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「完」Reした令嬢の私話  作者: さしみのつま
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( 6 )怪しいお嬢様

毎日毎日、身代わりを寝かせてスライムになったビアンカは隠密行動を繰り返していた。メイド達は、何時もグース寝ていると思っているけど。



「まあ、お嬢様。ドレスが緩くなってますわ!お直ししないとー。」



メイド達が嘆く、仕事が増えたと。皆で、ドレスを詰めなくてはいけないからだ。太っちょ令嬢でいいのに。


朝から1日、スライム活動。スライムは全身を使って移動するので、消費カロリーも大きい。ビアンカは、思いつく。



(そうだわ、新しいドレスを手に入れなくちゃ!)



何しろ、執事の用意するドレス店の商品は着ていると吊れるし動きにくい粗悪品。最高級品のはずが、カスを掴ませられてる。


詐欺だ、ペテンだ、着やすいドレスが欲しいー(ギブ!)










イワンは、意味が分からない。ビアンカは、馬車をカフェの前に付けてカフェへ入ったふりをして裏通りの商店街へ来たのだが。


ソロソロ、ダダダダダダ、ピタッ。



スカーフを頭と顔に巻き、抜き足差し足、忍び足。と、思ったら走り出す。付いて行くのが大変。



「あのさー、お嬢様。さっきから、何やってんだよ?」


「しっ、黙って!目立ちたくないのよ。」


「反対だと思うけど。皆がジロジロ見てるし。恥ずかしいから止めてよ。」


「えっ、みられてんの?出来る人達ばかりなのね!油断できないわ。」



油断できないのは、あんたの方。何やらかすか、分からないから。お嬢様のお守りは疲れると、イワンはウンザリした。



「見つけてわ、ここよ。ここー、「D&P商会」だわ!」



どうやら、目的地へ到着したらしい。そして、店から出てきた少女に突進して行くのだ。



「ちょっと、あなた。パトリシアさん!」



名前を呼ばれた小柄な丸顔の少女は、走りよる見知らぬ少女を警戒しながら見た。栗色の髪に栗色の瞳と地味な容姿。


声をかけた相手を見て、高価なドレスから、貴族の令嬢と分かったようだ。無視せずに丁寧な応対をしてくる。



「はい、何でしゅか?」


「あなたに、お願いがあるのよ!」



「D&P商会」とは、異国の者が共同経営する会社だ。この国では商いを始めたばかりの会社だが、数年後には堅実な仕事ぶりで王家も利用せる大きな会社へと成長するのだ。



(お父様とお母様が、私の嫁入り支度の品を注文したのよ。この会社なら、どんな品でも揃う。粗悪品なんて売らないから信用されてるし。)



何処かの店とは、大違い。ここなら、安心して任せられる。ビアンカと同じ歳くらいの少女にお願いします。



「お願い、ドレスを売って下さい!」



少女パトリシアは、これでも商会の共同経営者だ。まともなドレスを売って下さい。










まだ、オープン仕立てのドレス店。貴族用の高級品店では無いけれど、シンプルでセンスのいいデザインばかりだ。


ハンガーに掛けられた新品のドレスをショッピング。見るだけで楽しくて女心が満たされる。



「ダンバーグ公爵様の令嬢でしゅかあ。でも、何で御用達の店ではないのでちゅ?」



そりゃ、そうよねえ。貴族なら、王家御用達と名札の付いた店へ行くわ。だけど、問題があるのよ。



「いえね、噂に聞いたにょ。信用できる商会だってでちゅ(移っちゃった)」


「そうでしゅかあ、光栄でし。で、どなたからかちら?」


「ドキッー!ま、内緒話だから。オッホホホ。でもね、聞いたわよ。あなたの事。」


「何でちょうか?」


「あなたが、魔女って事よ。」


「えっ?どうして?」


「大丈夫よ、誰にも言ってないから。それで、お願いがあるの。共同パートナーのゴメスさんにお会いしたいんだけど。」


「ゴメスさんに、お話でちゅか。何の?」


「まー、安っ。これ、5着で銀貨1枚なの?買うっ!」


「あ、ありがとうでしゅ。1枚、サービスしまちゅ。」






「ミッション④」


遣り手の経営者がやる「D&P商会」と繋がる。その手を借りる為に。






後から屋敷に届けてもらえる事になり、可愛い異国の小物が気に入ったので侍女たちのお土産にした。


さあ、次はパトリシアの共同経営者ゴメスさんと話をしなくては。本当のトップは、彼だという噂だったから。



(とっても、頭の切れる男らしいって噂だったわ。もっと、人の話を聞いておけば良かった!)



後悔しても遅い。本体のビアンカは処刑されてしまったのだから、自分でやるしかない。


か弱い女には、力が無いのよ。それなら、利用できる事は利用しなくては。頑張れ、私ー!









王宮へ来ていたベネッタは、王妃教育の合間の休憩にジュリアーノ王子とお茶をした。最近は、待っていた彼と過ごすのが習慣になっている。



「そのドレス、見かけないデザインだね。君に、よく似合ってる。」


「ありがとうございます。ビアンカお嬢様が下さいました。お友達のお知り合いのお店で買われたとか。」


「止めてくれ、ビアンカの名前も聞きたくないんだ。」


「あ、申し訳ありません!」



名前を聞いただけでも、拒絶反応。ベネッタは、嬉しくなる。だって、自分が好かれてると実感できるから。



(王宮で、王子様と居られるなんて。まるで、私が婚約者みたいじゃない。)



できるものなら、ビアンカと変わりたい。私の方が王子様には相応しいもの。


諦めめいた夢が、こうして王宮で過ごす度に膨らんでいく。ずっと、こうしていたい。貧しい娘に戻りたくない。


願いが叶うなら、何だってやってしまいそうなくらいに。



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