DLC爆速でクリアしました!

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