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序章8

そして、翌日になり、月玉を受け取るために神殿に行くことになった。


朝早く、まだ夜も明けないうちに起こされて冷たい水の張った金属製の桶の中に服を脱がされた後に放り込まれる。

今はまだ、夏に近い初夏の季節だったらしいので良かったけど。それでも、白い布を渡されて体をこれで洗うようにいわれる。ちなみに、浴室にいたのはゾフィさんとジーナさんだった。

ゾフィさんはあたしに厳しい顔つきでこういってきた。

「…セダ様。神殿に行くまで、決して話してはなりません。お体を洗い終えた後は巫女の正式な白の衣装に着替えていただきます。神官長様の元には神官の方々が案内してくださいますので。わたしどもはこちらでお待ちしていますから、儀式が終わったら、一度は帰ってきてください」

あたしは返事をする代わりに頷いた。

ジーナさんも頷くと、続けてこう言った。

「…神殿にお移りになられると聞いておりますので。あわただしいですが、このお部屋にあるお衣装や調度品などで必要な物をセダ様に確認をしておきたいのです。それから、シェーンに行かれる為の準備もしなければいけませんし。忙しくなりますから、その心づもりでいてください」

長々とした説明を終えるとジーナさんが笑いながら、あたしに大丈夫ですよといってくれた。それにも頷きながら、あたしは一心不乱に体を洗った。

氷のように水は冷たかった。


体を洗い終えると、真っ白な丈の長い巻頭衣に近い上着とかかとの丈までのスカートを着せられた。その間、あたしは始終、無言のままでいた。

ジーナさんがあたしの肩を軽く叩きながらこう言ってきた。

「セダ様、月玉を受け取られたらお別れですね。短い間でしたが、ありがとうございました」

あたしは笑いながらジーナさんに頷いた。そして、両手をそっと握った。

ジーナさんも笑いながら握り返してくれる。黙ったまま、別れの挨拶をしてからドアが鳴った。 ゾフィさんが出ると入ってきたのは神官だった。

「…セダ様、わたしは上級神官のセドと申します。月の神殿までは我々が案内しますので。付いてきてください」

あたしは頷いた。セドさんと他に二人の神官がいた。

「こちらは中級の神官の者たちです。では、行きましょう」

あたしは布で出来た靴で部屋を出てセドさんについて行った。



長い廊下を歩き、複雑に入り組んだ王宮から出た。入り口の扉をくぐり渡り廊下を進む。

そして、白い大理石で造られたローマやギリシャにありそうな神殿にたどり着いた。

「こちらが月の神殿になります。正門からだと目立ちますので。西の門から入ります」

セドさんが簡単に説明をすると西の門の大きな扉がゆっくりと開けられる。

それをくぐり、中に入った。

一歩ずつ大理石を踏みしめると上を見上げて驚く。天井には金髪の若い男性が剣や槍を持って勇壮に戦っている場面が描かれていた。そして、隣には黒髪に琥珀色の瞳の美女が白い宝石で作られているらしいペンダントを持って、男性をサポートしている姿もある。

向こうには角を持った巨大な牛のような生き物や狼によく似た怪物が牙をむいて襲いかかろうとしている絵もあった。あたしは朝の光の中、浮かび上がる絵に圧倒された。

「これは初代の王が魔物を太陽の剣で倒している場面だといわれています。隣の女性は妹君で共に戦っていますが。手に持たれているのが月玉です」

へえと言いそうになって慌てて、口をつぐむ。セドさんはあたしに笑いかけながらではどうぞとあたしを奥に促した。目の前にあった扉を開けると、向こうは礼拝堂らしかった。

「こちらが月の神殿の礼拝堂になります。月玉を受け取る儀式まで後もう少しなので、しばしお待ちください」

あたしが頷くとセドさんは礼拝堂を出て行ってしまった。中級神官の人たちとしばし待つ。

互いに話すこともないまま、静かな中であたしは考えた。

異世界に来てやっと、二日が経った。その間にいろいろとあった。

まず、裸で飛ばされて気が付いたら、アデル様の部屋のベッドの中にいて。そして、異変に気づいたスーリアさんがやってきたのだった。

いきなり短剣突きつけられたり。

その後意識を失い、目を覚ました後でアデル様に詰問をされて。いろいろと説明して、駆けつけた神官長たちを紹介された。

その後、翌日は陛下にお会いして、巫女と認められたんだっけ。

密度の濃い二日間だったなと思ったのだった。

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