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グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
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第 9 話 

「着きました、聖女さま。」

 能力を抑える服に着替え、リリアに宝物庫の案内してもらった。

「ここが?」

 連れてこられたのは極普通の扉の前だった、もちろん一般な平民にとっては豪華で普通ではないかもしれないが、王宮の中では極普通で、ここまでの途中でもわんさか見たような扉だった。

 宝物庫だからバレないように目立たなくするのは当たり前だろうと思うかもしれないが、ここに限ってそんな理由ではない、なぜなら、この扉の位置自体が目立てるからだ。

 聖女の住む双蓮宮と国王の住む元聖王宮の間にぽつんと建てられていて、周りはカモフラージュとしての建物が一切なく、まるで上空にここ重要↓って書いてあるようなこれ以上強調されようがない位置だ。

 そのちぐはぐさにはてな状態になっているわたしに気付くこともなくリリアは話を進めた。

「申し訳ございませんが、わたくし、ここから先にはご同伴できませんので、ここで聖女さまのお戻りを待たせていただくことになります。」

 当然なことだ。正直リリアがここまで案内できること自体が驚き、どこかで別の案内人に変わってもらうことになると思ったが、そんなことは一切なく、リリアが自ら運転してここまで連れてきたのだ。

 逆にミューゼはリリアに理由をつけられそのまま双蓮宮に置き去りされているので、やっはりリリアはただのメイドというわけではなさそうだ。

 うん?運転?ああ、この世界にも車がある、もちろん動力はガソリンでも電気でもなく魔力で、操縦も精神力のみなのでハンドルもブレーキもないが。

「別に車に戻って待っててもいいぞ。」

「いいえ、お心遣い大変ありがたいんですが、付き人としてそういうわけにはまいりません。」

 ほんと頭が固いこと。

 いや、もしこの子がただのメイドではなく、監視役も兼ねていたとしたら...

 まあ、どっちにしろ大した問題ではないか。

「そう、じゃ行ってくるわ。」

 礼をしながら見送ってくれるリリアを後ろに扉をくぐると、見えるのは何もない大広間だった。宝物どころか、ごみすらありはしない。

 予想外の状況で警戒して探知と警戒魔法使おうとしたとき。

「魔法は使わないでください!安全保護措置に引っ掛かりますよ!聖女さま?」

 大広間に一人の男性の声が響く。

 うるさっ。

 男の声は広い空間の中で木霊し、耳にしつこく攻撃してきた。

 魔法の発動をやめ、返事する。

「ええ、君は?」

「わたくしめはこの宝物庫の管理人ですぅ、今別の部屋で魔導具を通じて話してますよ。」

 なるほど、監視部屋でここを見ているってわけか。

 しっかし、言葉遣いは丁寧だが、なんだかイラっとする口調だなこの人。

「そちらにも話は通してあると思うけど、宝物庫に行きたいので案内頼める?」

「はい、聖女さまをお通しするようにと言われております、ですがその前に国王陛下からの伝言がありますので、よろしいでしょうか?」

「もちろんだ。」

「コホン、では陛下からの伝言です。この宝物庫にはこの千年イーノー家が代々集めた宝物が保管されていますが、聖女さまがあってのイーノー家ですので宝物庫の中のものどうぞ好きなだけお持ちしていただいて結構です、以上でーす。」

 よ、太っ腹と言いたいどころだが、国の運命がわたしにかかってるらしいから当然っちゃ当然か。

「それはありがたい、礼を伝えといてくれたまえ。」

「はいぃ、かしこまりました、それともう一つ、わたくしめからのお願いといいますか。」

 やっぱただでは済まないか。

「話だけ聞こう。」

「はい、管理人として聖女さまが持ち出したものを登録というか記録させていただきたいのです。もちろん本来ならわたくしめが一個一個点検して確認するんですけど、宝物の量が多くて、あのう、その協力していただけないでしょうかぁ?」

 なんだ、サボりかよ。いや、待て、それもしわたしが持ち去ったにもかかわらず申告しなかったら、こいつの責任になるだぞ、いいのかそれで、王室の宝物庫の管理人としてどうなんだ?うーん、わたしにとっては好都合だから、ここ乗る一択だがね。

「ああ、かまわないよ。」

「お心遣い感謝いたします!では、案内いたします、まず部屋の真ん中にある模様の中心に立ってください。」

 もしかして転移魔法か?そのような術式には見えないが。

「これいいか?」

「はい、では行きますよ。」

 ガちゃんと機械音がなり、床部分が下がり始めた。

「ただのエレベーターか。」

 とがっがりしてるうちに、天井が閉ざされ、周りが点灯された

 ほう、これはこれおつだね。


 長い長いエレベーター旅の末に見えたのは巨大な金属製扉だった。

 扉の上にはびっしりと魔法の術式が描かれており、術式の刻印の中に魔力光が流れている。

「管理人?いるよね。」

「はい、もちろんです、聖女さま。」

「君、思ったより強いね、こんな大規模な術式を制御できるなんて。」

 この世界での魔法は主に四つの要素によって構成されている、原素、魔力、術式と精神力の4つだ。

 原素とは物質の基本というもので世界中に溢れているため、特殊な環境でもない限り、魔法の威力などに影響するものではない。

 そして魔力はつまるどころエネルギーだ、原素の変化促す動力源であり、昔はこの魔力が足りなくて魔法使えない人が大半だが、今は魔導技術によってその魔力の制限は大きく解消されているらしい。

 続いて術式、地球のもので例えるとプログラムだ、魔力と原素を正しく分配し変化させ、最終的に望んだ魔法効果を発生させるプロセスそのもの、魔術師は基本この術式の研究をメインとしている人が多い。

 最後の精神力は原素と魔力を制御し、術式通りに魔法を発動させるためのものだ。そして、この精神力そこが今この時代で魔術師の実力を制限するもっとも大きな枷です、なぜなら、精神力は生物の中にしか存在しないからだ、魔力石のように外部から取り入れて使用することはできない、さらに自分の魔力ではなく魔力石の魔力を多用すればするほどその分制御が難しくなり精神力への負担が大きくなるので千年前よりさらに厳しくなっている。

 今目の前にいるこの大規模魔法陣を一人で制御しているのであればこの管理人は間違いなく奇跡級の精神力を持っているんでしょう。

「いやいや、わたくしめだけの力ではございませんよ、それにこの魔法陣もフル稼働しているわけではありませんので。」

 メインの術式だけでも上級ぐらいの実力が必要だと思うがね。

「そう?それよりそろそろ扉開けてくれない?」

「はい、たったいま。」

 まもなくして、魔法陣の光が暗くなり、巨大な轟音と共に扉がゆっくりと内側へと開いた。

 もっとこうSF映画みたいに無駄に多重扉だったり回転しながら開けたりの演出があると思ったが、案外あっけなく開いた。

「どうぞ中へお入りください、聖女さま。」

「ああ」

 あれはちゃんと保管されているのだろうか?

 複雑な気持ちを抱えながら、わたしは宝物庫へと乗り込んだ。

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