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序章7

陛下は話を終えると横に控えていた神官長、ウェル様に視線をやった。


「巫女、わしが認めたからには明日にでも月の神殿に向かうといい。時は急を要するのでな。早めに神官長より、宝玉を受け取られよ」

「…そうですぞ。ルシア神殿とも呼ばれるあちらでわたしめがあなたに月玉をお渡しいたしましょう。そして、魔物を鎮めるためにアデルハイド殿下に付いて、カルーシェ国の都の北部にある結界の境目に向かわれてください。境目は確か、シェーンという地名で呼ばれています」

「早速、巫女としての役目を果たせということですね。月玉を使えばいいんですか?」

神官長からいわれて、混乱する頭で考えながら、あたしは返答をした。ウェル神官長は満足げに頷く。

「その通り。月玉と剣を使えば、境目に新たな結界を作れるはず。ただ、そのためには剣を巫女殿が持ち、祈る必要があります。そして、巫女殿。あなたはこれから、清らかさを求められるでしょう。魔物がいなくなり、国の結界が完璧になる時までは神殿が保護する事になりましょう」

ウェル神官長は言い終えると周りの男性陣に目線を送った。陛下も右隣に控えていたアデル様や知らない男の人たちを睨みつけた。

「…アデル、それから、王太子にヒュー。お前たち、巫女に手を出すんじゃないぞ」

すると、王太子と呼ばれた男性は肩をすくめた。

髪は陛下と同じ、栗毛色で瞳は薄い赤茶色をしている。

もしかしたら、ロイ王妃は紅い目をしているのかもしれない。あたしがそう考えていると、王太子様が答えた。

「わかりました。父上の命令とあらば、従います」

穏やかそうな声でそこが低いアデル様とは違うなと思った。

「…頼むぞ。フェルディナン、そなたやアデルハイド。二人が目を光らせておいてくれ」

陛下がそういうと、ヒューと呼ばれた男性が不満げに口を開く。

「父上、俺は抜きですか?」

「…そなたは昔から、遊び人だったろうが。信用されていると思っていたか?」

「…思っていません。だとしても、ひどすぎやしませんか」

「そなたに巫女を任せていたら、たちまち、貞操の危機になりそうだからな。まだ、アデルやフェルの方が信用できる。まあ、ロイもそういっていたが」

すると、男性はぐうの音も出ずに黙り込んでしまう。あたしはあまりの言葉に唖然となってしまった。

息子さんなのに、かなり辛口なことをいわれている。普段から、女性関係はだらしがないのだろうか。

「…とにかくだ。巫女、今日はさぞかし、お疲れであろう。部屋へ帰ってゆるりと休まれるがよい。明日には早速、月玉の儀式を行うから、そのつもりでいられるように」

「わかりました。謹んでお受けいたします」

あたしは陛下に深ヶと頭を下げた。


部屋に帰った後、あたしはドレスを脱ぎ、コルセットをはずしてもらった。

部屋着に着替える。カルーシェ国はあたしの世界の十八世紀か十九世紀のヨーロッパにそっくりな異世界だと感じた。

それは置いておくとして、あたしは部屋着用の足首まである薄いベージュのワンピースに同じような色のガウンを羽織っている。

部屋履き用の靴とシルク製だろうか。手触りの良い靴下を履かせてもらい、ソファーに腰掛けて、くつろいでいた。

側には侍女のジーナさんとゾフィさんの二人がいる。ジーナさんは黒髪と黒い瞳、色白のミステリアスな雰囲気の美女だ。けど、穏やかで見かけとは違い、物腰柔らかな人である。

ゾフィさんは茶色の髪と緑色の瞳をした可愛い系の女の子。大きい二重の瞳と丸い輪郭の顔が印象的だが、なかなかの気が強い感じでしっかり者の雰囲気を持っている。

といっても、部屋へ帰った後、スーリアさんから聞かせてもらったのだけど。教えてもらったの間違いか。

そして、驚いたのがジーナさんとゾフィさんの年齢だ。

何と、ジーナさんが二十歳でゾフィさんは十八歳だったのだ。あたしより、かなり年下だったと教えてもらった時はショックを受けましたよ。スーリアさんに至っては十九歳だった。

黄昏てしまったのはゆうまでもない。

『セダ様も二十二歳には見えませんね。年下だと思ってました』

そういわれて、スーリアさんを睨みつけてしまったあたしに周囲は慌てただろう。けど、スーリアさんは涼しい顔で笑いながら、一礼して部屋を出て行った。

よけいにムカついたあたしは後でクッションに怒りをぶつけて、やり過ごした。

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