表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グラントゥギア 転生聖女放浪編  作者: ジャックス・R・ドンブリ
1/152

プロローグ

  この作品の一部の背景設定です、少々ですがネタバレも含んでおります、気になる方は飛ばしていただいても大丈夫です。

「遥か遠い昔、太古と言われた時代、グランはまだ生物の存在しない荒れ果てた世界の時代、創造主グランは四つの種族を創り出した。」

 淡い黄色の光に照らされた部屋、一人の女性がベッドで横になっている小さな女の子の寝かしつけに昔話を語っている。

 寝かしつけるために退屈そうな話を選択したようだが、女の子は意外と食いついた。

「すおう、じょう、ちゅう、グラン?」

「創造主グランよ、わたしたちがいるこの世界、グラントゥギアっていうのは知ってる?グラントゥギアとはグランの世界という意味らしいよ。」

 「グランちゅぎゃ、ぅん、言いにくい~。」

 女性は優しい微笑みを浮かべ、幼女の頭を軽く撫でたあと、続けて語りだす。

「創造主グランは四つの種族を創り出した。その四つの種族はそれぞれオンフィア、スピーア、ハイネン、ウーと名付けられた。」

「はいはい、フィー知ってる、フィーはオンぴいあと、ええと、ええと。」

「スピーアよ、フィーはオンフィアとスピーアのハーフなのよ」

「うん、ハーフ、フィーはハーフっ」

「四つの種族はそれぞれの強みがあった、オンフィアは適応力と繁殖力が強く、唯一種族を超える繁殖が可能な種族よ。ママがオンフィア人だからフィーはハーフとして生まれることができたの。」

「はーんしょくって何?」

「ええと、それは...」

 親が子供に聞かれて困る質問トップ10に入るような質問をされ、女性はすこし言葉に詰まった。

「うーん、フィーのような子供を作ることかな。」

「フィーははんしょっくで作られたの?」

「そう、ママたちが繁殖したのよ。」

「じゃー、大人は?大人は?」

「子供が成長すれば大人になるのよ。」

「フィーもせいちょう?したら大人になるの?」

「そうよ。」

「せいちょうはどうやってするの?」

「いっぱいお勉強したら成長するのよ。」

「勉強いや、フィーは成長しなくていい。」

「あら、勉強嫌いなの?でも猫先生とよく一緒にいるじゃない?」

 頭が追いついていないのか、幼女はぱちぱちとまばたきしながら考え込んでしまった。

「猫先生すき、勉強嫌い!」

「そう?ずいぶん気に入られちゃったね、あの子、ふーん、まあ、いいわ、どこまで言ってたっけ、オンフィアは繁殖に強いか、じゃ次はスピーアね、スピーアは精神力に長けていて、精霊と交流することができる、うーん、あとは容姿端麗で基本美男美女ばっかってとこかな。」

「ようしたんれい?」

「きれいってことよ。」

「うーん、でもオンぴぃあのほうがキレイとおもう。」

 幼女は女性の顔を指しながらこう言った。

「ありがとう、でもママを基準にするのはちょっとほかのオンフィア人に不公平よ。」

「フィー、よくわからない。」

「あら、言葉わからなくなっちゃったの?困ったわね。」

 すこし娘との会話を楽しんだあと、女性は語りをつづけた。

「三つ目の種族のハイネンは水の中でも呼吸ができて、水中での移動もめっちゃはやいの。しゅっしゅとな。」

「しゅっしゅっしゅ、しゅっしゅ。」

幼女は布団から手を出し、声に合わせて手のひらを素早く動かした。

「そして四つ目の種族のウーは体がとっても丈夫で力持ち、こうして四つ種族が創られたけど、創造主のいたずらで四つの種族はそれぞれ四つの大陸に分けられた。」

「いたずら、ダメ!」

 幼女の尖らせた唇に女性はその長い人差し指を軽く当てながら頷いた。

「そう、いたずらは困るからダメね、このいたずらで四つの種族はお互いのことを知らないまま種族を大きくしていった。荒れ果てた星も徐々に生気があふれ始め、世界がどんどんよくなるように見えた。」

「めでたしめでたし?」

「ううん、種族をどんどん大きくしていくにつれて、四つの種族はお互いの存在を知った、最初は友好な交流だった、数少ない開拓者たちが荒野で出会い、情報交換をして、仲良くなれば取引などもしてたけど、荒野は開墾され、残りの土地が少なくなっていくにつれて争いが増え始めた。」

「けんか、するの?」

「うん、けんかした、とてもとても大きいけんか、その大喧嘩でたくさんの人が巡りに帰った。」

「巡り?」

「うん、人が死んだら、その魂は巡りに入るのよ、そして二度と帰ってこないの。」

 女性の言葉を聞いた幼女は布団を両手で引っ張り上げ、怯えた目だけ見えるように顔を隠した。

「ママも?」

 女性は幼女の頭に手を置き、親指で彼女の額を撫でながら慰める。

「安心して、ママたちは強いから、巡りには行かないよ。」

 指を絡めてきた幼女の小さな手を包むように握り、女性は話を続けた。

「でもその大きな喧嘩は一つの意外な事件によってやめさせられたの、それが竜の侵入です。」

「りゅう?」

「うん、どう言えばいいかな、このグラントゥギアの外には宇宙があってね、その宇宙のさらに外に霊界というとてもとても広い場所があるの、で、竜はその場所で生きてるとてもとても強い生き物なんだよ。」

「ママより強い?」

「どうだろう、竜もいろいろあるからね。でも少なくともその時代の人たちよりはずっと強かったの、竜に対抗するために四種族が喧嘩をやめて、協力しはじめたけど全然勝てなかったのよ。」

「みんな死んちゃうの?」

「ううん、そんなピンチな時に創造主が現れた、で、創造主が竜を追い出して、みんなは助けられたの。」

「よかったね。」

「うん、よかったね、でも、創造主はよく思ってないの、自分の創った種族たちが弱かったのがいやだったの。だから厳しくすると決めた。」

「お尻ぺんぺんするの?」

「お尻ぺんぺんよりずっとひどいことするのよ、創造主は魔獣を創り出したんだ。」

「魔獣はガオって怖いって猫先生が言ってた。」

「うん、怖いよ、魔獣は身体能力が人族より強い上に魔術も使えるから、武力では人とはレベルが違う。四大種族は知恵を頼りに何とか生き延びたけど、生存空間はどんどん狭まる一方だった。」

「うぅ、まじゅぅ、こわぃ。」

 そろそろ眠気が限界に来そうな幼女を見て、女性はさらに声のトーンを下げ、ゆっくりと語り続ける。

「でも創造主も人族を絶滅させるために魔獣を創ったわけではない、魔獣以外にも竜の残った力などを利用してパライアなどの新しい種族を創った、さらに創造主自身の力を分け与え、神々も創り出した。そこからは人々が神々に導かれ、神術とよばれる力を駆使して種を繫栄させた後世では神代と呼ばれる時代だ。」

 女性の語りはぴたっと止んだ。よく見れば幼女はすでに夢の中で、耳をすませばかわいい寝息も聞こえてきそうだ。

「大崩壊と神々の消失、あと魔術の開祖の話もあるけど、また今度かな、おやすみなさい。」

 足音を消しながら女性は部屋から退室し、ドアが閉まった瞬間にベッドの横の魔導照明の光も消えた。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ