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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ショートショート『アイドルは愛されたい』

作者: 川住河住

「クソ! 死ねばいいのに!」

「ちょっと。言葉遣い」

「いいでしょ。ここにはマネージャーしかいないんだから」

「よくない。普段から気をつけてないから週刊誌にあんなこと書かれるんでしょうが」

「悪くない! あたし悪くないもん!」

「そうね。あなたは悪くない。もし私が同じことをされたら殴ってたと思う。グーで3発くらい。そういう意味ではよく我慢したね。えらいよ」

「だったら抗議してよ。というか訴えちゃおうよ。精神的被害を受けたってさ」

「無理ね。うちの事務所の顧問弁護士よりもあっちの出版社の方が格上だから。裁判を始める前から負ける結果が見えてる。これからもこの業界で生きていたいんでしょ? だったらケンカ売る相手は見極めなさい」

「マネージャーはあたしのこと嫌いなんだ」

「わたしは好き嫌いで仕事しない」

「いじわる」

「あなたもアイドルならわかるでしょ。この業界ではスキャンダルなんてよくあることよ。野良犬に噛まれたと思って忘れて進みなさい」

「わかるよ。わかるけどさ。どうして付き合ってもいない男と熱愛報道なんかされなきゃいけないの。たまたま会って少し話しただけなのに、なんで恋人同士って決めつけるの」

「それが週刊誌の仕事だから。小さな事実をそれらしくでっちあげて大きく見せるのよ」

「なにそれ。週刊誌の記者ってそういう仕事が好きなの?」

「だから好き嫌いで仕事はできないわ。まあでも、そういうのを見るのが好きな人は多いからこそ成り立っている商売というのは事実ね」

「ああもう! ほんとムカつく! 人の不幸を喜ぶな! クソ! クソ! クソ!」

「だから言葉遣い」

「いいでしょ。ここにはあたしたちしかいないんだから」

「二人きりなら、もっとふさわしい言葉遣いがあるでしょう、と言ってるのだけど」

「好き嫌いで仕事しないんじゃなかったの?」

「……いじわる」

「冗談。こっちへおいで」

「あなた、アイドルよりも女優の方が向いてるんじゃない?」

「それこそ冗談。好きな人の前でしか見せられないよ、こんな顔」

「そうね。こうして抱き合っている姿も他の人になんか見せられないわね」

「ねぇ」

「なに?」

「週刊誌に情報提供したの……マネージャーでしょ?」

「なに言ってるの。あたしがそんなことするわけ……」

「あの日、あの時間、あの場所に行くことを知っていたのはあたしとマネージャーだけ」

「言いがかりはやめて。せっかく二人きりなんだから、そんなこと忘れて楽しみましょう」

「情報通りだ」

「なに?」

「週刊誌の記者が写真を撮った時にそう言ったの」

「あのバカ。なんでそれを……」

「やっぱりそうなんだ?」

「え? あっ……」

「マネージャーだけは、あたしを一人の女の子として見てくれると思ってたのに。結局、アイドルとしてのあたしの方が大事だったんだ」

「ごめんなさい。でもこれは……」

「いいよ。マネージャーは好き嫌いで仕事しないものね。小さな事務所のアイドルを売り出していくためには、ちょっとくらいのスキャンダルが必要だと思ったんだよね」

「ち、違う。これは、私たちの関係を隠すために……」

「だったら最高のスキャンダルをあげる。アイドルとマネージャーが毒入りチョコレートをいっしょに食べて心中する。とっても素敵だと思わない?」

「ま、待っ……」

「ほら。あなたの大好きな舌を絡め合わせるキスだよ。最期にたっぷり味わってね」

「やめ……んんっ!」


















「冗談」


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