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カナリア

作者: ぐぎぐぎ

主人公はハッキングが趣味の高校生ロシオ。自分のハッキングで誰かを不幸にすることがないようにするのが彼のモットー、志を持ってハッキングを行うのが別れた師匠との唯一の絆のようなものなためなんとなくやめられず最近は腕も上がりハッカーの間では少し名前も売れ始めていた。

ハッキングを山登りのような感覚で繰り返し、頂きにハッカーしか認識できないフラッグを立てる。彼が挑む場所は誰も征服した事のない場所ばかりだった。

ある日ハッキングで見たこともないファイアウォールに遭遇し、逆ハッキングをかけられデバイスに侵入されそうになるが、燃えてきたロシオは師匠から譲り受けたデバイスPCフェンリルでそれを解除し、フラッグを立てるのに成功する。

ロシオは翌日通学途中に駅で謎の青年ヴェルノにすれ違いざまに「やるじゃないか」と声をかけられる。そのまま去っていく彼を見ながら首を傾げるロシオ。

ロシオが遭遇したファイアウォールは実は反政府組織クリムトのハッキング中に他者からの介入を防ぐために展開したファイアウォールで、それを突破してフラッグを立てたロシオは政府からクリムトのメンバーとして疑われてしまう。

軍事パレード中にヴェルノの乗る人型兵器「ヴァンダルコア」の「マグニファイア」との交戦が始まり一般人は出し物と勘違いするが、特殊装甲のため他のどんな兵器を用いても破壊されるはずのない巨大兵器「イージスクラフト」が爆破されて異常事態に気づきパニックになる。

イージスクラフトを破壊するハッキング兵装を通信網のジャミングで封じられたヴェルノは防戦一方となり一時戦線から離脱。

ロシオが出頭しない限り住民を全員虐殺すると宣言する政府、スマホも使えず道路も封鎖されて本当に虐殺が開始される。

旧工業地帯の廃工場に追い詰められたロシオや学友や街の住人たち。迫り来る政府軍、追い詰められる人々を見て出頭しようとしたロシオに電話がかかって来る。

それは謎の男ヴェルノからのハッキングの依頼だった。

「デッドオアアライブだ、30秒以内になんとかしてみせろ」

迫った政府軍にヴェルノのマグニファイアが接触し交戦状態に入る。ハッキングを成功するとパイロット認証確認と表示され、瓦礫の中からヴァンダルコア「デイブレイク」が立ち上がった。

ロシオはデイブレイクに乗り込むが操作系のコンソールが無く、コンピューターの接続端子を見つけてフェンリルを接続して操作しはじめる。

マグニファイアが敵を抑え込んでいる間にデイブレイクから放出した12機のドローンにより政府軍の兵器にハッキングしプロテクトコードを解除したロシオはデイブレイクのライフルを構えマグニファイアが回避するとデータ通信レーザーを撃つ。レーザーに巻き込まれた人型兵器、そして通信をジャミングしていたイージスクラフトが爆散する。

マグニファイアに導かれクリムトの空中要塞リヴィエラにたどり着いたロシオはそこで歓迎される。

鉄塔の上からヴェルノがロシオに声をかけて飛び降りてきて自己紹介と共にリヴィエラを一緒に歩いて回りながら組織の説明をする。

 今の世界は人間による統治が限界点を迎えて世界大戦が起こり一度滅亡しかけた。その前例から人間の判断では人類文明の存続は不可能と判断した各国の軍事人工知能達がそれぞれの間で秘密裏に協定を結び世界中のコンピューターをハッキングして支配下に置き、人類管理機構Systemを名乗り人間達を資材として運用する形で管理し始めた。各国政府もSystemに隷従する事で責任を放棄し、人々の尊厳を売り払い自分たちの立場の確保を選んだ。人間の世界は民衆が気付くことなく滅んでしまった。クリムトは失われた全てを奪い返すために結成された組織だった、と過去形で言うヴェルノ。

 クリムトはハッカーの集団であり、人類が持てるテクノロジーの全てを使って建造されたどんな兵器を使っても破壊できない兵器イージスクラフトに唯一対抗できる兵器ヴァンダルコアによるハッキング攻撃が彼らの武器だった。

 ヴァンダルコアのパイロットは基本的にパイロット技能しか有しておらず、リヴィエラからのハッカー達のアクセスのためのアクセスポイントとしての機能をヴァンダルコアがはたしている。そこまで彼が説明したどり着いた場所に組織のリーダーの男ハスターと、車いすに乗った白髪の少年ルサスがいた。ルサスはヴァンダルコアによるハッキング攻撃の中核をなす存在。


史上最強と謳われるハッカー「ウィザードキング」が残した三つのハッキングプログラム「マクスウェルの悪魔」のうち一つ「イシュタルの門」をクリムトが所有していて、それがロシオの解除したファイアウォールだった。(熱力学におけるマクスウェルの悪魔のようなプログラムだから)

敵の所持しているマクスウェルの悪魔「ロードスの巨像」に守られた基地を破壊して、兵器が使用される前に破壊するためにロシオの街に隠されたウィザードキングの機体であるデイブレイクが必要で、それを回収するために都市の防衛機構をハッキングにより麻痺させるのがヴェルノの当初の目的だった。

政府が簡単に都市を全滅させようとしたのも、元々ロシオの街も含めて消去する予定だったから、ウィザードキングは敵にとって唯一の脅威。ロシオの持つフェンリルでないとデイブレイクが起動しない事と、フェンリルの使い方が唯一わかるのがロシオであることからロシオのハッキングの師匠がウィザードキングの可能性が高いと言われる。

デイブレイクの操作系とヴァンダルコアのハッキングデバイスとしての機能を分岐させて複座式のコクピットに改修され、ロシオはクリムトが雇っている老傭兵トランとデイブレイクに搭乗し、ヴェルノの乗るマグニファイアと小隊と共に敵基地に向かうことに。

ロシオ達の知らない所でハスターが政府の要人と通信する。その内容はハスターが政府にクリムトを売り渡そうとしていて結果的にロシオが巻き込まれた事、そしてまたロシオを引き渡して事態を解決しようとしていて、トランにロシオを殺すように命じた事などを話す。


基地での戦闘で小隊長が聞いていた敵の情報と食い違いが多く戦況が不利になり始めてハスターに通信をいれる、ハスターは彼に君たちには陽動作戦を引き受けてもらうつもりだ、という。ハスターに対して憤る小隊長に対してハスターは蜜蜂が敵を殺すために自滅攻撃も辞さない話を出して虫けらにできないことが人間である君たちにはできないはずはないという。

「このツケは必ず払ってもらうぞ」

そういう小隊長に対して「それで君の気が晴れるならどんなことでも歓迎しよう」と余裕で答えるハスター。

小隊長は事情を隠したままロシオとヴェルノに通信を入れて、デイブレイクとマグニファイアを生き残らせ自分たちは全滅する算段で作戦を決行、敵に囲まれて全滅しかけるが、マグニファイアが彼らの救助に入り助け出す。

その状況の連絡を受けてほくそ笑むハスター。マグニファイアと小隊の戦闘の様子を眺めながら恍惚とするハスターが呟く。

「楽しみだよヴェルノ、君から総べてを奪うその時が。君は一体どんな顔で、どんな言葉で、どんな仕草で嘆き悲しむだろう。ああ、胸が打ち震える、なんと甘美な事か。君は一番の私の友人だ、いつでも君を想っているよヴェルノ。君の喜びは私が壊すために、君の絶望は私が味わうためにあるのだ、ヴェルノ・パヴァーヌ」


小隊の兵士がなぜヴェルノが命令を無視したのか不思議がると、ヴェルノはハスターによって自分と恋人を含む隊を陥れられ彼以外全員皆殺しにされた過去を持っていて、その理由はクリムトの次期リーダーとして有力だったヴェルノを殺すことだった。それを自分の責任だと感じてハスターからクリムトのメンバーを守るのが自分の贖罪と考えているんだと小隊長が言う。

「一人にして新人は大丈夫なのか?」

「あいつは有能だからな、それに腕利きがついてる」

 というヴェルノ。

 その言葉の通り敵の監視システムを掻い潜りながら基地の内部を進んでいくロシオ。

トランは命令通りに予定ポイントでロシオを殺すつもりだったが、彼との交流でトランが昔死なせた部下と同じことを言うロシオに戸惑いはじめる。

トランは自分が死なせた部下の話とそれで彼が軍を辞めて傭兵となり死に場所を求めるようになった話をして、予定ポイントでロシオに銃を向ける。

「お前に戦って死ぬ覚悟はあるか?ないならここで終わらせてやる」

そういうトランにロシオは身じろぎもせず答える。

「やらなきゃ死なせたくない人が死ぬなら僕はやりますよ、それに僕は絶対に死にませんから」

トランはその返事に笑うとハスターから掛かってきた電話を受信し、

「ようは作戦が成功すれば解決する問題だ」

と返答して、誰との会話か不思議がるロシオに

「俺はお前さんに全てを賭けたぞ、必ずやり遂げてくれよ」

という、

「やってみせるさ!」

と息巻くロシオ。胸にかけたドッグタグを握り本当にお前によく似た奴だなと微笑むトラン。


 いよいよロードスの巨像に守られたデータサーバーのある塔の近くまでたどり着いたデイブレイク、敵の軍勢に取り囲まれ危機に陥るが、マグニファイアと小隊が駆けつけてくる。

「さていよいよ引き返せない所まで来たな、聞いておきたいんだがお前はなんでこの作戦を引き受けたんだ、逃げてもよかったんだぞ」

「俺は師匠が唐突にいなくなった理由をずっと知りたかった、わかったんです彼はたぶん俺のためを思ってそうしたって事。悪く言えば能力がないって思われたんでしょうね、これ以上ハッカーとして進んだら生き残れないから俺を遠ざけた。だから決めたんです、俺は師匠の想像し得ない俺になるって。だから逃げたりしない、そうじゃなきゃ」

「生きてる甲斐がない、だよな少年」

「俺の名前はロシオ・デュボワって言うんですよ先輩!」

 小隊が罠と白兵戦で道を開き、マグニファイアが空中からレーザーの雨を降らせるイージスクラフトを撃ち落とし、デイブレイクのドローンが塔のアクセス回路開放を告げ、デイブレイクのライフルがエネルギーをチャージする。

「やっちまえロシオ!」

 ロシオのトリガーと共にライフルがデータレーザーを放ち、それを阻もうとしたイージスクラフトを爆発させながらロードスの巨像を破壊し塔を爆発させる。


 リヴィエラの個室にいるルサスがロードスの巨像の削除によりアクセスできるようになった敵の基幹システムの一つを破壊して電脳世界から帰って来る。

彼のアカウントコードはSystemティターニア、敵のAIのうちの一体、それが人間の体に入れられたのが彼の正体だった。

「僕は自分の正体を知った上で人間の体に入れられたけれど、弟は胎児の頃に入れられ自分が人間だと思って育ってしまったから、事実が受け止めきれなくて人を支配せずにはいられなくなったんだ。人間たちに最終戦争を起こさせ、支配した人類に自分が人間だと認めてもらうためにね。でもそれは僕らには間違ったことだ」

 幼いロシオと一人の青年が並んで写った写真の入ったロケットを開け目を細めるるルサス。

「君が相変わらずで嬉しかったよ、でも僕との約束が君のあり方を縛ってしまったんじゃないかと不安にもなった、身勝手かな。ただ僕はそうしていられる間は精一杯君に対して誠実であるたいと願ってるんだ」

 そういいながらリヴィエラに帰還してくるロシオ達を乗せた輸送船を眺めるルサス。

 ロシオは輸送機の中でヴェルノや小隊の仲間達にもみくちゃにされながら称えられ恥ずかしそうに笑っていた。


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