宇宙人とダシャン!
突然ですけれど、名前のわからない花があります。葉っぱはあるのかなぁ? すうっとはえたクキの先に薄紫色のボールみたいな花が咲いています。近づいて見ると、小さな花がたくさん咲いてボールの形になっている。一番近いのは、タマネギの花かなぁ? または彼岸花の赤い花が薄紫色のまん丸なボールになったような……。
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| | こんな感じの花です。編集前の画面ではちゃんと表示されていますけれど、プレビューで見るとズレています。ズレているのはわかるのですけれど、どうしたらいいかわかりません。どうぞ心の目でご覧になって「そういうことかぁ!」と想像なさってください。地面から唐突にニョッキリはえている花です。これを彼氏さんに説明する時に「宇宙人みたいな珍妙な花なんです」って言ったら「ごめん。僕は宇宙人を見たことがないから、わかりません」って言われました。たしかに……! よく考えたら、わたしも宇宙人を見たことはないです。でも宇宙人っぽい花なのです。
これでも作家のはしくれですから、普段から語彙を多くしようと努力しています。なろう仲間の三屋城衣智子さんには敵わないですけれど、あの方はほら、別格だから!! たぶん三屋城さんの前世は辞書だったと思うから!
本を出していただいて変化したことの中に、相手の方をキンチョーさせてしまうということがあります。たまぁ~にお仕事で初対面の方とやり取りをすると、先様からのメールに「初秋の気配が香る侯、ソウ マチ先生におかれましては日々御清栄のこととお慶び申し上げます」みたいな書き出しが……! そもそも先生ではありませんし、日本語もそんなに上手じゃありませんから! 「うぃっす! ソウさん調子どう!?」くらいで書いてもらって大丈夫ですから! 作家だから日本語が堪能だと思われているんだろうなぁ! 失礼のないようにと最上級の敬語で書いてくださっているんだろうなぁ~! それって、しんどいよなああああああああ!! 申し訳ないです! どうぞお気づかいなく!
そう言えばはるか昔に、本を読まない男性とお付き合いしていました。かなり昔です。わたしも若かったから、たぶん古墳時代くらい。すごく優しくてすごくカッコイイ(映画会社の人から声掛けられてた。あの話、どうなったんだろう?)彼でしたけれど、とにかく語彙が少なかった! お話する時に使えない言葉が多すぎた!
ソウ:スカウトされるなんてすごいね~! 他にも声かけられてるんでしょ!? 引く手あまたじゃん!
彼 :ひくてあまたって? どういう意味?
ソウ:え? 引きもきらない的な……。
彼 :ひきもきらない??
ソウ:たくさん人気があって、すごいねって感じ……。
彼 :そうなの? ありがと♪
これはストレスがデカかった!! 何気ない会話なのに「この言葉は伝わるかしら? もっとやさしい日本語にしたほうがいいのかしら?」ずうっと考えないといけない!! そして微妙な表現ができない! ピッタリハマる言葉を使いたいのに、使えないのですよ!! だって言葉が通じないから!! それから後は、言葉が通じる方とお付き合いするようにしています。なんならわたしが知らない言葉を教えてもらっています。お付き合いしていて学びになる方は大事です! 見た目も大事だが、中身も大事です!!
偉そうに言っているわたしが、ある日お出かけしました。チャリンコでチャリチャリ走っていると、急に自転車がガクンとなった! なんだ!? どうした!? あわてて急ブレーキを踏んで通り過ぎた道を見ると、道路のグレーチングが5cmくらい沈んでいた。グレーチングっておわかりになりますか? 道路の水を下水溝へ引き入れるための格子状のヤツ。ハイヒールで歩くと隙間にヒールがハマって「キイイ!(怒)」ってなるヤツ(←わかりにくいよ!) 自販機の下にあって、小銭を落とすと「わあああ!!」ってなるヤツです。金属製の網というか、格子のヤツ。
ここまで書いてすでに説明がアヤシイのですけれど、ヤツの大きさは一畳くらいありました。けっこうデカい。その端っこがアルファルトの道路から5cmくらい沈んでいる。説明がヘタで申し訳ないのですけれど、とにかく危険な状態だったのです。もしヤツが外れたら歩道に畳一枚ぶんの穴があいてしまうし、今でさえ5cmも段差がありますから自転車で通った方はコケるかもしれないし、お年寄りが転ぶ可能性だってある。そして何よりそこは通学路です。学生さんがケガするかもしれない。
これはすぐに修理してもらわないと!!
たぶん県道。そして県の土木事務所はすぐ近く! わたしはチャリを飛ばして土木事務所へ行きました。
ソウ:すみませ~ん! 道路のことで~!
急いで事務所へ入ってゆくと、全員がこちらを向いた。そして全員机に座ったままです。誰も応対に出てこない。わかるよ……。わたしも以前国交省でバイトしてたから、わかるよ。絶対にメンドクサイ話しか来ないですものね。わかるけれど、対応してくれ……。
しぶしぶ出てきたのは、比較的お若い男性でした。たぶん一番下っ端。わかるよ。トラックが家のそばを通って家が揺れるから何とかしてくれって言われたって、どうしようもないものね。ちがうんだ。今日はそういう話じゃないんだ。
ソウ:そこのコンビニの通りは、おたくの管轄ですか?
管轄じゃなかったら相手にしてもらえないので、これは大事です。一所懸命にしゃべった後で「うちじゃないです」って言われたら、ムキイイイ!!ってなるから。
職員:……えぇ、そうです……。
そんなにイヤな顔をしないでくれ。今日はちゃんとしたまともな話だから。
ソウ:コンビニ前の信号から道路標識の間にある歩道がですね……。距離標とかあったか気づかないのですけれど……。
わたしが距離標と言い出したので、職員さんがオヤ?という顔をした。そうです。ヘンな言いがかりをつけに来たのではありません。しごくまともな話をしにきました。誰かがケガをするまえに対応してください! もしケガ人が出たら気の毒ですし、補償は税金を使われる! そんなの気の毒だしもったいない!
職員さんがゼンリンの地図を出してくれた。そうです! このあたりです!
ソウ:ここのグレーチングが…………、
言葉に詰まってしまった。さっきも説明が上手にできなかったのですけれど、この時も何と言ったらいいかわからなかった。でも危ない状況をできるだけ詳しく言わないと!! わたしだって作家のはしくれ! 言葉を紡ぐのがお仕事です! きちんと言葉で説明しないと! 作家魂で乗り切るのだ!!
…………ここのグレーチング、ダシャンて!!
バカかオレ! 何を言ってるんだ! ダシャンて何だよ!? 意味わかんねぇよ! ちゃんと日本語で説明しろよ! うるさい! 今ちゃんと説明するってば! わたしだって作家だよ! 言葉で説明するのが仕事だよ! 作家の本領を見せてやる! すっこんでろ!!
脳内でケンカする二人のソウ マチを何とか落ち着かせて、再度口を開きます。
……グレーチングがですね……こう…………、
……こう……ダシャンて……。
どんだけバカなんだ(涙)。ほかの言葉は出てこないのか?(涙)。よくそれで作家なんて言えるなぁ! それとも何か? 日本語じゃなかったら上手に説明できるのか? フランス語なら話せるのか?(←ムリです。日本語しか話せません)
……こう、ダシャンて……。
何度も説明しようとしましたけれど「ダシャン」しか出てきませんでした。かろうじて「5cmくらい沈んでる」「あのままじゃアブナイ」とカタコトの日本語で言いました。職員の方、わたしのことを外国籍とカン違いしたかもしれない……。
とにかく危ないとお伝えはしたので、しょんぼり顔で事務所を出ました。上手に説明したかった……(涙)。
1時間ほどで用を済ませて先ほどの歩道を通りがかりました。すると土木事務所の車が停まっていて、グレーチングの周囲に赤い三角コーンを置いて通行止めにしていた。良かった! もう安全!!
作業をしている男性を見ましたけれど、さっき話をした方ではありません。さっきの方ならお礼を言おうと思ったのですけれど、知らない方だからお礼を言っても驚かせるだろう……。わたしが横目で現場を見ながら通り過ぎようとしていたら、その男性がこちらへペコリと頭を下げてくださった。あれ? 自転車を止めると男性が近づいてきました。
職員:ありがとうございます! 危ないところでした!
ソウ:でもさっきお話した方と(ちがう)……。
職員:あの時、自分も事務所にいました! 教えてもらって良かったです! 本当に危なかった!
そっか。あの時メンドクサそうな顔をしていた方たちの一人か……。でもすぐに対応してくださったんだ! 勝手にメンドクサそうな顔と思ってごめんなさい!! 失礼しました!!
そういうワケで一件落着したのですけれど、いまだにこの事を思い出すと身がすくみます。
ダシャンてなんだよ?? もう少しマシな言葉はなかったのかよ??
ダシャンて…………(涙)。 あと、宇宙人もな…………(涙)。
語彙を増やすべく精進いたします!! 目指せ!! 三屋城 衣智子!!