第5話 出迎え
「太郎!!久しぶり!!1年ぶりか?」
「久しぶりだね兄ちゃん!全く、家ができたから引っ越すとは聞いたけどまさか地球じゃないところに引っ越すとは聞いてないよ。」
太郎は文句を言いながらも顔が笑っていた。僕も死んだと知った時にふと最近忙しくて太郎に会えていなかったな…せっかく久しぶりに会う約束をしていたのにな…という後悔がなかったわけではないので再び会うことが出来て非常にうれしく思う。きっと太郎も同じなんだろうな…。
「ごめん、ごめんまさかこんなことになるとは思わなくって言えなかった!」
「まあ、普通は思わないよな。それはそうと、兄ちゃんの為なら全てを投げ捨ててでも来ようと思ってくれる程、兄ちゃんを愛してくれている彼女が居ることも聞いてなかったんだけど。」
「え?何言ってるの?兄ちゃんは人生で誰とも付き合ったことは無いよ。」
「は~。ダメだこれ。こんな兄ですいませんね。涼子さん。」
太郎は非常に申し訳なさそうにしながら松本さんに謝った。いったいどこに謝る理由があったんだろうか?
「いえ、思いを伝えてはまだ無かったので。でも、それとなくアピールしていたのですが。」
「あ~。兄ちゃんはストレートに「あなたのことが好きです。付き合ってください。」と言われて「どこに付いていったらいいのですか?」と返すような人なのでそれとなくアピールしても気が付かないです。」
「そうだったんですね。というか、史郎さんって告白されたことあったんですか?」
「さぁ~?記憶に無いですね。」
今までのことを思い出してみたが何度か異性に寄ってこられたことはあったが一度も告白されたことはないはずだ。太郎の言っていた「あなたのことが好きです。付き合ってください。」は確か、あなたのことがという部分はなかったと思うし…あ、待てよ。確かそれを言われたときってちょうど考え事をしていた時だからもしかしたら聞き逃したのかもしれない。だとしたら少々悪いことをしたかな?でもその後普通に接することが出来ていたからやっぱり気のせいかな。
「全く、兄ちゃんは趣味のことならとんでもない量のデ-タや資料について覚えることができるくせにそれ以外特に人に関することは全く覚えられないんだから。」
「何か、すまんな。」
「別にいいよ。ところで、荷物を降ろしたいんだけどどこに降ろしたら良い?」
「あ~、荷物はなんだ?」
「色々。兄ちゃんが家に来る時に実家に寄って持ってきてくれと言っていた趣味の植木類やお母さんがついでに持っていってくれと言った料理、僕と会ってから一緒に買い物にも行く予定だった物、あと、僕と松本さんの向こうで使っていた荷物全て。後、僕がずっと飼いたかったド-ベルマンがオスとメス1頭ずつとそれ関係の用品、兄ちゃんのペットのポ-君とク-ちゃんの餌のコオロギとかかな。後は兄ちゃんが居る世界についての情報をもとに使えそうな物色々。」
僕の趣味の植木類は小さい鉢のものでも大量にあって段々の棚を作ってその上に載せたり、地植えされていた木に吊るしたりしていたから軽く100は超えると思うんだけどな。後大きな鉢でゆずやミカン、甘夏、ビワ、山椒、パパイヤ×4本、マンゴー×2本、イチジク×2本はあったからそれらを積むだけで余裕でトラックの荷台はパンパンになると思ったんだけどなんでそんなに積めたんだろうか?
「明らかにこのトラックの容量よりも多くないか?」
「そこは兄ちゃんを誘拐した人?とゴニョゴニョして何とかなったよ。」
何をしたのかよく聞き取れなかったが聞こえなかった方がいいのだろうと思い気にしないことにした。
「そうか。では、ド-ベルマンは取り合えず裏庭に太郎の荷物は4階の階段上がってすぐの部屋に松本さんの荷物は玄関に入ってすぐ右の和室に、食料品は2階の台所に、兄ちゃんの趣味の植木類も裏庭に頼む。後、ポ-君とク-ちゃんの餌のコオロギは玄関の下駄箱の下に置いてあるケ-ジに入れておいてくれ。」
「分かった!」
「お腹空いたから、兄ちゃんはご飯をよろしくね。」
「ああ、任せとけ。太郎が明日来るから引っ越し祝いでもしようと思って昨日の晩に大量に仕込んである。さっき確認したらそれらはそのままあったから大丈夫だ。荷物は任せるぞ!」
「やった~!兄ちゃんのご飯だ!もちろん荷物は任せといて!」
太郎はニコニコしながらトラックに走っていった。
「あの、私も何か手伝いましょうか?」
「料理は大丈夫だから太郎の手伝いをお願いしてもいいですか?」
「兄ちゃん、こっちも大丈夫だよ。」
「そうか。松本さん2階のダイニングで座って待っていてください。何か手伝いが必要なら声をかけるので。」
「はぁ、分かりました。おとなしく待ってます。」
どことなく松本さんが疲れているように見えるのだけれどなんでだろうか?