その涙さえ命の色
「あー、まいった」
「オマエ、何、頭かかえてんだよ?」
「このお題でなんか書けって、先輩がさー」
「あぁ、お前、文芸部だっけ? なになに?『その涙さえ命の色』? この題で書けってのか。ずいぶんとポエミイだな」
「俺にポエム書けってのかよ、あの先輩なに言ってんの?」
「可愛がられてんじゃね?」
「だいたい涙に色がついてたらこえーだろ。宇宙人か? しかも命の色ってなんだ?」
「オマエな、本当に文芸部かよ?」
「俺はドキュメントが好きなんだよ」
「入る部活間違えてんぞ」
「あぁ、ダメだ、ぜんぜん浮かばね」
「お題のタイトルからお話、ねえ」
「お、なんか、アイディアあるのか?」
「ストーリーにならない、くだらない戯言ならなんぼでも」
「くれ、ネタくれ」
「そのタイトルだと、涙から命の色が感じられたらいいんだろ?」
「だから、どうしたら命の色が見えるんだよ。特殊な検査機器か? サーモグラフィーか?」
「温度を見てどうする。具体的な色でなくてもいいだろうに。えーと、うん、無人島だな」
「無人島?」
「そう、無人島に漂着するんだ。そこで水も無い、食べ物も無い。さあどうする?」
「探すよ。魚でも取るとか、最悪、蜂の子とか」
「そうして食べ物を探していると、なんと、ひとつだけ無事に流れ着いた食べ物を発見するんだ」
「お、何か盛り上がりそうな。その食べ物を奪いあったりするのか?」
「ケンカすんなよ。そこは協力しよう。平和的に助けあおう。さて、流れ着いた食べ物とは、なんとカップラーメンだったのだ」
「なんでカップラーメン?」
「しかし、残念なことにお湯が無い、火も起こせない」
「お湯無しカップラーメンをパリパリ食べるのか? 泣けてくるな」
「泣けてくるだろう? その涙でカップラーメンを作るのさ」
「はあ?」
「涙で作ったカップラーメンを食べて生き残る。ほら、命が感じられるだろう?」
「くだらねえ!」
「だから、最初にくだらない戯言って言ってるじゃないか。さて、命の色は、シーフードかな? カレーかな?」