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君の嘘、僕の恋心



「おーい、たーすけてくれー」


「なんだよ? うんざりしたダルい声出して」


「また、先輩がこんなタイトルでなんか書けってさー」


「オマエ、やっぱりその文芸部の部長に可愛がられてんだろ?」


「しらねーよ、こういうの苦手なんだよ、俺は」


「で? 次のタイトルは? 『きみの嘘、僕の恋心』? あー、これはお前に恋愛もの書けってことだな」


「書けるかよ俺に。恋愛ものなんて。いまだに女と付き合ったことも無いっていうのに」


「簡単だぞ? 女なんて顎を詰まんでクイと上げれば目を閉じる生き物だぞ?」


「オマエなんて刺されてしまえ!」


「そのタイトルだと相手が嘘をつくわけだ、その嘘に気づいて恋心を自覚するか、それとも失うか、そんなところ?」


「それをどうストーリーにしろってんだよ。もー、あの先輩は俺に何を書かせたいんだよ?」


「困らせて遊んでるんじゃね? んーと、婚活かな?」


「婚活?」


「そう、婚活パーティで獲物を待ち構える結婚詐欺師。相手の恋心が金になる飯の種っていうわけだ」


「夢もポエムもねえな、おい」


「恋心なんて所有欲のエゴだろ? そこに夢を抱く乙女ロマンチストを手のひらで転がして有り金むしりとる。恋心に投資して破産する経済ドラマとなるのかな?」


「相手の嘘に気がついたときは借金まみれと、嫌にリアルだな」


「リアルから離れて夢が見たいのか? しょうがないな。じゃ、無人島だな」


「また無人島かよ?」


「限定条件として使いやすいんだよ。推理ものの孤島の別荘みたいに。で、だ。無人島に漂着して食べ物を探していると、バナナが実っているのを見つけると」


「お、今回はあっさり食べ物が見つかった。良かった」


「食料ゲット、とそのバナナをいっぱいに胸にかかえて戻ると、同じように漂着していた女がいる。その女がバナナを抱えるお前に気がつくわけだ」


「漂流してたの俺なのか? まぁ、いいけど。で、俺ひとりじゃなくて、もう一人、女が流れ着いているのか」


「その女がお前に気がついて走ってくる。意を決してお前に告白する」


「いきなりだな。告白って」


「ちなみにお前が女に告白されたことは?」


「一度もねえよ。女と付き合ったことねえって言ってんだろに」


「そんなお前に、この女は一大決心で告白するんだ。どうよ?」


「どうよ? って言われても、んー、ちょっとドキドキするかな?」


「その女は手を組んで、すうはあと深呼吸して、真剣な目でお前をじっと見て、意を決して言うんだ」


「うんうん、なんて告白するんだ?」


「あなたを愛しています。だからバナナ下さい」


「ウソだああ! バナナ目当てだ! そんな告白はイヤだ!」


「無人島に漂着して、腹を空かせてたらそうなってもおかしくないだろ」


「ひでえな、愛も恋心も欠片も無い。恋心どこにいった?」


「そのまま無人島に二人っきりで何年もいたら、恋とか愛とか湧いてくんじゃね? その島に二人っきりのアダムとイブだし」


「どこが恋愛ものだよ。ロマンチックがひとつもねえぞ」


「その後のことはわからない。嘘とバナナから始まる恋物語があってもいいだろ」


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