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異世界転移

初めに見てく下さってありがとうございます。これから一生懸命皆様に楽しんでいただける物語を書いていきますので応援よろしくお願いします。

処女作なので至らない点などもありますが今後とも宜しくお願いします。

 俺の名前は竜崎慎一(りゅうざきしんいち)、都内の高校に通う高校三年生……だけど現在は森の中を逃走中。


 逃走と言っても警察に追われている訳でも罪を犯した訳でもない。

 

 そもそもあれは人ではないし、此処は日本でもない。

 だが、人のように二足歩行で駆け回り。

 奴らは俺の背後に迫っている。

 

 なぜこんな状況になってしまったのだろう。

 足を止める事なく、遡る事五時間ほど前を振り返る。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆




 高校三年に上がり一ヶ月が過ぎた五月の中頃。

 いつも通り朝学校に来て三年三組の自分の席に腰を下ろすと、前の席の青木が嬉しそうに話しかけてきた。


「竜崎、昨日の魔法少女(アニメ)観たか? もうマジ最高だったよな!」


 教室には女子も居るというのに三次元には興味がないらしく、馬鹿でかい声で親指を立てながら俺に同意を求めてくる。

 青木拓斗(あおきたくと)は校内でも知らない人はいないほど有名なキモヲタ、通称肉ダルマ。


 青木との出会いは思い出したくもない黒歴史だ。

 というのもこの高校に入学して直ぐの自己紹介の時、まだ俺は暗黒時代を生きていた。


「我が名は竜崎慎一。というのは仮の名であり、この身体も仮初の肉体でしかねぇ、俺様の左目にはかつて世界を恐怖と絶望の淵に追いやった魔王が封印されている。従って俺様の左目には魔王の力が宿り、俺様は最強の存在になっちまった!」


「ま、まさか……お前があの魔王を封印した魔眼の男なのか! 俺は聖魔協会から派遣された観測者! お前を見定めさせてもらう!」


 入学初日の自己紹介で中二病という名の病に犯されていた俺の挨拶に、ノリノリで絡んで来たのがこの青木。

 あれから二年、俺はもう中二病からは卒業したんだ。


 だってもう高三だ、受験だってあるし生まれて初めての彼女だって欲しいんだ。


 とはいえ数少ない友達を無下に扱い友達いなくなるのも嫌なので、アニメについて語り合っていた。

 確かに病は克服できたがアニヲタからは卒業できていない、する予定もない。


 なので周囲(女子)の目は気にはなるが、今は気にしないことにする。


 一時限目が始まるまで青木と魔法少女(アニメ)について語り合い、一時限目を受けていたら突然教室の窓から光輝く火の玉みたいな直径30cm程の光の玉が教室に入って来た。


 教壇に立つ教師も、俺もクラスメイトも呆然と光の玉を見入っていると、光の玉は強烈な輝きを発し教室中を光で包み込み。

 眩しさのあまり目を伏せると意識が遠のいていく。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 どれくらい意識を失っていたのだろうか数秒、数分、数時間、判らないがまずは状況確認だ。


 俺は硬くざらつくアスファルトの上に寝そべっているようだ、地面に手を突き起き上がり周囲を見渡すと、俺と同様に意識を取り戻したクラスメイト達の姿が確認できた。徐に立ち上がり辺を見渡すクラスメイト達、皆一様に状況が把握できていないようだ。

 状況が把握できていないのは俺も同じなんだが……。


 俺が辺を見渡し呆然としていると、俺のすぐ近くで意識を失っていた青木も、意識を取り戻しゆっくりと起き上がり辺を見渡すと、何か納得したように頷き俺に歩み寄ってきた。



「なぁ竜崎、ここって異世界なんじゃないのか……」


 青木は何時に無く神妙な面持ちで前方を指差し、俺も可能性の一つとして考えていたが決して口にはしなかった答えを言い放った。


 だってそうだろ? 異世界転移なんてそんな漫画やアニメで使い古されたテンプレが俺の身に起きるなんてありえない。


 俺じゃなくても実際にそんな事が起きても信じる奴の方がどうかしてる。

 とはいえ青木が異世界なんじゃないかと指摘した事も強ち間違いではないと思う。


 というのも青木が指差した方向に、外壁のような巨大な壁がどこまでも続いており、その光景に俺は呆気に取られていた。

 呆気に取られている俺を心配したのか、青木は俺の肩を両手でしっかりと掴むと、俺の瞳を覗き込みニヤリとやらしく笑みを浮かべた。


「こんな時に何面食らってんだ! しっかりしろ。こんな時だからこそ竜崎、お前の力が必要になるんだ。」

「俺の力が必要ってなんだよ?」

「なに寝ぼけたこと言ってんだ、お前は魔王の力をその左目に宿した魔眼の使い手だろ」


 な、なに言ってんだこいつ。まさか二年前の自己紹介の時の俺の黒歴史を言ってるんじゃないよなこいつ、ってか絶対その事だよな。

 俺が青木の言葉に動揺している間にクラスの皆が騒ぎ始めた。


「つか、ここどこだよ!」

「私達なんでこんなところにいるの? 教室で授業受けてたはずでしょ」

「誘拐? 拉致? どうなってんのよ」

「家に帰れるの?」

「俺は帰るぞ」


 皆混乱してるんだ。

 無理もない、俺だって何が何だかわからずどうしようもなく立ち尽くす事しかできない。

 騒ぎ始めた者達は好き勝手に動き出そうとしていたのだが、声を張り上げ皆を冷静に落ち着かせようとする生徒がいる。


「みんな一旦落ち着くんだ。此処が何処だか分からない以上勝手に動き回るのは危険だ、みんな一緒になって行動するんだ。先生もしっかりしてください大人は今先生だけなんですから」


 騒ぎ始めていた者たちも彼の言葉を聞き、互いに目を合わせ頷き、彼が言うのだから一度落ち着こうと冷静になった。

 その生徒たちの姿を見て、教師の山中茂樹(やまなかしげき)は嘆息した。


 冷静に声をかけ皆を落ち着かせたのは、成績優秀スポーツ万能、おまけにイケメンで校内一のモテ男矢野祐也(やのゆうや)


 性格もいいらしく男女共に好感度抜群ときた、まぁ俺の矢野に対する好感度はそこまで高くない。

 何故ならそんな少女漫画の主人みたいな奴は個人的に好まないからだ。


べ、べつに嫉妬とかじゃないんだからねっとツンデレぶってみる。


 矢野の両隣には矢野に絶対の信頼を持つ女子生徒が二人立って居る。

 坂下美穂(さかしたみほ)五月沙也加(さつきさやか)だ、この二人は校内でも矢野と一緒に居るのをよく見かけていた。


 坂下美穂は金髪縦ロールのお嬢様キャラ、つっても俺がそう勝手に思ってるだけで、本当にお嬢様かなんて知らない。そもそも話した事もない。


 五月沙也加はショートカットがよく似合うスポーツ女子って感じだ、スポーツやってるのかは知らんが。


 まぁそんな事はいいとしてこの状況だ、教師の山中より優秀なのは一目瞭然だ。

 俺達は矢野の提案により巨大な外壁に沿って移動を開始した。


 何もない荒野に立ち尽くしていても仕方ないからだ。

 仕方ないというのは早い話が俺達は水も食料も持っていない。

 立ち尽くしていたって助けが来るとは限らない、なら考えるより動けだ。


 この巨大な外壁はどう見ても自然にできたモノじゃない、明らかに人為的に造られた壁と云える。


 俺や青木の知識が正しければ、この石の壁は街を守る為の防壁だ。

 だとすれば壁の中には街があるはずだ。

 ただひとつ気になる事があるとすれば、なぜ街を外壁で守る必要があるのかだ。


 つい考えを口にしていたのか、隣を歩く青木が応えてきた。


「そんなの簡単だろ。戦争中なら四方から敵が攻めて来ないように、或は魔物が襲って来ないようにする為だ」

「まぁそうなんだけどな」


 分かっているんならなんで気になるんだと不思議そうに俺を見る青木。


「つまり俺や青木の考える事が正しければ、それこそ此処は異世界になってしまうんだ」

「まだそんな事言ってるのか? 魔眼の使い手ともあろうものが」


 ニヤリ顔で俺の黒歴史をイジってくる青木に、イラッとしながら歩いていると、前方を歩く矢野達が振り返り、こちらを見て前方を指差し声を上げた。


「「門が見えるぞ」」


 矢野達の声を聞き、俺は小走りで矢野の近くまで駆け寄り、矢野が指差す方角に目をやると、矢野の言葉通り外壁内に入る為の門が見える。

 立派な門には門番らしき男が二名立っている。


 街に続く門を見ると皆一斉に駆け出し、門の近くで足を止めた。


 兵士と思われる門兵二名の手には、身の丈以上ある槍が握られ、その腰には剣を提げ、鍛え抜かれた屈強な身体を一回り大きく見せる甲冑を身につけている。


 ゲーム等に登場するいわゆる雑魚兵そのものだ。とはいえここは現実、実際に目にする兵士は雑魚とは程遠く強そうだ。

 一発でも殴られれば無事ではすまないだろう。


 そんな事を考えている間に、俺達の中で唯一の大人である山中が門兵と話をし、なんと街の中に入る許可をもらっていた事に驚くと同時に、少し疑問に感じた。

 俺は街へ入る門をくぐるまでに山中に近づき、その疑問を質問した。


「先生、門兵の人とは日本語で話したんですか?

 それとも別の方法で? 例えば英語とかジェスチャーとか」 

「いえ、普通に日本語が分かるみたいですよ。やっぱり此処は日本なんですかね」


 日本な訳ないだろと思ったもののあえて口にしない、だけど日本語が通じるのは有難い。自慢じゃないが俺は語学、つまりは英語が苦手なのだ。


 語学の中でも簡単と云われている英語が苦手な俺が、仮にもここが異世界だとしたら、異世界語を覚えなきゃいけないなんてなったら俺の心が折れてしまう。


 なぜ日本語が通じるのかは分からないが、ここが異世界だとするのなら転移による影響なのか、或は主人公補正的なやつなのか。


 まぁ後者はないだろ。

 後者だとしたら主人公多過ぎるだろ。


 なんせひとクラス41人、山中を含めたら42人も居る。

 いくらなんでもそれはないな。


 門を抜けるとそこは、活気に溢れた中世ヨーロッパ風の街並みが広がっていた。


石造りの建物に行きかう人々、品数が豊富な青果店、美味しそうな香りを醸し出し串肉などを焼いている露天に、鼻先にツンと香るアルコールの匂いを漂わせ、昼間からご機嫌な声を通りに響かせる酒場。


 先程の門兵が所持していた槍や剣や鎧などの武器や防具を売り出している店等が立ち並び、まるでファンタジー映画の世界に迷い込んだみたいで、皆言葉を失いキョロキョロと辺を見渡しながら歩いている。


 無理もない。こんなの生まれて初めて目にするんだ、なんて思っていると俺の後方を歩く青木が歓声を上げた。


「見ろよ竜崎!」


 俺たちの進行方向には大通りがあり、その大通りには商人らしき人々が竜車を引き、大通りに面した向こう側には広場が見える。


 広場の中心には巨大なオブジェクトが設置された噴水が見え、噴水の周りには腰を下ろせる石段があり、杖をついた老夫婦が腰を下ろし談笑している。


 青木の視線の先には、広場を通過する獣の耳を生やした女性の姿が見える。

 モデル並みの抜群のスタイルに、ヘソ出しファッションから見事なくびれを惜しげもなく披露し、小ぶりなお尻からはしなやかな尻尾が生えた綺麗な獣人の女性が通り過ぎていく。


「獣人……亜人か」

「だよな、そうだよな! あれはコスプレなんかじゃないよな、この異世界には亜人も存在するんだ」


 今日一番の興奮に鼻息荒く瞳を輝かせている青木は無視して、ここが異世界なのはほぼ間違いないな。

 元の世界に帰る方法があればいいんだけどと、物思いにふけていると、異世界(ここ)に来た時には帰りたいと騒いでいた者達も、今ではすっかり修学旅行気分ではしゃいでいる。


「見ろよ恐竜みたいなのが馬車引いてるぞ」

「馬車って荷車だろ? 馬が引いてるんじゃないんだから」

「そんな細かい事はどうでもいいんだよ」


 一際大声ではしゃいでるのは鮫島秋人(さめじまあきひと)。身長が190cm程あり、中学時代はその体格を生かし地元で名を馳せていたという不良で、ウチの学校で一番の問題児にして暴君だ。


 その鮫島の恥ずかしい間違いを指摘したのが白川昇(しらかわのぼる)。コイツも中学時代から鮫島と連み、地元で悪逆非道の限りを尽くしたと風の噂で聞いた事がある。


 まぁ一部では、鮫島のイソギンチャクとも言われているみたいだが詳しくは知らない、知りたくもない。この二人は入学して直ぐの一年の頃、俺をパシリ君二号と呼び散々こき使ってくれた糞野郎だ。


 二年に上がり別々のクラスになって喜んだのに、三年でまた同じクラスになった、ちなみにパシリ君一号は言うまでもなく青木だ。

 嫌な事を思い出していたら広場に辿り着き、山中が皆を集め注目と言って、右手を上げ話し始めた。


「皆さん今から冒険者組合と言う場所に向かいます。先ほどの門兵の方から聞いたのですが、国籍も在住許可も持っていない私達は、組合に属さなければならないようです。信じがたい事ではありますが、ここは日本ではないようなのです。まず組合に行き登録を行い、滞在を認めて貰いましょう。組合では私達のような方に仕事も紹介してくれるらしいので、自衛隊の救助が来るまでの間、働いて食べる物を買わなくてはいけませんから」



 禿げたバーコドヘアーから汗が流れ、それをポケットから取り出したハンカチで拭いながら、冷静を装い不安を見せてはいけないと、今ここにいる大人は自分だけなのだからと、彼らを安全に自宅まで送り届けなければいけないのだと、今にもその責任という名の重圧に押し潰されそうになりながら、気丈に振舞う姿は教師の鏡のようだと思う……まあ多少抜けてるところと頼りなさそうな所はあるけど。


「自衛隊の救助ってマジで言ってんのか、それに山中の奴冒険者組合で働くって意味わかってて言ってんのかな」

「ああ、お前の言いたい事は大体わかるよ青木、ただ山中は六十手前なんだ、きっとゲームなんてやらないし、アニメとかラノベも読まないから分からないだけなんだ。分からないのにテンパりそうな現状でも、俺達に不安を与えない為に気丈に振舞っているんだよ。それが分からないお前じゃないだろ。」

「ああ、そうだな……すまん」


 青木と話している間に、矢野達が冒険者組合の所在を、噴水の石段に腰掛けていた老夫婦から教えてもらったらしく、俺達は矢野達の案内で冒険者組合に辿り着いた。


 冒険者組合の中は広く、入口から真っ直ぐに伸びた通路の奥に、窓口が三箇所設けられている。


 右側の窓口は組合に仕事を依頼する人用、つまり来客用窓口。

 真ん中の窓口は冒険者達に仕事を紹介する依頼受付用窓口、左側の窓口は仕事が完了した時に使う支払い用窓口。

 それぞれ用途に分かれて設けられている。


 更に通路の左右には円卓が並べられ、売り子の女の子がちょっとした飲食を販売している。

 なんて眺めていたらまさに今、大柄な男達数名が『エールをもらえるか』と女の子を呼び、ビールに似た飲み物エールを購入している。


 男達は購入したばかりの杯を掲げ、乾いた喉に喉を鳴らしながら流し込んでいる、まるで立ち飲み屋のようだ。

 更に左側の窓口付近の壁には手配書が貼られ、その奥には二階へと続く階段がある。


 俺達は取り敢えず右側の来客用窓口に行き、窓口に座るお姉さんにここに来るまでの経緯を説明した。信じてもらえないと思っていたが、山中が丁寧に説明すると、あっさりと受け入れるので不思議に思っていると、タイミングよく矢野が受付のお姉さんに質問し始めた。


「ひょっとして俺達みたいな異世界人て珍しくないんですか?」


 お姉さんはニコッと笑みを浮かべ質問に応えてくれる。


「この世界では異界送りに遭遇し、希にあなた方のように別の世界から人がやって来るんですよ」

「「!」」


 皆一様に驚くと同時に坂下が咄嗟に問う


「帰る方法はあるんですの?」

「申し訳ございません。私は存じ上げません」


 俺達の落胆した表情を見て、申し訳なさそうに言葉を発したお姉さん。


「しかしこの世界は広く、異世界への行き方を知る者も居るかもしません。なので帰れないと決まった訳ではありませんよ」


 お姉さんの優しさで俺達に漂う悲壮感は少し和らいだ。


 そもそもそんなに都合よく元の世界に帰れるなんて思っていない。だからそこまで落ち込む事じゃない、想定の範囲内だ。

 それに本題はそれじゃないんだ、皆聞きそうにないから俺が聞こう。


「それでお姉さん、冒険者組合に登録ってどうすればいいの? ってか登録ってしないとダメなの?」


「はい、異世界人であるあなた方は、国籍もなければこの街の在住許可もありません。従ってこの街に留まる事も、そもそも街の門を通る事も容易ではないのです。おそらく門兵の方の計らいにより、異界送りに遭われたあなた方への配慮で、今回は厳しい審査もなく容易に門を通れたのでしょう。しかし冒険者組合、通称ギルドに登録していただくと、ギルドが登録者様の身分を証明する形となり、世界中のギルド加盟国の街へ出入りが自由となります。また無国籍の方はこの国では働き先もギルドしか選択肢はないかと。」


 考える間でもなくギルドに登録しかないな、ってなれば善は急げだ。


「じゃあ登録してもらえますか?」

「喜んで」


 俺達は全員、お姉さんに言われた通り書類に名前を記入し血判した。

 まあ血判と言っても針でチクッとするだけだった。


 これでようやく冒険者組合、通称ギルドへの登録が終わり、最後にスキルリングという腕輪をお姉さんから受け取り、腕輪の説明をしてくれるらしいので話を聞く。


「今あなた方にお渡しした腕輪は、紛失や破損は出来るだけ避けて下さい。腕輪はあなた方がギルドに加盟した証になり、あなた方の身分を証明する唯一の手段なのです。更に魔物(モンスター)を狩ると魔気(まき)と呼ばれるエネルギーが腕輪に蓄積され、魔気の総量に応じて支払い窓口で換金されます。

 また、腕輪の中心にあるボタンを押して頂くと、あなた方御本人の使用可能スキルや魔法、ユニークスキル、加護等がありましたら表示されます――」



 その他にも様々な説明を一頻り受けた俺達は、各々腕輪の中心ボタンを押し、スキルを確認し始めた。


 俺は内心かなり昂っている、だってあのお姉さんはスキルや魔法、加護なんてワードを出すんだぜ、元中二病の俺が興奮しないはず無いだろ。


 まぁ今は冷静を装いながら、左腕に装着した腕輪のボタンをドキドキと高鳴る鼓動を抑えながら押してみる。


 ポチッとな。


 腕輪のボタンを押すと腕輪から強い光が発せられ、光は映像を投影し半透明なスクリーンが映し出された。


 光によって映し出されたスクリーンは、横40cm縦20cm程である。スクリーンには自分自身の3D全身が映し出され、タッチパネルのようにスワイプさせると360度回転する。まるで俺自身がゲームのキャラクターみたいだった。


 更に俺キャラの頭上には、御丁寧に竜崎慎一と表示された。

 右端に矢印マークが有り、そこを押すと次の項目が上から順に出てきた。


『スキル』『魔法』『ユニークスキル』『加護』


 取り敢えず上から順に見ていこう。まずは項目の中のスキル一覧を押し、スキルの確認をするが、何もない……なんで? 一瞬焦ったが冷静に考えた。


 ユニークスキルとスキルが別モノならスキルは早い話ノーマルスキルって事だ、という事は後で覚えたり出来るって事だからそんなに慌てる事でもないな。


 次は魔法一覧を押してみたのだが、やはり何も表示されなかった。

 だが想定内だ、スキルがスキル一覧に表示されない時点で、魔法も高確率で表示されない事は容易に推測できる。


 これはゲームに似ている。ゲーム等でレベル1の冒険者が始めからスキルや魔法を覚えていないのと同じだ、ゲームではレベルが上がる毎にスキルや魔法を覚えていくのだけど、腕輪の機能にはレベルやステータスの表示は一切ない。


 或は腕輪には表示されていないだけで、実際にはレベルもステータスも存在するのかもしれないが、この世界の事を何も知らない現時点では確認のしようがない。


 仮にレベルが存在しないのなら、スキルや魔法は誰かから教わる必要があるのだろう。今は考えても仕方がない。


 問題は次のユニークスキルだ。ユニークとは独得や特異という意味だ。

 つまりはその人が初めから兼ね備えている才能、或はその人の個性、体質によって生まれた力、能力だ。


 才能は誰かから教わる事もできない唯一無二の力だから、ノーマルスキルや魔法とは一線を画す。最悪ユニークスキルもないという事か。


 もしくは後々才能が芽生えて手に入る事もあるのだろうか。

 分からないが、このユニークスキル一覧に何も表示されなかったら悲惨だ。

 深く息を吸って吐き、息を整え、心と体を落ち着かせながら、嫌な予感で微かに震える人差し指に願いを込めて、項目内のユニークスキル一覧をタップし、ユニークスキル一覧を開いた。


 ユニークスキル一覧『魔眼』『中二病』


 っておい、俺の黒歴史まんまじゃねーかよ。

 何の嫌がらせだよ、魔眼は良いとしてもユニークスキル中二病ってなんなんだ。


 中二病って才能なのか、そんなこと言い出したら魔眼も意味がわからないけど……基準が分からない、能力についても何も記載されていないから、何も分からないけど、何もないよりはいいに決まってる。


 最後は加護だ。加護って神や仏が力を与え守ってくれる事だよな。

 俺は無宗教なんだよな、こんな事になるならなんか信仰してのに、と思ったけどゲームとかだったら他にも精霊や天使、悪魔とか他にもたくさんあるからあんまり関係ないか。まぁ見ない事には始まらない。


 という事で最後の項目の加護の一覧を開く。


 加護『魔王の加護』


 魔王の加護ってなんだ? クソッ、色々考えたけど結局、意味不明なのしかねーよ、本当にこれでこの先冒険者としてやっていけるのか?


最後まで読んで下さりありがとうございます。まだ一話なのでレビューに書く事もないかもしれませんが、何か書いていただけると嬉しいです。それではまた二話でお会いできる事を楽しみにしております。

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