1話目:冴えない男の転機
「鈴木さん、これ前も注意しましたよね?一度注意したことはメモをして忘れないようにして。」
あぁ、また同じことで怒られた。
メモしても同じミスしてしまう、、
私の名前は鈴木亮平。35歳のエンジニア。
もともとSEで仕事をしていたが、給料上がらない上に残業が多いのに嫌気がさしていた。
なので昨今のフリーランスブームにのっかり、年収あげようと思いフリーランスになったがもともと仕事能力がないため契約を3ヶ月できられては次の仕事を探している。
ほとんどの仕事において若い人は重宝されるが、この業界は特に若いほうが有利だ。
PMと呼ばれる上司にあたる人が20代の場合もあり、彼らも年上を叱るのはきついものがあるのだろう。
だんだん年齢的にスキルマッチしなくなってきて仕事の条件がきつくなってくる。
同じ単価でも35を超えると求められるレベルは変わる。40を超えるとそれこそメンバークラスで雇って貰えない。
そりゃそうだ。だから1秒でも早くスキルをつけないと自分の価値はどんどん目減りする。
しかし、私は仕事ができないタイプの人間。。
どんなに頑張っても同じところでミスをしてしまう。いわれて初めて気が付いてメモするが少し違う課題がくるとまた息詰まるのだ。
まあ、今日は金曜日。
今日終われば土日はゆっくり休める。大好きなスロットでもしよう。
「鈴木さん、ちょっと通話いい?」
自分より年下のPMからチャットが飛んできた。大丈夫です。と即レスをする。遅刻しないのと即レスだけで私はなんとかやってきた。
エンジニアはリモートワークが多い。私は人の目線が苦手でつらい思いをしてきたが、今回の案件はフルリモート。本当にありがたい。
喜んだのもつかの間、連絡は来週からフル出勤してくれとの話だった。
ここもダメそうだ・・
-土曜日の朝-
「今日はちょっと早いかもゴメン」なんて言われましても・・・
あいみょんの朝陽が部屋に鳴り響く。
朝6時に目を覚ました私はアレクサ、ストップといい、二度寝をする。本格的に目を覚ましたのは10時。
月曜から出社だと思うと気が重い。
けど今日はスロットに出かけるとしよう。
原付にまたがり5キロ先のパチ屋に向かう。雨がぽつぽつ降ってるが、これくらいなら大丈夫だろう。帰りは晴れてるようだし問題ない。
途中でマンションの管理人とすれ違う。ここの管理人のおばあちゃんはたまにマンションの掃除をしている。何人かで管理してるらしく近くのベンチで座り談笑してるのをよく見かけてた。
軽く挨拶して過ぎ去ろうとしたとき、管理人に珍しく話しかけられた。
「バイクの駐車場の料金早く払ってよ」
そういえばまだ払ってなかったなと思いながら会釈しながら来月払いますと言ってパチ屋に向かう。
少ししたら本格的に降ってきた。まずい、早くパチ屋に入ろう。。
バイクの調子もおかしいから修理しなきゃと思いつつパチ屋にいきたい衝動にいつも負けてしまう。
バイクを走らせてると前の交差点で信号が赤になりかけている。
タイヤが空回りする音を感じながら私はアクセルを踏み込んだ。右に曲がろうとしたその時、同じように急いだ車が急に前に見えた・・・!
バゴッという音がして気づいたら私は地面に転がっていた。頭がずきずきする。どうやら事故を起こしたようだ。早く起き上がらないと。頭が痛い。。体が持ち上がらない。。?腕も全く動かせない。
ふと横を見ると誰かの見慣れた靴があった。私の靴だ。取りに行かねば、
体が起き上がらない。腕が一ミリも上がらない。遠くで人の声がする。スマホで写真を撮られてるのを感じる。瞼が重い、、鈍い痛みを感じながら一ミリも動かせない腕をもどかしく思いながら意識が途絶えた。
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「今日はちょっと早いかもゴメン」なんて言われましても・・・
あいみょんの朝陽が部屋に鳴り響く。私はあっけにとられる。
体が自由に動かせる。なんだ夢でもみてたか?
いやあのリアルな感覚が夢とは思えない。でも、日付を見ると土曜日。
ありえない妄想が頭を支配する。これはもしやあの有名な異世界小説の死に戻りでは。
そんなはずない。リアルな夢だったんだなと思って同じように二度寝した。
パチ屋に向かおうとして部屋から出て入口まできたところで管理人が珍しく話しかけてきた。
「バイクの駐車場の料金早く払ってよ」
体が硬直する。こんなリアルな夢なんてありえない。雨がぽつぽつ降り始めていた。
体がバイクに乗るのを拒否してる。
パチ屋に行くのはあきらめて部屋に戻った。そこで見たこともない石をパソコンの前にあるのを見つけた。
この石は小さく、掌に収まる程度のサイズで、その形は結晶構造をしていた。色は深紫色で、光を当てるとまるで星空のように無数の小さな光が点滅して、よく見ると内部には微細なルーン文字が刻まれている。
なんか不思議な石だな。。
石を持つと、その重さは意外にも軽く、手に触れると予期しないほどの暖かさを感じた。
きれいな石だし、置いておくか。
なぜここにあるかはわからないが、私は飾っておくことにした。
もしかしたらこの石の力で私はタイムループというやつをしたかもしれない。
今日は雨が止んでからバイクの修理をすることにした。
夜になって石を見ても特に朝と変わったところなくそのまま寝ることにした。
日曜日の朝。惰性のようにパチ屋にいって、朝から3万ほど負けてそれでも取り戻したいと思いからさらに3万負けた俺はとぼとぼと家に帰った。
表情は虚無感で満ちており、財布は完全に空っぽになっていた。
もう夕方近い。負けてからいつも思う。ほんとうにスロなんてやめたい。でも日付が変わると今日は勝てるかもと思っていってしまうんだよな。
パチ屋を強制的に行かなくなるように現金を持たないようにしてるときもあった。だが、無駄だった。
結局行くようになってしまうのだ。
帰宅し、椅子に沈み込むと、石が淡く光っていた。
昨日の夜は光ってなかったのに・・
さらに、石を握りこむとまるで心臓のようにゆっくりと脈打つ感覚があり、それはまるで生命体のようだった。
指先で石をそっとなぞり、心地よい暖かさを感じる。その深紫色の石は私の手の中で微かに光っていた。私はその日に起こった出来事を思い出しながら、石をじっと見つめた。
突然、石の中に小さな光が踊り始める。その光はパチンコ店の明るいネオン、煌びやかな機械のライト、そして金属球が散乱する瞬間を映し出していた。それはまるで微小な映画のように、目の前でその日の出来事を再生していた。
「もう一度やり直す」と心に決めると、石の中の光は動きを変える。逆再生のように、金属球が機械に戻り、ネオンの光が消えていく。その光が完全に消えると、周りは一瞬、完全な暗闇に包まれる。
目を開けると、再び朝の光が部屋を照らしていた。私は再びその日を始めることができるんだと直感した。深呼吸をして、今度は違った選択をする覚悟を決めた。