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「完」Reした令嬢の私話  作者: さしみのつま
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( 7 )あの人と密会します

都には、手紙の配達を専門にしている会社があった。届け先へ丁重に手紙を渡すという仕事で高い料金を取る。


貴族や上流階級の者なら、利用する事が多かった。



「ビアンカ・ダンバーグ公爵令嬢様へのお手紙でございます。」



一般の手紙とは異なる事から、正面玄関の扉を叩いて手渡す。使者と同じであった。


執事はチップを渡して手紙を受けとる。差出人は、知らない名前だ。これを渡して良い物か考える。以前なら捨てていたのに。



(「R&P商会」だと?聞いた事の無い会社だが、はて。どうしたものか。)



名の知られていない会社なら、相手にしないのだが。この前のビアンカの癇癪には酷い目に合った。


また、テーブルを投げつけて暴れられたら、たまらない。仕方ない、渡してしまえ。どうなっても、知らないからな。



「ビアンカお嬢様、お手紙が届きました。「R&P商会」からでございます。」


「「R&P商会」ですって?待ってたのよ!」



奪い取るようにして、ビアンカは手紙を読んだ。後で内容を調べるつもりだった執事だが、何処を探しても無いのだ。持ち歩いているのか?


ビアンカは、執事とパイでかが手紙を探した事に気がついていた。仕方ないので、偽造する事にする。









パトリシアは、「D&P商会」の「バーゲンのカタログ」を取りに来たビアンカに戸惑う。



「特売のカタログを公爵令嬢が、でしゅかあ?お金に困ってるでしねえ。割り引きするでし!」


「同情するなら、金をくれ。」


「お金でしゅか、おいくら?」


「嫌だあ、ジョークよう。古いけど、ドラマの台詞が流行っててんだから。お金なら、あるわ。心配してくれて、ありがとう。」



「D&P商会」の事務所で、ビアンカは封筒にカタログを入れる。見つけたクーポン券も。



「クーポン券もでしゅか?変わった令嬢でちゅう。」


「こうしないと、手紙を盗み見する奴らが居るのよ。それより、ゴメスさんが会ってくれるって本当に?」


「はい、外国に仕入れに出てまちたけど。こちらに、来られるそうなんでいゅ。」


「早く、お会いしたいわ!」



手紙の中身は、パトリシアと共同経営者のゴメスからの招待であった。やっと、会える。影の実力者の男に。


ドルウ・ゴメスは、国々に支店を出して成功した資産家である。表立っての行動は少ないが、国の権力者とのコンタクトを持ってるという噂だった。2年後の話だけど。



「これで、いいわ。後は、見える場所に置いとけば完璧!」



ビアンカは、わざと手紙をチェストに置いて置いた。パイでかが見やすいように。そして、直ぐに執事に報告されたのだった。



「あの手紙の中身、カタログだったわ。バーゲンのよ。それも、クーポン券や割り引き券まで入ってるの。貧乏貴族の娘みたいな事事をやってるの!」



2人で、大笑いする。我が儘令嬢は、物珍しさにクーポン券を集めているのだろうか。


やっぱり、おかしくなっていると、執事は安心した。公爵を説得して、ビアンカを病院へ入れてしまおうと。


私に逆らう者を屋敷には置いておけない。この屋敷は、私の物だから。










約束の日にイワンを連れてカフェへ行き、ベネッタに身代わりさせてビアンカは脱け出した。


行く先は、「R&P商会」。魔法で姿を見えなくして、商会の事務所まで侵入成功。



バタンーー。



見えない手でドアが開く。事務所の床の上に貴族の令嬢の姿が現れる。机に座っていた男性が、立ち上がった。



「ようこそ、ビアンカ・ダンバーグ公爵令嬢。お待ちしていました。」


「ご招待を、ありがとうございます。ゴメス様。」



「D&P」商会のシンプルなデザインのドレスが、よく似合っている。赤茶けた髪も編み上げただけの庶民の娘なようなヘアスタイルだ。


少し、ふくよかなボディ。キラキラと獲物を探しているよな黒い瞳が人を惹き付ける。



「上流階級の方々がお使いになるお店へでも思ったのですが、王子様の婚約者ならば目立たない方がと。ここへ、お呼びしました。」


「それで、結構ですわ。何をしても、色々と言われる身ですの。」



ゴメスは、14歳の少女にしては大人びた口調に微笑んだ。無理をして背伸びしているか、本当の姿なのか。興味深い。



ペタンーー。



一瞬だけ、ゴメスの顔に何かが触れた。そして、直ぐに消えた。ゴメスは、後悔する。



(しまった、油断した!相手は子供だと思っていたのに、魔法を使うのか?)



警戒するゴメスに、ビアンカは首を傾げて尋ねるのだ。



「どうしてなの?」


「どうしてとは?」


「その身体は、形だけじゃないの。魔力で作り上げた人形なのかしら。」


「これは、驚いた!分かるのか?」



ゴメスは、固まった。その身体から、パトリシアが抜け出て来る。彼女の成り代わった身体だったのだ。



「まあ、そうなのね。2人だけど、実は1人ってわけ。」


「見破ったのは、貴女が初めてでしゅ。秘密を守ってくれましゅか?」


「守らなきゃ、私の記憶を消すんでしょ。大丈夫、私の秘密を見せるから。これで、お互いの約束になるかしら?」



ビアンカは、あっという間に黄色のスライムに変身。パトリシアは、好奇心を剥き出しにして触ってくる。


ひっくり返して観察し始めたのだ。慌てて、ビアンカは元の姿に戻った。



「止めてよ、触らないで女の子よ。あなた、男の転生者?」


「当たった!どうして、分かる?」


「舌ったらずは、どうしたのよ。私も、転生者だから。奥田 三沙子ていうOLなの。」


「俺は、魔法使いのドルウ・ゴメスだった。女の子ってのは疲れるから、男の形を作って使用している。」



成る程、ドルウ・ゴメスは転生者。男だったのが、女の子になったのね。これで、秘密を共有したわ。


私に手を貸してもらわないと。



「それで、お願いがあるの。聞いてくれる?」


「話によっては、だな。俺に利益がないと、意味ないだろ。」



このー、手強い。でも、奥田 三沙子を舐めんなよ。地獄で10年も魂を処理しててんだならね。負けないから!

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