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「完」Reした令嬢の私話  作者: さしみのつま
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( 5 )あんたなんか嫌いの執事は

ダンバーグ伯爵は、困った表情で娘のビアンカを見舞った。また、寝込んでいるのだ。



「私の星よ、痛むのか。可哀想に、何をしたのだ?」


「パパちゃん、痛くてタマラナイにょ。テーブルを持ち上げただけにゃん。」



ザード鼠を蹴っ飛ばした令嬢は、間接痛と筋肉痛でへこんだ。だが癒えたと思ったらテーブルを持ち上げて再び寝込んだ。


でも、苦しい息の下から訴えるのを忘れない。



「ビアンカ、もう駄目かもう。ごめんなさい、天使のお迎えが見えるにょん。こんな時、お友達が欲しいにゃあ。」


「お友達?学校のお友達か?」


「ううん、言えなかったけどお友達いないにょ。寂しい、1人で天国へ行くわあ。えーん。」


「ビ、ビアンカ!私の宝!お願いだから、行かないでくれ。父を置いて行くなー!」


「しくしく、お友達を雇うしかないにゃ。執事が、拒否るにょ。酷いのー、えーん。」


「執事は、この家を思っての事だ。彼が取り仕切ってくれるから私達は安心して暮らせるのだよ。」



坊っちゃん公爵は、執事の言うまま。執事が居なくては、何も出来ないのだ。だけど、何とか泣きついてベネッタを雇う事は許してくれる。


多分、執事のご機嫌とりをして話をつけるのだろう。


ベッドの中でビアンカは考える。



(このままじゃ、いけない。いけないのよ!)



このダンバーグ公家の血を絶やさないようにする前に、執事を、どうにかしなくちゃ。





「ミッション③」


ダンバーグ公爵家の影のボスである執事を処分するぞ!






長年、公爵家で働いている現執事トミー・デニスは他の貴族たちの評判も良い有能な男とされている。



(勤勉な男で裏表が、無いですとー?そいうのが、分かんねーのよ。私の経験からいうと。)



真面目で嘘のつけない男と安心してたら、欲望に嘘のつけない奴だった。二股も八股も、やり放題。


尋ね歩いて、呆れ果てて、お別れしましたけどねえ。あの執事の目が、本性を教えているのよ。見下した目が。



ボキッーー。



「あ、お嬢様?編み棒が、折れてます!」



ベネッタの声に、我に返るビアンカ。編み物をベネッタとやっていたのだけど、編み棒が折れたからお終いにしよう。


折れた編み棒を片付けるベネッタは、平気なふりしてるが怯えてる。執事にテーブルを投げ付けた事を聞いたからだ。怒らせないようにしようと。



「ねえ、ベネッタ。代わりに編んで。特別手当てを出すから(編み物は苦手)」


「いいんですか?お父様に差し上げる靴下でしょ。」



だって、私が編んだら靴下のつもりが穴のポツポツ空いた呪いのルーズソックスになりそうだもの。遠出する時のブーツの中履きと思ったのだけど。



「でも、貴女って上手だわ。何をさせても器用だから、貴女の方が令嬢に相応しいんじゃない?」


「とんでもない。そんな事、ありません。」



否定してるけど、自慢気な表情は隠せない。まだ、15歳の子供だから正直な反応をする。家が破綻しなければ、お嬢様だったもの。


本心は、そうなのかしら?だって、ビアンカの前の人生では、婚約者を奪い取る天敵でしょ。









やり直しを請け負った私だけが、知ってる未来。断絶するダンバーグ公爵家の家系を途絶えさせないのが重要なお役目です。



(うーん、どうしょうかな。パパちゃんにベネッタを雇わせる事は認めさせたけど。あの執事は、手強そう。)



自分でも驚く程の嫌悪感がムクムク。どうして、こんなに嫌いなの?スライムの本能が油断するなって言ってるみたい。



(スライムってモンスターだから、動物の勘は持ってるのよ。そうだ、スライムになってみよう!)



ベッドの中で考え事をしてると、パイでかの侍女が声をかけてくる。



「ビアンカお嬢様。それでは、下がらせて頂きます。おやすみなさいませ。」



笑顔で挨拶する侍女だけど、なーんか好きになれないのよ。事故の前はビアンカのお気に入りだったらしいけど。お世辞は、上手いのよねえ。


下女が来て部屋を片付ける間に、ビアンカは念じた。



(スライム、スライム。スライムになーれ!)



そんな言葉くらいでと思うけど、他に方法がおもいつかない。すると、頭の中に文字が出て来る。



『スライムになる方法』



それに従って、ビアンカはスライムに変身。シュルシュルーとベッドから出る。それでは、不味いと気がついた。



(あ、そうだ。身代わりを作る方法も教えてよ。)



要求してみるもんだ、教えてくれた。下女は偽物のお嬢様を見て椅子に座る。スライムは床を這って扉の隙間から出た。


久しぶりのスライムの身体。動かないビアンカと違って全身運動だから、疲れる。


(目眩(めまい)するしー。ちょっと、待って。私は、スライムよ。地獄のスライムは、皆、魔力を持たされてたの。じゃ、使えるとはず。魔力移動ー!)


運の良い事にスライムの魔力は残されていたのだ。ニュッニュニュッという全身運動から解放される。スライムは、床を滑るように魔法に乗って走って行った。








頭の中に出る屋敷の地図で執事の部屋を確認。一気にハイスピード走行。バビューン!


辿り着いたら話声。あれ、お客様?



「ねえ、新しいドレスが欲しいわ。」

「お嬢様に買わせればいいだろ。」



お嬢様に買わせろですって。意味分かんない。扉の隙間から忍び込む。そこには、あのパイでかの侍女が居た。


なんと、まー。執事の膝の上に座っていたのだ。驚く!



「あのドレス店に話をしておく。何時ものように、おだてて沢山の商品を買わせるんだ。払うのは旦那様だからな。値段を上乗せされてるのも知らずにな。」


「あなたって、天才ね。この屋敷のご主人様はお金の事は分からないから。執事に全て任せっきり。」



天井に、ぶら下がっているスライムはお嬢様。見てるのも知らずにイチャイチャし始めた2人。いや、グロいわ。


抱き合う2人を見たくないので、さっさと退散。それにしても、酷い話。誠実な召し使いのふりをして主人から金を吸い上げてたのね。


許せないわ。絶対に潰してやるから!



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