謝罪会見
「えー、この度は……大変、申し訳ございませんでした!」
町長は集まった報道陣に対し、深く頭を下げた。それを合図にカメラのフラッシュが飛び交う。
ただただ滝に打たれるような気分でフラッシュが治まるのを少し待ち、顔を上げた町長は再び口を開いた。
「……私の軽率な発言、配慮が欠けており、多くの皆様に不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます」
再び、深く頭を下げる。そして飛び交うフラッシュの中、誰かが言った。
「貴方が暴言を浴びせた当人には、ちゃんと謝罪したんですか!?」
「謝罪……えぇ、まぁ」
「歯切れが悪い!」
「本当に謝ったのか!」
「どうなんですか!?」
町長はチラリと部屋の隅を見た。そこには今回問題になった告発動画に映る、もう一人の当事者が立っていた。
当然、報道陣もそのことは把握しており、町長が視線をやったのを機に、追及に入る。
「そこにいるのが、あの動画の彼ですね!?」
「我々の前で謝ってくださいよ!」
「そうですよぉ! 誠意を見せてくださいよぉ!」
「さあ、どうぞ!」
容赦なく浴びせられる言葉。そこにあるのは怒りか嘲笑か。町長はこちらに来させるように職員に手で伝えた。
「えー、この度は、私の心無い発言で、君の、いや、あなたの心を……うーん、まぁ深く傷つけた事を……うーん」
「どうしたんですか!」
「本当に悪いと思っているんですか!?」
「それで反省しているつもりか!」
「パワハラを軽く見てんじゃないの!」
「ちゃんと謝れ!」
「えー、ですから、大変……申し訳ございませんでした」
この日一番のカメラのフラッシュが部屋の影を払った。
――これもご時勢というやつか……。
自分は誰の気分を害し、誰に謝っているのか。そう、町長はどこか釈然としない気持ちで頭を低くしたまま、上目遣いで見上げた。
ロボットは何も意に介さず、無表情でただ前を見据えていた。