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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 139 話

 ナディアーナたちが命の危機から脱して喜んでいる時、彼女の師匠はコルカー村でのんびり研究をしていた。

「ナディアーナさまは大丈夫なんでしょうか?」

 ナディからのメッセージを返事したあと、そばに仕えているミューゼがそう聞いてきた。

「うん?まあ、大丈夫だろう、そう言えばミューゼって確かナディと交流なかったよね?」

「はい、そうですね、ユナさんと話しているとことを見てはいましたが。」

 今思えばあの時のミューゼって一体どんな気持ちで自分の体が他人と話してるところを見ているんだろうね、解離性障害というか多重人格の人とかもそんな感じなんだろうか?

「それいえば、二人がっ」

 トットット。

 ミューゼちゃんにいろいろ聞いてみようと思った時、ドアがノックされた。

「誰?」

 今自分らがいるこの部屋は旅館の部屋ではなく、テラーが軍営の指揮官に無理やり開けさせた臨時の研究用部屋なので、正直誰にノックされてもおかしくない。

「わたくしです、マティアスです。」

「マティアスか、入っていいよ。」

「ありがとうございます。」

 そういった後にガチャと部屋に入るマティアス。

「こんな時何の用だ?引っ越しのことで忙しいだろう?」

「さすが聖女さま、まさにその引っ越し作業が完了しましたと報告に参りました。」

 いや、別に予想したわけではないしさすがも何もないだろう。

「そういうのは別にわたしに報告しなくてもいいんだが。」

「いいえ、そういうわけには参りません、聖女さまのおかげでわたくしたちが生き延びることができたわけですから、それに例の装置のこともありますし。」

 いろいろあったので例の装置のことはまだちゃんと研究できていないが、かなりすごい装置であることは間違いないので、正直運び出したいけれど、封印の術式の存在でそれも叶えそうにない。

 だからしばらくは神拓界の空間自体を限界まで縮小させて、とにかく外層封印が解除されたことによって不安定になった空間を安定させる方向にしようと考えている。

「なるほど、そのことならこっちでなんとかするので、君が気にする必要はないよ。」

「そうですか、大変申し訳ございませんでした。」

 こいつもその装置のことなにか思うところはあるんだろう、元々はこいつらのものだし、正直不満があっておかしくはない。

「わたしもずっとここにいるわけではない、そしてここを離れる時装置ごと持っていくつもりはない。」

「ありがとうございます!」

「ふ、そんなことより、じいさんのことはどんな感じ、例の大司教とは知り合いだったらしいが...」

 正直恨まれる筋合いはないと思うが、一応知り合いを殺したわけなので、気にしないわけにもいかない。

「ご安心ください、大司教が生きていた頃ヨドじいはまだまだ子供だったので、二人にそこまで深い繋がりはないはずです。」

「そう、ならっ。」

 トットット。

 また妙なタイミングでノック音が鳴いた。

「ミューゼ、今日はなにか特別の日でもあるのか?」

「いいえ、特別なことはないはずです。」

 トットット。

 こっち側の返事がないのか、再びノック音が響いた。

「マティアス、まだ用事はあるのか?」

「いいえ。」

「なら頼むわ。」

 わたしはドアを指さした。

「はい、では失礼いたします。」

 マティアスは了解したと頷き、ドアへと向かった。

 ガチャ。

「どうぞ。」

 ドアの外の人を軽い会釈をしたあと、ノックした人がマティアスと入れ替わるように部屋に入ってきた。

「君は?」

 入ってきた人は見たことのない顔だった。

 ビシッと決めた服と姿勢、つり目に薄い唇、いかにも仕事のできるような感じの人だったが、一つだけ疑問に思った、この人は男なのか女なのかだ、顔は整った女性っぽい顔ではあるが、体の方はスタイルの出る服にもかかわらず胸の隆起が一切見当たらないという矛盾で、わたし思わず彼?彼女?をじっと観察してしまった。

「はじめまして、聖女さま、わたくしはテラーさまの補佐官のニノ・ラッドフィンです。」

 うーん、声も中性的でどっちともとれるような声だ。

「聖女さま?」

 凝視されてすこし顔が引きずり始めるニノ。

 なおさら分からなくなってきた。

「お嬢さま、お茶をどうぞ。」

 そんなことで悩んでいる時、ミューゼがわたしの視線を遮るようにわたしの目の前に出てお茶出してきた。

「お、おう。」

 そのおかげでわたしは今どんな状況に気付いた。

「コホン、で、テラーの補佐官がわたしに何の用で?」

「二件あります、まず一つ目がテラーさまの件です、テラーさまを連れて行かないでください。」

 来た。

 いずれ面倒事になるとは思ったから、驚きもしないけれど。

「連れていく?何を勘違いしている、わたしは連れて行きたいなんて思っていない、彼女が勝手にわたしたちについていこうとしただけだ。」

「結果は同じです、聖女さまもテラーさまがついていくことを許したのではありませんか?」

 こいつめんどくさいな。

「そっちからは同じかもだが、こっちは違う、とにかくテラーを引き留めたいならテラー自身を説得しなさい、わたしに当たるのはお門違いだ。」

「そんなっ。」

「この件はここまでだ、もう一件用事があるんだろう?」

 まだなにか言おうとしたニノの言葉を遮り、無理やり話しを終わらせた。

「ふうー、わかりました、もう一つの件ですが。」

 これ以上争っても逆効果にしかならないと悟ったか、ニノは深呼吸して昂った感情を抑え付けて話しを続けた。

「聖女さまに招待されて会いに来た方が公館の方にきましたので、いかがいたしましょうか?」

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