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「完」Reした令嬢の私話  作者: さしみのつま
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( 4 )癇癪もちのお姫さま

息子が主人の娘と行動している理由が分からないままのトーマス。御者席から、止めた馬車から降りて行く息子のイワンを心配そうに見送る。


イワンは、通りに立つ花売りに話かけた。



「ねえ、俺のお嬢様が呼んでるんだけど。」



何故、自分を呼ぶのか分からないまま、ベネッタは馬車へ男の子と歩き出す。窓から、私が顔を出した。



「ねえ、あなた。お花を買うわ。」



執事から、もらってるお小遣い。お財布から1番綺麗じゃない貨幣を出す。慣れない世界での金銭感覚が分からないけど、いいか。



「え、お釣りがありません。」


「いらない、あげる。」


「あげる?銅貨ですけど(レート銅貨1枚=円で5000円)!」


「ねえ、あなた。仕事したくない?雇ってあげるから、ここへ来て。」



家の住所を書いた髪を渡す。そして、馬車を出させた。気持ちいい、お金持ちのお嬢様だわ。


見ていたイワンが言う。



「お嬢様は、俺たちの親の平均収入って知ってる?月給が、あの銅貨5枚だよ。」



あのくすんだ貨幣の価値を教えられて驚く私。財布には、綺麗な銀貨や金貨が入ってるけど使うのが怖い!



「花が1本20円だよ。あの子、大儲けだな!」



私がイワンを使っているのを知ってる執事がお駄賃をあげてるはずだけど。あんた、幾らなの?



「俺は、執事のオッサンから1回ぶんで銅粒を2個だよ(レート=銅粒1個は500円)」



という事は、イワンの報酬より何倍も多く渡したって事?まー、知らないって怖いわねえ。反省!









翌日になって、執事のオッチャンが客が来てる事を教えに来た。



「ビアンカお嬢様に呼ばれたと、ベネッタ・ウェストンという女の子が来ておりますが。」



あらー、来たのね。待ってたわよ。



「連れて来てちょうだい。」


「お嬢様、あのような卑しい者をお会わせできません。報告はいたしましたが、帰らせます。」


「え、どーいう事よ?」


「お嬢様をお守りするのが、執事の勤めでございます。あしからず。」



なんですって、勝手に決めて追い返すってか?お前、何さまなんだよ!


主人の娘より、執事が偉いんかい。何で、勝手に決めるのよ。ゆるさねーぞ!ビアンカ、怒り狂う!








「ベネッタ・ウェストン視点」



ダンバーグ公爵家の裏口に待たされていたベネッタ・ウェストンは、ビアンカが現れたので驚く。


裕福な家では、召し使いが案内するものだ

。そういう生活をしていたベネッタは、よく知っていた。



「いらっしゃい、こっちよ。ティールームに、お茶お願いね。」



厨房に声をかけながら、小肥りの令嬢は先を歩く。ベネッタは気がついたが聞けなかった。



(ドレスが破れてるわ。どうしたのかしら?)



これだけの大きなお屋敷のお嬢様が、破れたドレスを着ている。妙だ。でも、袖や裾が破れてても平気なお嬢様。見ないふりをしよう。



「少し歩くけど、いいわよね。」



わざわざ出迎えてくれた令嬢が先に立って広い屋敷の中を歩く。すれ違う召し使い達が頭を下げて、連れている少女を値踏みした。


まめに洗って清潔にしているが、数枚しか持ってない服の1つ。1番、良い服なのだけど安っぽく見えて見下されている。顔が上げられない、悔しくて。


お嬢様は、1つの部屋の前で止まった。



「ここで、お話しましょ。えーと、何さん。お名前、教えてくれる?」


「私・・、ベネッタ・ウェストンです。」


「じゃ、ベネッタでいいわね。私は、ビアンカ・ダンバーグよ。」



運動をしてたかのような紅潮した顔が、ベネッタを見つめて笑う。どうしてか、母親の歳に近い人に思えてしまうから変だ(母親は31歳)


召し使いが、ワゴンでお茶のセットを運んで来た。久しぶりの本格的な紅茶の香り。いい紅茶の葉。懐かしくて嬉しい。


何時も、侍女が私の好きな紅茶の葉を用意してくれていたのに。思い出しただけで、泣きそうになる。



「お好きな物を、召しあがって。」



テーブルに並べられていく沢山のスイーツ。どれも、専属のパティシエが作った品。一般人には口に出来ない高価な物だ。



「ベネッタには、私の付き添いになって欲しいのよ。毎日、お家から通って来れる?」



名品の紅茶と絶品のスイーツ。そして、夢のような仕事。ベネッタは、喜んだ。幸運に巡り合えたのだと。








「ビアンカ視点」


ベネッタが帰った後、ビアンカは自室へ戻る。部屋の扉を開けた途端に笑顔が消えた。



「あの、クソ爺ぐわっーー!」



部屋の中のテーブルの残骸を片付けていた下男が、お嬢様の叫び声に驚いて部屋の外へ飛び出して行く。暴れてたのを見ていたからだ。怖さだけ。


テーブルを持ち上げて投げつけたのは、ビアンカ。逃げ回る執事を追いかけて捕まえようとした為に、ドレスが破れたのだった。



「自分だけが正しいと思ってる奴なんて、大っ嫌い!」



本当に執事を潰すところだった。やっても、良かったのに。逃げられたから、惜しいー。


前世の奥田 三沙子は、実は癇癪(かんしゃく)持ちであった。怒らせたら手がつけられない。管理職だろうと喧嘩してきた強者の怖いもの知らず。




『お嬢様、あのような卑しい者をお会わせできません。報告はいたしましたが、帰らせます。』




思い出しただけで、腹が煮えくり返る。何で、お前が決めるんだ?卑しいって、お前は神さまかい。許さないから!


絶対に潰してやる。他の事より最優先だぞー。ビアンカ、心に誓う。



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