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漫才・コント集

【漫才】霊符を失くした女キョンシー

作者: 大浜 英彰

ボケ担当…台湾人女性のキョンシー。日本の大学に留学生としてやってきた。

ツッコミ担当…日本人の女子大生。キョンシーとはゼミ友。

ボケ「どうも!人間の女子大生とキョンシーのコンビでやらせて頂いてます!」


ツッコミ「私が人間で、この()がキョンシー。だけど至って人畜無害なキョンシーですから、どうか怖がらないであげて下さいね。」


ボケ「どうも!留学生として台湾から来日致しました。特技は雑誌の通信教育で習った功夫(カンフー)と、生ビールの一気飲みです。」


ツッコミ「こらこら、自らキャラを壊さないの!こうして舞台に立ったなら、キョンシーとしてのキャラを全うして貰わなきゃ困るじゃない。」


ボケ「それなら大丈夫。日本に留学した私の代わりに、平家の落ち武者が台湾へ留学したんだ。」


ツッコミ「ちゃんとキャラを保ってた!えっ、ちょっと待って…それじゃ今は、落ち武者の霊が台湾にいるって事?」


ボケ「海を渡った台湾での留学生活は大変みたいだね。特に食生活では苦労が多かったらしいよ。八角の匂いに慣れるまでは、その子ったら牛肉麺や排骨麺みたいな麺類ばっかり食べていたみたいだよ。」


ツッコミ「麺類には馴染めたんだ…平家の落ち武者なんでしょ、その人?」


ボケ「オマケに一昨日なんか、銭剣を振り回す道教の師範に襲われたんだって。SNSで一晩中愚痴ってたよ。」


ツッコミ「落ち武者と道士の異種格闘技戦!」


ボケ「撃退するのに苦労したらしいよ。それ以来、コンビニ行くのも怖いみたいで…あの怖がり様は正しく、『落ち武者は(すすき)の穂にも()ず』だね。」


ツッコミ「随分と日本の慣用句に詳しいキョンシーもいたもんだね…まあ、良いや!その台湾へ留学した落ち武者さんみたいに、貴女も日本という慣れない土地で苦労してんじゃないの?」


ボケ「そりゃ、まあね。こないだ額に貼る霊符を失くしちゃったんだけど、あの時は本当に苦労したよ。」


ツッコミ「えっ、額に貼る霊符を失くした?貼らないとどうなるの?」


ボケ「霊符を貼らないと、関節が硬直して手足に力が入らなくなっちゃうんだ。」


ツッコミ「成程、キョンシーって元々は死体だからね。」


ボケ「それだけじゃないよ。霊符を貼らないと、筋肉痛や関節痛が酷くなっちゃうの。」


ツッコミ「それじゃ霊符じゃなくて湿布じゃないの!」


ボケ「それと、切り傷に雑菌が入って治りが遅くなっちゃうね。」


ツッコミ「それじゃ絆創膏だよ!」


ボケ「何より恐ろしいのは、お肌の保湿が滞る事なんだ。」


ツッコミ「それだと美容パックだよ!そんな効果は道教の霊符にありません。大体、体調不良で済むなら無くても構わないでしょ?」


ボケ「そうはいかない!肌荒れは美容の天敵だよ。」


ツッコミ「死体妖怪が肌荒れ気にしてどうすんのよ?」


ボケ「あっ、ひどい!そんな事言うの?これでも私、キョンシー仲間ではスタイル抜群の美人と評判なんだよ。」


ツッコミ「また随分と狭い範囲の話ね…そこまで困っているのに、何もしなかったの?」


ボケ「見つかるまでの間は、代用品で凌いだんだ。だけど勝手が違っちゃって、もう散々。」


ツッコミ「御札の代用品?それは聞き捨てならないなぁ。詳しく聞かせてよ。」


ボケ「まずは七夕飾りの短冊を貼ってみたんだ。笹飾りから一枚だけ失敬してね。」


ツッコミ「盗んじゃ駄目だよ!何処から持ってきてんの?」


ボケ「確か幼稚園の玄関に飾ってあった笹で、短冊には『大きくなったらワールドカップの日本代表になりたい。』って書いてたかな。」


ツッコミ「子供の願い事を台無しにしてどうすんの!」


ボケ「そしたら急にサッカーをやりたくなっちゃったんだ。」


ツッコミ「影響されるの早過ぎ!」


ボケ「だけど私ったら、ドリブルが全然出来ないの。何せ関節が死後硬直しちゃっているからね。ピョンピョン飛び跳ねる形でしか動けないんだ。」


ツッコミ「スポーツは良いけど、自分の身体と相談してやらないとね。」


ボケ「それから一万円札を貼ってみたけど、剥がれて失くすのが怖くて外に出られなくなっちゃったの。」


ツッコミ「お金は大事にしなさいよ。」


ボケ「それで大学の出席カードを貼ってみたら、休みの日なのに大学に行きたくなっちゃって。」


ツッコミ「向学心があるのは結構な話だよ。」


ボケ「惜しかったのが、神社の御神籤(おみくじ)。サイズも紙質も霊符と似ていたから、いけると思ったんだよね。」


ツッコミ「惜しかったって事は、何か問題があったのかな。」


ボケ「私ったら、大吉の御神籤(おみくじ)を貼っちゃったんだ。おかげで『キョンシーなのに大吉とはおめでたい』って具合に、物笑いの種になっちゃったの。」


ツッコミ「上手い事を言ったね、その人も…だけど貴女、今はキチンと黄色い霊符を額に貼ってるじゃない。それは何処にあったの?」


ボケ「大学図書館の本に(しおり)として挟んだのを忘れてたの。返却する時に司書さんが気付いてくれて、無事に見つかったんだ。」


ツッコミ「これに懲りたら、大事な物はもっと丁寧に扱いなさいよ…あれっ?それって裏表になってるよ!」


ボケ「えっ、裏表に?一回脱いで直さなくちゃ!」


ツッコミ「服じゃないって!こんな所で脱いだら大変だよ!」


ボケ「私、脱いだら凄いんですよ!」


ツッコミ「いい加減にしなさい!そうだ、額の霊符を剥がしちゃえば!」


ボケ「うっ、力が入らない!ガクッ…」


ツッコミ「後で貼り直してあげるから、今は大人しくしてなさい!」


二人「どうも、ありがとう御座いました!」

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[良い点] 「この作品どう?企画」から参りました。 キョンシー、懐かしいです。 行列になって、額にお札をつけて、ピョン、ピョンってはねながら歩くやつ、思い出しました。 お札。 ひとつひとつにそれぞれ…
[良い点]  関節曲がらないのは何かと不便ですね。平家の落ち武者は壇ノ浦先に行けるのですね^^  リズムがよくとても読みやすかったです。 [気になる点]  特にございません。 [一言]  拝読させて…
[良い点] 面白かったです。 舞台でふたりが漫才している映像が浮かんでくるようでした。 関西弁じゃないから、東京の漫才かな? 自分の大好きな、マイクの前で二人が掛け合いを見せる正統派漫才ですね。 楽し…
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