20 緊急
ヒメルミネアさんは、湖の精霊でした。
いえ、池って言うと、泣きそうなお顔をなさるので。
「すみません、ヒメルミネアさん」
「シナギさんは真面目で良い人ですけど、鈍感さんなんです」
「俺は一見不真面目だけど、女心にだけは超敏感ですよ」
ちょっとアランさん、なに言ってくれちゃってるんですかっ、
って、目が本気だよ、この人。
これが全力の『モンスター』モードかよ、すげぇ。
あ、ゼシカさんから、耳、引っ張られて行っちゃった。
「ゼッちゃんが緊急実力行使するなんて、めったにお目にかかれないのですっ」
左様ですか、超非常事態だったのですね。
「ヒメルミネアさまのあまりのお美しさに、ご主人さまも辛抱たまらん、だったのですっ」
もしもし、フルリさん、言い方っ。
「いやですよ、お嬢さん、本当のこと言っちゃ」
「私は見ての通りの美人さんだけど、魔性の女じゃありませんよ」
うわっ、こっちはこっちでこんなだよ。
どうしよう、収拾つかないぞ、これ。
何だか助っ人が事態を悪化させちゃってるような……
「シナギ様、すみません」
ゼシカさん、助けてください。
って、アランさんは?
「申し訳ありませんが、あの状態のアラン様は緊急処置が必要と判断しましたので、私どもはこれで」
「僅かばかりですが支援物資をどうぞ」
ありがとうございます、ゼシカさん。
本当に助かります。
「すでに応援要請しておりますので、今しばらくの御辛抱を」
お気を付けて。
あー、ぐったりしたアランさんが、ゼシカさんからおんぶされて退場。
何だか凄いモノを見てしまった、気がする。
「……」
うえっ、ヒメルミネアさんがよだれがこぼれ落ちそうな表情で、支援物資をガン見しておられますよ。
ちょっとヒメルミネアさん、精霊って何なんですかっ。
それならそうと言ってくれないと。
「良い匂い……」
うわっ、この期に及んで食欲優先ですかっ。
ちゃんと説明してもらえるまで、お預けですからね。
「シナギさんは、釣った魚には餌をやらないタイプなのですね」
俺、ここに来てから一匹も釣ってませんから。
むしろ根掛かりでしょ、あなたは。
「上手いこと言っちゃって、焦らしプレイなのですね」
焦らされてるのは俺ですから。
「焦らし合うほど、仲が深まるふたり……」
誰かっ、助けてくださいっ。




