不思議な誘拐監禁犯
一体、私がここに誘拐・監禁されてからどれだけの月日が経ったのか、今となってはもう思い出すことができません。
不可解なのは、私に対して何かを要求するわけでも、暴力をはたらくわけでも、あるいは家族に身代金を要求するわけでもないことです。最初の頃は覆面をしていないことから私を生きて帰す気はないのだと心底怯え、恐怖で震えていました。
けれど、その予想に反して、犯人の私に対する態度は、いつも至って丁寧で、一度として声を荒げられたことすらありません。
そのせいか、時々犯人に対して親愛の情すら覚えてしまうのですが、きっとこれがストックホルム症候群と言われるものなのでしょう。
実は、何度か犯人の目をかいくぐり脱走に成功しています。でも、どういうわけか必ず居場所を突き止められて、この場所へと容易く連れ戻されてしまうのです。
しばらく食事が与えられないこともあるのですが、こちらから要求すれば一応軽食のようなものを出してくれるのです。本当に何が目的なのでしょう。
それに一番理解できないのは、彼女が私のことを…………あれ、何だったかしら?
そもそも私がここに誘拐・監禁されてからどれほどの月日が流れたのか、今となっては全く思い出すことができません。
不可解なのは、私に対して金銭を要求するわけでも、暴力をはたらくわけでも、あるいは身代金を要求するわけでもないことです。私に対する態度は、いつも一貫して優しく、声を荒げられた記憶すらありません。
彼女は、まるで家族に接するかのように、微笑みを絶やさず私に話しかけてきます。そのせいか、時々愛情すら覚えてしまうのですが、きっとこれはPTSDの一種なのでしょう。
実は、何度か犯人の目をかいくぐり脱出に成功したのです。でも、毎回なぜだか必ず居場所を突き止められて、この場所へと連れ戻されてしまいました。彼女は私を責めるわけでもなく、ただとめどなく涙を流すので、おかしなことに罪悪感を覚えてしまい、最近ではここから逃げ出すことを半ば諦めてしまっています。
しばらく食事が与えられないことも時々あるのですが、こちらから要求すれば一応軽食のようなものを出してくれるのも謎です。本当に彼女の狙いは何なのでしょう。
「ねえ、朝ごはんは、まだなの?」
「(さっき食べたばかりなのにもう忘れちゃったのね……でもこういう時は否定しちゃ駄目だって言うし……また簡単なおやつでも用意するしかないわね……)もう少しで準備できるから待っててね、お母さん!」