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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
114/152

第 113 話 

話数が飛んでいますが、話は飛んでいませんので気にしないでください。単純に76話を75話で投稿してしまっていたことに今さら気づいて、一個一個なおすのもめんどくさいから、ここからでも正しい数字にしようと113話にしただけです、ややこしくて申し訳ございません。

「ラスタリア王国は独裁者のイーノーによって支配され続けた、そのイーノー家に虐げられてきた民に見かね、ついに我々連邦が旗を揚げたのだ、だから安心してくれたまえ、君たちもイーノー家の洗脳による解けたら解放する、そしたら、君たちにも自由を手にすることができるのだ。」

 訓練場内唯一舗装された場所で臨時で作られた演説台の上に一人の文官っぽい人が高説を垂れていて、その下には百を超えた捕虜たちが座ってその演説を聞いている。

 ぱっ!

 突然会場で物をたたく音が響いたが、誰一人その物音の方向に向くことはなかった。

 なぜならみんなそれが文官の演説に飽きてうとうとしてる捕虜がたたかれている音だと分かっているからだ。

「こんなもん何回聞かせるんねん。」

 一人の捕虜が思わず小声で文句を漏らした。

「解放してくれるって言ってるんだから、これぐらいは我慢しとけ。」

 喋っていることを気取られないようにするためか、まるで歯の隙間から言葉を押し出すような声で横の捕虜がそう諭した。

「どうだろう、屍人になることが真の解放とか思ってたりしてるかもしれんぞ。」

 最初に文句を言った捕虜も合わせて同じ喋り方を取る。

「おい、まじでやりかねんから言うなよ、こえぇだろう。」

「今さらだろう、どうせ拾った命だ、一日でも多く生きた時点もう俺らの勝ちだよ。」

「いざ殺されたらビビり散らかすくせに、なんでここにいるのかもう忘れてんのか?」

 怖がる捕虜に啖呵をきるもすぐ見破られた。

「そうよ、それがどうした?ビビって何が悪い、お前はビビらんのか?」

 しかし当の本人はさすがというべきか気まずくなるところか開き直った。

「余裕でビビるぜ。」

 そんなくだらない会話を聞きながら、退屈な演説を耐え凌ぎ、やっと捕虜たちは自由時間に入った。

 まあ、自由時間と言ってもただ兵士たちの監視下でだだっ広い訓練場でダラダラしてるだけで、なにか楽しい行事があるわけではないが、それでもここの捕虜にとって唯一リラックスできる時間である。

 兵士からすこし離れた訓練場の隅でザルトは一人で座った。

 その場所を選んだのは別になにかやましいことあるわけではなく、ただ無意識にそうしただけだが、敵から遠ざかって損はないだろう。

「ザルトの兄貴、こんなところで何してるんっすか?」

 やることもなくただボーっとしているザルトを無駄に元気な一声が呼び覚ました。

「ああ、エリックか、お前は相変わらず無駄に元気だな、こんな生活なのに。」

 元気、普段ならいいことだが、今のこの状況でもこんなに元気だと当然一部の人の不快を買ってしまい、トラブルに発展してしまう。

 捕虜の収容所は狭い世界なので当然無視するわけにはいかず、ザルトが仲裁に入ってエリックを助けたところいつの間にか兄貴と呼ばれるようになった。

「こんな生活だからこそ元気でいないといけないっすよ兄貴、よいしょっと。」

 手足の枷の位置を気にしながらエリックはザルトのとなりに座った。

「ふ、そうかもな。」

「いやぁ、兄貴と同じ班だったら良かったな。」

「俺はお前の声うるさいから別の班で良かったけどな。」

「そんな、うるさくないっすよ。」

 うるさいかどうかはともかく、異質で目立つのは確かだ、そしてこの収容所で目立つことは決していいことではなく、もし同じ班にいたら間違いなく面倒事に巻き込まれるんだろう。

 不本意だが、ザルトは班分けをした誰かも知らないやつに感謝した。

「あのう、兄貴。」

「うん?声は抑えてもいいが、頭は下げるな。」

 珍しくエリックが音量を下げて喋ったので、ザルトはすぐなにか聞かれたくないことがあると察した。

 それが何なのかはまだわからないが、ザルトはとっさに指示を出した。

「あっ、はい。」

 自然に頭を下げて口を見せないようにしようとしたエリックはそれを聞いてすぐ頭を上げた。

「うん、そのまま前を見てろ、で、何の話だ?」

 同じく前を向き、ただ並んで駄弁っているだけと演出をしながらザルトは聞いた。

「ええと、実は昨日の夜中で起きてしまって、トイレに行ったら、聞こえたんっす。」

 魔力を失った彼らは今普段使用していた生理現象を処理する手段を失い、普通にトイレとかで用を足す必要が出てくる、当然テント内にはそんな施設がないので、離れた仮設トイレのほうにいくことになる、しかし...

「見張りは?」

 もちろん捕虜たちを勝手にいかせるわけがなく、見張りの兵士に報告して同伴する形になる。

「見張りはいなかったというか、自分はまさにその見張りの話が聞こえたんっす。」

「なにを聞こえたというんだ?」

「酒っすよ酒。」

 声を抑えても興奮してるがわかるエリックだが、ザルトは意味がわからず、眉を顰めた。

「酒?何の話だ?」

「見張りの兵士が町を落とす時いい酒を見つけたらしいっす、明日の夜の見張りの時こっそり飲むって。」

「いい酒...」

 魔術師は一般的な酒で酔うことはできない、たとえ下級魔術師でも魔力による体質強化と強い精神力で普通の酒の影響をほとんど受けないからだ。

 だから魔術師が酒を楽しむには特殊な酒が必要となる、闇市とかアンダーグラウンドの世界では魔獣の血を使った酒が売られているらしいが、魔獣の血なんてものを飲んで体にいいわけがなく、まともな人間ならそんなものには手を出さない、もちろん体に悪影響のない魔法植物で作った酒もあるが、どれも高価で一介の兵士が買えるものではないだろう。

 そう考えると見張りの兵士もエリックも興奮するのを納得できる。

「そうっす、どんな味なんだろう、飲んでみてぇ。」

 自分が飲めるわけでもないのに興奮するエリックを見て思わず失笑するも、ザルトの頭の中には一つの計画を立てた。

「なぁ、エリック、お前、家に帰りたくないか?」

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